砂漠の惑星(ほし)の希望

夏目咲良(なつめさくら)

砂漠の惑星(ほし)の希望

私達は旅をしてきた。気が遠くなるほどの時を故郷の星を求めて。


「わー、でっかい砂場!」

娘は降下船の扉が開くなり、外に飛び出し、穴を掘り始めた。

「あまり遠くに行くなよ」

私は苦笑しながら、釘を刺す。既にこの惑星はあらかた調べた。

危険な生物どころか、生命体はいない。

母船のAIによると、数千年前に絶滅したらしい。

残っているのは荒れた大地と目の前の広大な砂漠だけだ。

私達の祖先がかつて暮らしていた惑星は自然に恵まれた美しい所だったという。

「……ここでは無かったか」

私は砂山を作り、遊んでいる娘を見つめた。

普段、宇宙船の中で退屈な思いをさせている罪滅ぼしに

調査後のわずかな時間を遊ばせている。

願わくば、娘が大きくなる前に故郷を見つけたい。

「ん?」

砂の中で何かが光り、私は導かれるように、その場所に歩いて行った。

「これは?」

半分以上砂に埋まったボトルがキラリと光った。

私はボトルを拾い上げ、眺める。

厳重に封がされた中には二つ折りにされた紙切れが入っていた。

まさか。

私は高ぶる気持ちを抑えながら、携帯端末でボトルの中身をスキャンする。

端末は『異常なし』という結果を示した。安全だ。

わたしは封を剥がし、紙切れを取り出し開いた。

この惑星が滅んだ理由が分かるかも知れない。

端末の辞書を睨みながら、文字を解読していく。

……なんということだ。

内容が分かるにつれて、力が抜けていく。

読み終わった瞬間、私はその場に崩れ落ちた。

「パパー!」

娘の声が近づいてきた。

「見て。綺麗な石を見つけたよ」

誇らしげに娘が手で示したのは、昔図鑑で見たことがある

『貝』という生物の残骸だった。


この惑星は私達の故郷だったのだ。

しかし、二つの国が起こした大戦により、生命は死に絶え、

海は枯れ、砂漠へと姿を変えた。

ボトルの中身は一方の国の人間が戦争を避けたいという内容の手紙を

敵国の人間へと送ったものだった。

「パパ。大丈夫?」

娘が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「実はまだ、とっておきがあるんだ、じゃーん!」

娘の手に載っていたのは、色褪せた星型の残骸。

ああ、これは『ヒトデ』だ。

「凄いでしょ?お星様。パパにあげるね」

娘はヒトデを私の手に置く。

絶望の中、それは私にとって希望の星に見えた。

しかし、突如、吹いた風に晒されて、星はさらさらと崩れ、消え去った。

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砂漠の惑星(ほし)の希望 夏目咲良(なつめさくら) @natsumesakura

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