風雲が呼ぶのは 五
空では、鵰に乗る穆蘭とオロンが空中戦を繰り広げている。
オロンは鋭い爪の生えた手を伸ばし、振るって、穆蘭や鵰を攻めるが。それを巧みにかわしながら、青い珠の七星剣を振るった。
振るいつつ、巧みに鵰の背に立ち、あるいは跳躍し相手の頭上を飛び越え、鵰の背に乗り。
オロンを翻弄し押しつつあった。
「すごいなあ」
リオンは穆蘭の健闘を見上げながら、賞賛のつぶやきを漏らし。マリーも頷く。
「オロン、鬼どもは逃げたぞ。まだ戦うか!?」
「なんだと!」
船縁越しに地上を見下ろしたコヒョが言う。その通り、わずかばかりの相手に、鬼どもは蹴散らされて、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す有様だった。
「おのれ、雑魚どもが」
「身内にそんなひどいことを言うのか!」
リオンが咄嗟に責める。これまでの所業に対し、怒りがこもりにこもっているが。案の定というか、身内の鬼に対してもこの冷たさ。
そもそも弱い鬼を敵にけしかけて処分させるのだ。
「我が力は、我が誇り。易々とやられはせぬぞ」
「あんたのは誇りじゃなくて、傲慢なんだよ! 要するに、ただの馬鹿! 馬鹿よ、馬鹿!」
穆蘭すかさずの突っ込み。
「あれは……」
ふと、曇天の空の向こうで、何か光ったようなのがマリーに見えた。雲の切れ間が出来て、陽光が漏れ出たのかと思ったが。
そうではなかった。
猛禽類の、鋭い鳥の鳴き声がにわかに響いた。
一同、鳴き声を耳にし、戦いの手を休め鳴き声の方を向けば。
分厚い雲の覆いから、金色(こんじき)に光る豪奢な尾羽を持つ、鳳凰が姿を現したではないか。
「な、なんだあれは!」
初めて見るのか、オロンはにわかに動揺する。地上の、逃げ惑う鬼どもも、逃げる足を思わず止めて曇天の空を見上げる。
鳳凰はけたたましい、獰猛な猛禽類そのものの鋭い鳴き声を発し。己の視界に鬼や人間があるのを意識し。特に鬼に鋭い眼差しをくれる。
「うまそうだ!」
一同の心の中で、不意に、そんなおかしな声が聞こえたような気がした。
「おい、あのクソ鳥ッ!」
源龍は忌々しく鳳凰を見上げる。
「鳳凰は天下、天下は滅びず。いつなんどきでも現れる……」
香澄が呻くようにささやく。貴志は顔をこわばらせて、固まってしまい。羅彩女も同じく固まってしまう。
「うわ!」
刑天に姿を変えたコヒョだったが、なぜかしりもちをついてしまい、姿も元に戻った。リオンとマリーが咄嗟に駆け付ける。
「怖い……」
コヒョはぽそっとつぶやいた。しりもちも、元に戻ったのも、鳳凰に怖じてのことだった。
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