第10話

 月の光を浴びながら目を閉じてみる。

 今までは意識してなかった。自覚してなかった。だからこの力をそのまま光として周囲に発散させてしまっていた。


 でも。

 深呼吸をして心を落ち着かせる。

 すると、不思議と自分の中にエネルギーが満ちている感じがわかった。それが体から溢れている感じも。だから。

 逃さないように、体の中に閉じ込めるように、意識を集中する。

 最初はなかなか手こずった。けど、何度も繰り返すうちに安定するようになってきた。

そして、その状態で目を開けてみると、私の体は発光していなかったのである。


「えっ……」


 驚くと、それと同時に繋ぎ止めていた力は安定感を崩してしまった。


 ドンッ!!!


 一瞬、自分でも眩しいと感じるくらい輝きを放ちながら何かが爆発したような大きな音を立てた。


 目をぱちくりさせながら現状を把握する。この力は体内に溜め込んで放てば爆発力を産み出すことができるようらしい。


「これなら!」


 いける! 満月の夜に、ありったけのエネルギーを取り込んで放出すれば、この牢屋をふっ飛ばすくらいの爆発を起こせる!

 そう思った。そのためには今はこの感覚を体に叩き込むこと。

 それからはずっとただそれのみを何回も何十回も何百回も繰り返した。


 そして月が満ちたその日。私は、長年過ごしてた、閉じ込められてたこの空間を、文字通りふっ飛ばして木っ端微塵にした。


 ここは町から外れたところにあると聞かされてはいた。

 だから夜の静寂を破るこの爆発音も騒ぎにはならないだろうと思った。だが、いつ誰がやってくるかわからない。そのため破壊するや否や私は急いでその場を後にした。


 初めて外に出た。

 初めて外を駆け回った。


 自由になることがこんなにも気持ちいいとは思ってもみなかった。


 彼を探さなければいけない。しかし、宛がない。見つけるのには時間がかかるだろう。

 それでも無敵感を感じている今の私ならなんとかなると思った。


 だから今は、ただ疲れ果てるまで足を止めずに気の向くままに走り回った。

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