第17話

 光っている。人間が。これは光合成……?


 月の光で光合成。魔女だ。


「あんた魔女なのか……?」


 魔女、その言葉に対して嘲笑うように女性は答える。


「そうだね、魔女と呼ばれているよ私は」


「でも、こんなに若いなんて……」


「不老不死って言われてるはずだよ。月の光を浴びていれば私は老いない」


 月の光、そうだ。今はちょうど日が沈んだけど、でも。


「さっき会った瞬間は夜じゃなかった! 昼間は災いを振りまいてるって話だろう! そんな風には見えなかった!」


「そりゃあ私ももう何百年生きてるからね。自分の力の使い方くらい心得ているよ。夜のうちにたっぷり浴びた分を蓄えて昼間に消費することくらいはできるようになったさ。試しにどれ……」


 ごめんね、とぼそっと呟くと彼女が触れた木は見る見るうちに枯れていった。


 僕がそれを見て驚いてるのを確認すると、彼女は今度は何やら力を込めだした。そうして、枯れていった木は元の姿に戻った。


「ね?使いこなせてるでしょ?」


 その眩い笑顔を見て僕は内心恐怖していた。

 魔女だ。魔女に会ったら逃げなきゃ、そう思っていたのに逃げるどころか会話してしまった。裸も見てしまった。


 そうだ、見てしまったんだ。


「ご、ごめんなさい! 許してください!」


「あっ、ちょっと……」


 呼び止める彼女を振り切って僕はそのまま逃げ出した。

 このままここにいては殺されるんじゃないかと思ったから。

 逃げ切れるとも思ってはいなかった。でも逃げなきゃと思った。しかし、振り返ってみると追ってくる気配はなかった。


 家に帰るや否や、布団に突っ伏す。

 魔女は本当に生き続けていた。あんなに綺麗で……


 彼女の裸を思い出してしまう。


「ダメだダメだ。変なこと考えるな」


 枕を叩いて気持ちを鎮める。


 全部悪い夢だったんだ、忘れよう。


 そう考えていると、疲れていたのかそのまま寝てしまっていた。

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