第20話
ニールダウンの3人は、慣れた足取りで枝移りを続けていく。
すると、リーダーのハライノスが、直感的に他の冒険者を感じ取った。特にスキルが発動しているわけではないが、常に新しい仲間が欲しいと渇望しているので、そういった第六感的な部分が研ぎ澄まされているのかもしれない。
「……ストップ。村で見たやつらだな」
魔人ハライノスは声のボリュームを落とし、後ろの2人に一時停止の合図を送り、自身も樹木の上で立ち止まり身を潜めた。
「4人か。まぁ、やれなくはないかな」
長双剣のマベラは、少し離れた下の林道を歩いている4人の冒険者を目視し、すでに頭の中で戦いのシミュレーションを行っていた。
マベラたちが確認できた冒険者は4名。背の低い少年、棒を背負った女性、初老でガタイのいい男、犬人の剣士、だった。
その中で彼らが注目した人物は、熟練冒険者 ねんごろのトーマガイだった。
「あのじいさん、強そうじゃね?」
良い仲間候補を見つけたと、ハライノスは愉快に笑った。
年長者、ということは、冒険者歴も長くレベルも高い、といった予想が出来るので、現役の時点で尊敬されることは多いだろう。
「怖そう……。勧誘なんて無理だと思うけどなぁ。話聞く前にぶん殴られるかも……」
闇使いシットニンは、いぶし銀なトーマガイの姿を見て怖がっていた。彼は、ついさっき相まみえた盾殴りのナゲキスや爆破精霊マノワルのことを思い出していた。彼女たちのような好戦的な人物であれば、撃退するのに一苦労だと考えている。
「そん時は俺たちの力あわせて押し返せばいいんだよ。
あの薄着の女も、青髪の犬野郎も良い武器持っているけどぉ、今回のメインターゲットはあのじいさんかな」
ハライノスは有望そうな冒険者全員に声をかけるつもりではあったが、そんな簡単に物事がうまくいくとは考えてはいないので、一応交渉する人物は1人、2人に絞っている。【ディスキル】もそれなりに魔力を使うため、全員のスキルを全て封じるとなると魔力が足りないだろう。さっきの場合で言えば、特殊なスキルを持っていた雷心デュペルに狙いを定めていたのだ。
「あの少年は?」
女戦士マベラは、幼く見える少年を自然と候補から外しているハライノスに疑問を抱く。
「はぁ? ……あれは論外だろ」
魔人ハライノスは思わず大きな声を出してしまい、すぐに声のトーンを下げた。
彼は、あの少年だけは絶対にない、と思っていた。年齢と体格、あとは雰囲気だろうか。それと、少年が着ている魔法使いっぽい服の安物感とぼろさ加減も、弱いと判断する材料となってしまっていた。実際、この少年は、昔から市販で売っている安い布服を愛用していた。
冒険者の強さを判断するうえで、装備品は大事だ。同じ冒険者なら、似たような服でも素材の違いなどで良しあしが分かったりする。武器なんかは特に分かりやすい。
「弱そうなことには同意見だけど、逆に場違いだと思わない?
それなりの冒険者パーティーの中にいるってことは、彼も実力があるってことだと思う。堂々としているしね」
林道を歩いている4人は、こちらから見ると対等で良好そうに見受けられた。ずっと会話をしているわけではないが、適度に誰かが小言を言ってはそれに軽く反応している。2つのパーティーが合体した臨時チームなのだが、はた目から見るとバランスが取れている。
「ん? そういう考えもあるのか。確かに、シットニンもそんなに強そうには見えなかったけど、闇スキルが豊富の玄人だったしな」
「それ、褒めてんの? けなしてんの?」
急にリーダー・ハライノスから評価された闇使いシットニンが口を挟む。
「強者に見られたいなら、もっとやる気を示さないとね。背筋をピーンと伸ばしてみたらどう?」
女戦士マベラは、姿勢のいい立ち姿をしている。彼女は、酷い猫背のシットニンに助言をする。が、肝心のシットニンはそこまで悩んでおらず、姿勢を正すことはなかった。
「マベラの言う通りかもしれねぇ。一回見てみるか。
【サーチング】」
魔人ハライノスは、謎の少年に向かってスキルを発動した。
【サーチング】詳細
効果……相手のスキル画面を閲覧することが可能。
普通は紋章に触れて念じることで現れるスキル画面。それをこのスキルを使うことで強制的に確認することが可能になる。
初対面の相手に使用すれば、一方的に情報のアドバンテージを得られるので使い方次第では強力なスキルだ。ちなみに、モンスターではなく人相手に許可なく使用するのは、マナー違反である。直接攻撃するわけではないのでスキルを使用したことが相手にバレることはない。そのため、ストーカーなどが使うケースもあるという。
魔人ハライノスの前に、少年のスキル画面が載った光で出来たパネルが出現する。まずそのパネルが通常の人よりも一回り大きいことに違和感を覚え、その後、そこに書かれた内容にハライノスたちは絶句した。
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