風雲が呼ぶのは 四

 筆の天下は不思議な筆。こうして、様々な、不思議な出来事を起こしてきたのだった。

 ともあれ、今は鬼どもとの戦いだ。

 マリーは素早く船室内に駆け込み、出てきた。船内の蓄えの干し肉や饅頭を持ってきて、リオンとコヒョに食べさせる。こんな時だからこそ、食べなければならないと、リオンとコヒョも懸命な思いで食らった。

 船縁には鵰がとまっているが。すぐに動けるように身構えてもいた。

 オロンは宙に浮き、船を見下ろしている。憎悪のこもったまなざしで。

「おのれ、小癪な……」

 突然現れた少女と鵰にも驚かされた。

「ふんだ、筆の力を馬鹿にするんじゃないよ」

 穆蘭は青い珠の七星剣を構えながら、上空のオロンに向かい吼えた。

「よし」

 食うものを食って回復したコヒョは、再び刑天の姿となり。穆蘭の隣に来て、オロンと向かい合う。

「あれ、あんた」

「そうなんだ。でも細かい話はあとでね」

「わかったわ」

 と、少し話をする。

「ちぇ、いつまで休むんだよ。ちゃっちゃっと終わらせようぜ」

 退屈そうに、ぶうんと打龍鞭を振るう源龍。

「それとも、こっちから行くか!」

 だっ、と源龍は駆け出した。是非もなく、鬼どもに向かい駆け出した。

 鵰は翼を広げ、鋭い鳴き声を響かせる。咄嗟に穆蘭は飛び乗り、鵰は飛び立つ。

「相手の出方を待つなんて、生易しいことはなしだよ!」

 穆蘭も源龍も、自ら積極的に敵に向かった。

「……行こう!」

 貴志も意を決して源龍に続いて駆け出した。香澄と羅彩女も、頷きともに駆ける。

「あの、僕、飛べないんだけど~……」

「あんたは船守ってて!」

 と穆蘭は素早く返す。船に残された刑天ことコヒョは、穆蘭を見送りつつ苦笑しながら胸をかしげて頷く。

「ううむ、おのれ」

 人海の国では、誰もかれもが、鬼を恐れてなされるがままだった。楽勝だった。我が力を誇ったものだった、が。

 この者らは、力に服従をしないばかりが、抗ってくる。

 オロンは誇りを傷つけられた気分だった。

「おめえら、てめえより強いのから逃げながら弱いのばっか相手にしてたんだろうが!」

 鬼どもは金砕棒を振るい、向かってくる一行と渡り合うが。いざ戦えば、思いのほか弱く。次から次へとやられては、消えてゆく。

 源龍は吼えながら打龍鞭を振るった。振り回しまくって。鬼は敢え無く吹き飛ばされる。

 他の面々も同じように得物を振るえば、鬼どもは、拍子抜けするくらい弱かった。

 やがて、相手の強さに怖じて、鬼どもは金砕棒を放り投げて、逃げ出す有様だった。

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