第6話

「普通の人間は、って、じゃあ私は普通じゃないの?」


「そ、それは……」


「どうして私は光るの?」


「ごめん、どうしてなのかはわからないんだ。でも……」


 一瞬言葉に詰まる。その先を口にするには勇気が必要だった。不思議そうに小首を傾げるこの無垢な少女に、現実を突きつける勇気が。


「君は、呪われているんだ」


「呪われてる……」


 彼女は眉間にシワを寄せて苦い顔をしながらポツリと復唱する。

 恐らく生まれてからずっと言われてきた言葉だ。それが物心つく前のことであろうと、脳裏にはその言葉の響きに、嫌な思い出があるのかもしれない。いや、きっとあるのだろう。本当なら聞きたくないと耳をふさぎたくなるくらいに嫌な思い出が。でも。


「この近くの町では皆そう伝えられてきている。それが本当かどうかは僕にはわからない。けど」


 全部話した。

 僕が親から、周囲から伝えられてきたことを。

 彼女の両親は腕が使えなくなったことを。

 捨てられた君がまるで周りの生気を吸い尽くすかのように生き延びたことを。

 そして、そのおかげか、こうやってずっと隔離されてご飯も与えられていないのにずっと生き続けていることを。


 彼女は大人しく聞いていた。まっすぐに受け止めていたのか、理解できず思考停止していたのか、はたまたショックで言葉が出なかったのか。

 わからない。だが、話を続ける僕の目をずっとまっすぐに見据えて彼女は話を聞いていた。


 でも彼女にそんな深刻そうな顔は似合わない。笑っていてほしい。だから僕は最後に


「だけど、きっといつか。僕は君をここから出してみせるよ、安心して!」


と彼女を見つめ返しながら宣言した。


 それを聞き一瞬驚いたような表情をした彼女だったが、すぐに破顔した。

 その笑顔は、それに呼応するかのように月明かりが彼女を照らしたことでより一層輝いて見えた。


 何年かけてでもこの子の呪いを解明してみせる。絶対に。


 彼女に全て打ち明けていく中で一つ気付いたことがある。それは彼女が光ることに関しては、大人達から聞いたことがなかったことだ。でもきっとこれも呪いに関係がある。はずだ。だからそれを少しずつ検証していこうと思った。


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