ミリタリーオタクから見た ゴジラ-1.0
加藤 良介
前編
皆様こんにちは。加藤良介でございます。
今回は、アメリカでも大人気。ゴジラ-1.0についてのネタバレ有りのレビューを書いていきましょう。
まず、今回のレビューですが、タイトルにもあるように、ミリタリーオタク(ミリオタ)目線でのレビューであることをご了承ください。つまり、著しく厄介で偏った知見からのレビューでございます。
・ミリオタ的胸熱ポイント
① 登場する兵器が全て現実に存在した兵器群であること。
これ、非常に重要な要素です。
これまでのゴジラ作品は、基本的にゴジラ対超兵器かゴジラ対怪獣でした。
やられ役で現実の兵器が出てくることはありましたが、徹頭徹尾リアルな兵器のみで戦うのは初の試みでしょう。
比較的現行兵器で戦ったシン・ゴジラも、最後はよく分からん電車特攻でしたから。
(。´・ω・)?あれはいったい何だったんだ。なにかのオマージュか。
しかしながら今回のゴジラは違います。
特攻仕様の零式艦上戦闘機「52型」
特設掃海艇
重巡洋艦「高雄」
試作四式戦車「チト」
特型駆逐艦「雪風」「響」
高高度迎撃用 局地戦闘機「震電」
これらすべては、実在した兵器群です。
私はこの演出にやられたと申しますか、一ミリオタとして敗北感を山崎監督から受けました。
( ゜Д゜)//その手があったかと。
一般の方には分かりにくいと思いますが、ここミリオタ的に、めっちゃ重要な要素なんですよ。
なぜなら、今あげた全ての兵器一つ一つに、現実の太平洋戦争で起こったドラマが詰まっているからです。
見ている私は、勝手にここまでの物語を作っていけるのです。
「高雄だ」「雪風だ」「震電かよ」って感じです。
これが実在しない架空の兵器群や怪獣相手だど、私も(;´∀`)「ほへぇ~」って感じの感想しか湧いてきません。
どんなにゴジラとの戦闘シーンが素晴らしくとも、感銘を受けたりはしません。
凄くド派手なプロレスごっこを、観させられている気分にしかならないのです。
(´-ω-`)//つまり若干アホクサイ。好きな人には申し訳ありませんが。
元ガイナックスの代表を務めていた岡田斗司夫氏も言っておられましたが、「作品に嘘は一つだけでいい」と。
私も同感です。
ゴジラという架空の存在が、ここで言う嘘です。
そこに、超兵器だの別の怪獣だのと嘘を付け足すと、嘘の上塗りになってしまい、物語全体が上滑りするのですよね。
そうするぐらいなら、ファンタジー小説の様に、全てを架空の世界で塗り固めたほうがましです。下手なリアルが混ざると、それだけで冷める。
同世代の人たちが熱狂した「エヴァンゲリオン」に、私が乗れなかったのは正にこの点にあります。
「使徒」という虚構と戦うのは、「エヴァ」という虚構。
典型的な嘘の上塗りです。このため、作品全体にプロレスごっこ感か溢れ出てしまい、どうでもよくなったのです。エヴァとプロレスのファンの方には申し訳ありませんが、私の偽りのない本心です。
ところが今回のゴジラは違いました。
ゴジラという架空の存在に戦いを挑むのは、実際に太平洋戦争を戦い抜いた歴戦の戦士たちなのです。
マジのリアル。
(T _ T)//胸が熱くならない訳がない。
これがミリオタの厄介な特性です。兵器に詳しくない人には、どうでもいいことかもしれません。
② 重巡「高雄」のゴジラとの死闘
前半のクライマックスです。
主人公たちが乗る特設掃海艇がゴジラと戦っているところに、颯爽と助けに来てくれます。
そして、勇戦むなしく沈んでいきました。
最期の瞬間まで日本のために戦った姿に、もう、号泣よ。あれで泣かないミリオタがいるか?
(゜Д゜)ノおらんよな。
本当に素晴らしいシーンでしたが、不満点が無いわけではありません。
不満点の一つは、戦闘シーンが短すぎるところです。
高雄は結構あっけなく沈んでいきました。後、二三分は尺が欲しかったですね。
もう一つは、高雄の最初の登場シーンが、高雄のアップであったため、めっちゃ主人公たちの近くにいた感がありました。
(;´・ω・)//あれは唐突すぎる。演出としておかしい。
と、いう訳で、不肖私めが、理想的な高雄の戦闘シーンを考えてみました。
ゴジラの登場前の特設掃海艇艇に、不鮮明な無線が入る。
艇長が応答するが、機材が悪いのか電波状況が悪いのか、お互いに通信はできない。これが高雄の発した無線で、特設掃海艇の現在地を尋ねるものであった。
このシーンを一発入れるだけで、実はすぐ近くまで高雄が進出していたことが観客には分かります。
故に唐突な登場シーンにはならないでしょう。
これはほんの数秒のシーンですので、こうしたひと手間を惜しむべきではないと思います。
↓
主人公たちがゴジラと戦う。(本編のまま)
↓
あわやというところで、ゴジラの周囲に巨大な水しぶきが上がる。
ゴジラが戸惑う。
↓
重巡洋艦「高雄」の登場
このシーンは艦影の分かるアップではなく、不明瞭な「黒い点」でお願いします。
高雄の主砲、五十口径三年式二十糎砲はカタログスペック上、砲弾が約30Kmほど飛びます。
水平線までは約25kmですから、本来であれば水平線の彼方から砲弾が飛んできます。
しかし、これは映画ですし、着弾観測や命中精度の観点からも、彼我の距離が20kmからの砲撃戦が妥当でしょう。
となると、最初の登場シーンは「点」になるはずです。
更に言いますと、初弾は命中しなくてもいいんです。
ゴジラの周囲に巨大な水柱が上がることによって、十分にゴジラの注意を引けますし、主人公たちも助かります。
主人公に流れ弾が当たらないのは、フィクションのお約束。
そして砲弾が飛んできたことで、主人公たちは高雄が助けに来てくれたことは瞬時に理解できます。
特設掃海艇もめっちゃ揺れるでしょうけど、ここは我慢。
( ̄▽ ̄)//これでいい。これがリアル。
↓
艇長が砲弾が飛んできた方向に双眼鏡を向けると、うっすらと高雄の艦橋が映る。
↓
艇長「高雄だ。高雄が来たぞ」と叫ぶ。
ここは叫ぶべきでしょう。
全員が狂喜乱舞。高雄の前部砲塔が更に発砲。
↓
高雄の203mm砲弾がゴジラに一発着弾。
ゴジラが吠える。
↓
高雄の艦橋内にカメラが映る。
観測員 「目標に着弾」
艦長 「取舵一杯」
副長 「取舵一杯。ヨーソロー」
↓
高雄が左舷側に旋回。主人公たちから見て右舷へと進む。
高雄の後部主砲、ゴジラに向けて旋回開始。
↓
高雄艦橋内 「後部主砲。用意ヨシ」
艦長 「全砲門一斉射。てー」
↓
高雄の主砲。五十口径三年式二十糎連装砲。5基10門による全力射撃。
( ̄▽ ̄)//胸ぁっ。
↓
ゴジラの周りに猛烈な水柱。主砲弾、数発命中。
怒ったゴジラが高雄に向かって突進する。
↓
高雄艦橋内「弾着を確認。なれど目標健在。本艦に向かって接近します。距離180。尚も増速中」
艦長、表情を変えずに(ここ大事)「右舷。魚雷戦用意」
↓
高雄の61cm連装魚雷発射管2基4門がゴジラに向けて旋回。
↓
主砲弾の猛攻をものともせずに、ゴジラ、高雄に向かって突進。
↓
高雄艦橋内 「魚雷戦。用意ヨシ」
艦長 「右舷魚雷戦。一斉射。てー」
↓
連装魚雷発射管2基から4本の九三式酸素魚雷が発射。
ゴジラに向かって突進する。
九三式酸素魚雷は、帝国海軍の切り札として扱われていた必殺の魚雷です。
炸薬量は驚異の300kg。
用途が違うので単純に比較することはナンセンスだと重々承知した上で比較いたしますが、戦艦大和の主砲弾「九一式徹甲弾」ですら、炸薬量は30kg程度です。
高雄の主砲弾の炸薬量に至っては3kgにすぎませんから、いかに九三式酸素魚雷が強大であるかは、お判りいただけると思います。
防御に優れた米艦艇すら、4本も食らっては爆沈は必至。
これをゴジラに向かって撃つわけですね。
一つ、懸念点があるとすれば、どうやら高雄には九三式酸素魚雷は積んでいなかったようです。
しかし、ここは必殺の九三式酸素魚雷でお願いします。
( ̄▽ ̄)//これくらいはええやろ。
↓
ゴジラと九三式酸素魚雷が接触。
一、二本はゴジラが跳ね飛ばす感じでも可。
そして大爆発。
↓
ここで初めて「やったか」が、出ます。
これは誰が言ってもいい。主人公でも艇長でも高雄の艦長でも誰でもいいです。言ってください。
いや、これは本当にやったでしょ。
全弾命中なら1.2tの炸薬が爆発するわけですからね。生きている方がどうかしてる。
↓
でも、生きているんですよね。まさにゴジラ。
この時の人間たちの絶望感たら、筆舌に絶に尽くしがたいものが有ります。
スクリーンの前の私も絶望です。Σ( ̄ロ ̄lll)九三式酸素魚雷の一斉射が駄目なら、何ならいけるんだよ。打つ手ないじゃん。
この後のシーンは本編のままでいいです。
艦橋が破壊され指揮能力を喪失しても、最後の最期に前部砲塔の超至近からの一斉射。そして轟沈。
涙なしには見れません。
(T _ T)//高雄。ありがとう。よく戦ってくれた。
いかがですか。
これぐらいの尺と演出はあってもいいと思うのですよ。
それほどまでに、良いシーンでした。
リアルの高雄は、終戦後、英国艦隊の標的にされ、一発も撃ち返すことなく海底へと沈みました。
人間に例えるなら、後ろ手に縛られての銃殺刑でしょう。
その無念さに比べたら、最後の最期に戦後日本の復興のために、ゴジラと奮戦して沈んでいく映画版の高雄。観客に帝国海軍の意地と誇りを見せてくれました。
このシーンがいかに素晴らしいかお判りいただけると思います。
(/ω\)。あかん。また、涙が出てきた。
よくやった。山崎監督。悔しいけど。
ここまでで、気が付けば3000文字を超えました。
つい熱くなって、想定より長くなりました。本作は二部構成にしたいと思います。
では、後編でまた。よろしければお付き合いくださいませ。
続く
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