いざ、物語へ 十三
「……」
さすがにいつまでもここにいるわけにはいかないので、降りて、船室内に戻った。
マリーとリオンにコヒョも、もう寝息を立ててすっかり寝入っていた。
結局なんだかんだで、みんな眠りについていた。
で、貴志もみんなと一緒に寝て。
朝が来て、朝日を浴びてまず源龍と羅彩女が目覚めて、
「おーい、起きろ」
と、呼びかけて。そこで船室内の面々は朝が来たのかと起きて、外に出て。
水がめの水で口をゆすいで、保存食の饅頭を食して、また口をゆすいだ。
警戒された鬼の奇襲はなく。船旅をたしなんでいるかのようだった。
「まさかこのまま干し殺しってこたあねえよなあ」
と、源龍は言った。
人海の国は結界が張られて、外の世界とをつなぐ交通が遮断されている。そのうえ、人々は消えてしまっていた。
そんな人海の国を放置し、侵略を邪魔立てする一同を放置して干し殺しにする魂胆があるのかどうか。
「船の蓄えがなくなったら、陸(おか)のものの世話にならなきゃいけないけどさ。貴志はそんなのいやでしょ」
「ええ、まあ」
「け、これだからおぼっちゃまはよ」
いざとなれば食物の物色も躊躇ない源龍だが、貴志には抵抗がある。
「はいはい、そんなこと言わない」
「オレは餓鬼か」
羅彩女は苦笑しつつ源龍をたしなめ。それを見る香澄たちは微笑んでその様子を見守った。
「汚く生きるよりきれいに死にたい、ってのか、貴志?」
「そこまでは……。いざとなれば仕方ないけど、その償いはどうすれば。異世界で簡単に行き来出来ないし」
「償いもなにも、鬼をやっつけてやるんだからよ、それがそうなるなら遠慮なんかいらねえよ」
「もう勝った気でいるの。それはそれでおめでたいねえ」
「負けると思って戦う奴があるかよ」
「ふふ」
笑ったのは貴志だった。
「そうだね、僕はどうにも考えすぎる悪い癖がある。もう少し融通が利かせられたらいいんだけど」
「おめえもわかってきたじゃねえか」
「だからって、不必要に物色すんのはだめよ」
「お前はオレを何だと……」
源龍は口をとがらせ羅彩女に抗議する。
香澄は口出しせず、源龍と羅彩女、貴志のやりとりを見守っていた。マリーとリオンにコヒョもだ。
(よくもまあ正反対のおふたりが)
なんだかんだでよく共闘出来たものだと、マリーとリオンにコヒョは感心しきりだったが。このふたりの共闘が戦いの主軸となり、他の面々も力を発揮出来た。
それなくしては、香澄だけではかつての障魔との戦いでの勝利はなかったと言い切れた。
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