第44話 if シスターズの共演⑨ ~シスターズの狂演~

【前書き】2024.05.09

 これは第四章ではなく第一章の36~48話のifとなります。

 これを書くにあたった理由としましては、美玖と葉月の行動が非常識すぎるという指摘を受けまして、私自身も読み返したところ確かにそうだと思いました。


 一応、言い訳のようなことを言わせていただきますと、当初は

1.美玖と葉月が怜、桜彩の所へとやってくる。

2.四人で意気投合する。

3.怜と桜彩のトラウマについて告白

4.四人で桜彩の誕生日を祝う

 というプロットを組んで物語を書いていたのですが、小説家になろうの方へ投稿する直前に、桜彩の誕生日を四人ではなく怜と二人きりで祝いたい、と思って突貫作業で話を変更した結果、美玖と葉月の行動に充分な修正が効かずに現在のようになってしまいました。

 先述の通り、私自身も読み返して二人の行動にデリカシーが大きく欠如していると感じた為、当初のプロットに修正を加える形で36~47話を書き直してみようと思います。

 もしかしたら現在掲載している内容と入れ替えるかもしれません。

 修正に当たってのご意見、感想等あれば遠慮なくお願いいたします。


※書き直した美玖と葉月の行動全てにデリカシーが伴っているわけではありません。


 第四章は今週中には投稿開始出来るように頑張っていきますので引き続きよろしくお願いいたします。 




【本編】


「さて、それじゃああたし達はそろそろ帰るわね」


「ええ。こうしてあなたが元気にしてる姿も見れたし誕生日もお祝い出来たしね」


 忘れかけていたが今日は日曜日、それももう夕食後の遅い時刻だ。

 当然明日は月曜日であり怜と桜彩は学園が、美玖と葉月も大学がある。


「てかさ、もう結構遅い時間だけど大丈夫?」


「ええ、心配いらないわ。もうすぐ守仁が迎えに来てくれるからね」


 怜と美玖の幼馴染みであり美玖の恋人でもある瀬名守仁が迎えに来てくれるのなら何の心配もいらないだろう。

 そんなことを話していると、美玖のスマホが着信を告げる。


『――――』


「ええ、分かったわ。ありがとう、守仁。詳しい話はまた車でね」


 それだけ言って美玖が通話を終了させる。


「守ちゃんが来たの?」


「ええ、今アパートの前に着いたって。あんたも顔見てくでしょ?」


「もちろん!」


 兄のように慕っている守仁が来ると言うのであれば是非とも顔を見てみたい。

 少しであれば話すだけの余裕もあるだろう。

 そう思って桜彩を含めた四人は怜の部屋を出てエントランスへと降りていく。

 既にそこには守仁が路肩に停めた車から降りて待っていた。


「守ちゃん! 久しぶり!」


 美玖よりも早く守仁に駆け寄る怜。


「おお、怜! 久しぶりだな!」


 怜が守仁を兄のように慕っているのと同様に、守仁も怜のことを弟のように大切にしている。

 まあ将来的に義弟になるので何の問題も無いというのが怜の考えだが。


「元気そうだな、怜」


「うん。守ちゃんも。姉さんが迷惑掛けてない?」


「ちょっと怜!?」


「ははは、大丈夫だって。むしろ俺の方が美玖に頼り切ってるよ。料理なんかは完全に美玖に任せきりだからな」


「良いのよそれは。あたしが作った料理を守仁に食べてもらうのがあたしの幸せなんだから」


 守仁に激惚れしている美玖が、先ほどまでは考えられないほどに甘い声を上げる。

 それをみて仲が良いなあ、と微笑ましく思う怜と葉月。

 一方で唯一守仁と面識のない桜彩はまだ緊張して固まっている。


「守仁。こっちが私の妹の桜彩。写真で見せた通り可愛いでしょ?」


 葉月がそう守仁へと紹介すると、守仁が怜から桜彩へと視線を移す。


「は、初めまして! は、葉月の妹の渡良瀬桜彩ですっ! え、えっと、れ、怜さんの隣に住んでいて、クラスでも隣で、その……友達です……」


「初めまして。怜の幼馴染みの瀬名守仁です。怜の姉である美玖の恋人で、あなたの姉である葉月さんの友人でもあります」


「よ、よろしくおねがいします」


「こちらこそよろしく」


 緊張している桜彩に優しい笑みを向けて返事を返す守仁。


「でもそうか。まさか本当に美玖と葉月さんの弟と妹が隣同士だったとはな。本当に凄い偶然だよ」


「ええ。しかもあたし達がこっちに来る前から既に仲良くなってたみたいだしね」


「本当よね。それが一番の驚きだわ。まさか桜彩にこんなに仲の良い男の子がいただなんて」


 大学で出来た友人の弟妹が隣同士で一人暮らしをしていた。

 本当に凄い偶然だろう。


「ま、まあ確かに」


「は、はい……」


「でも、俺は桜彩と隣同士で本当に良かったと思ってる」


「そ、それは私もです! 怜さんがお隣さんで本当に良かったです」


「桜彩もそう思ってくれて嬉しいな」


「私も。怜さんがそう思ってくれて嬉しいです」


 お互いを見て笑みを浮かべる二人。

 そんな二人の空気は傍から見ればただの友人同士なんてものじゃなく、そしてそれは守仁にとっても――


「そっか。良かったな、怜。お前にもこんなに素敵な恋人が出来て」


「えっ!?」


「ええっ!?」


 と見事に誤解した発言を放った。

 その内容に怜と桜彩が顔を真っ赤にして見合わせて


「ち、違う、違うって! 俺と桜彩はただの友人だから……!」


「あ、え、ええと、わ、私と怜さんの関係はそうではなくて……、その、友人というか隣人というか……」


 慌てて二人揃って守仁の言葉を訂正する。


「え……?」


 その言葉に目を丸くする守仁。

 どう見てもそこらの恋人同士よりも仲が良さそうな感じであったのだが。

 二人の言葉をにわかには信じられず二人の姉へと視線を向けると、美玖と葉月は苦笑して頷く。


「そ、そうか……。すまない、二人共……」


「い、いえ……」


「ま、まあ……」


 勘違いから変な空気にしてしまった守仁が慌てて頭を下げる。

 が、それはここで終わらなかった。


「まああたしはそれでも良いと思うわよ」


「そうね。私も賛成ね」


「……は!?」


「え、ええっ!?」


 二人の姉の口から出た言葉に怜と桜彩は再び驚きの声を上げる。


「ねえねえ桜彩ちゃん。姉の贔屓目も入っているけれど、怜はこれでも優良物件よ? 炊事、掃除、洗濯と家事は一通りこなせるし、頭も良いし、将来安泰よ。それにあたしの弟ってだけあって見た目も良いし」


「何言ってんの、姉さん! ていうか、さりげなく今自画自賛したよね!」


「当然でしょ。高校時代にミスコン三連覇した実力を舐めんじゃないわよ」


 怜とは入れ替わりで領峰学園を卒業していった美玖は、在学中の全ての年の学園祭でミスコン優勝という結果を残している。

 ちなみに大学一年目の昨年度は規定により参加出来なかったらしい。

 二年目の今年に参加するのかはまだ決めていないとのことだが。


「それに怜は気に入った相手には本当に尽くしてくれるタイプよ。友人は本当に大切にするしね」


「はい。それは私も充分すぎるほどに理解しています」


 現に初めての一人暮らしを支えてもらっている桜彩はそれをよく理解している。

 怜が居なければ、普通の一人暮らしが出来ていたかは分からない。


「本当に怜さんにはお世話になりっぱなしで……。もし怜さんがいなかったら今の私はまともに生活出来てはいないので……」


「そうそう。結婚相手として優良物件だと思わない?」


「は、はい……。確かに怜さんと結婚出来る相手はとても幸せだと思います」


 前に蕾華が怜のことを『友達としては最高、結婚相手としては優良物件』と評していたことを思い出す。


(やっぱり怜さんって側にいる人達からはそう思われるよね)


 美玖も怜に対して蕾華と同じように考えていたことに納得してしまう。


「ねえ怜。あなたの方はどうなの? 桜彩に魅力を感じないの?」


「……女性として魅力的な存在であることは否定しませんよ」


「ふぇ…‥?」


 葉月の問いに対するその言葉に桜彩が目を丸くして怜の方を見る。


「へぇ……?」


 その一方で葉月と美玖は怜の答えを着て嬉しそうに顔を綻ばせる。


「ですって。良かったじゃない、桜彩」


「本当よね。ねえ桜彩ちゃん?」


「へ、そ、その……」


 姉二人の勢いにタジタジになってしまう桜彩。

 もうこうなっては仕方がないと、怜は残る一人の頼れる存在へと懇願する。


「守ちゃん……二人を止めて……お願い…………」


「美玖、葉月さん、少し落ち着いて。大切なのは二人の気持ちだから」


 その守仁の言葉にヒートアップした姉達が一度言葉を切る。


「怜と桜彩さんが仲が良いのは分かる。だからと言って、それが必ずしも恋愛に結びつくわけでもないだろ? 今はまだ出会ってから間もないんだ。姉としてもしばらくは二人の関係を大切に見守っていくべきだろう」


「む……確かにそれはそうだけど……」


 まだ少し不満そうな二人を守仁は呼び寄せて、怜と桜彩に聞こえないように小声で囁く。


「今ここで無理に焚き付けてギクシャクとすることになっても嫌だろう。それにあの二人なら自然に距離を詰めていきそうだしな。もし距離が近づく気配がないのなら、その時にそっと背中を押してやればいいさ」


「……確かにね。まあ出会って一か月弱でここまで仲良くなってるんならそうかもしれないわね」


「そうね。それじゃあしばらくは見守っておきますか」


 姉達がひとまず落ち着いたところで守仁は怜と桜彩にウインクを向ける。

 怜としてはこういった所が本当に頼れる存在だ。


「二人共。そろそろ帰らないとまずいぞ」


 守仁がスマホに表示された時刻を二人へと見せる。


「おっと、もうそんな時間なのね」


「ふう。まだまだ話し足りないけどしょうがないわね。それじゃあね、桜彩、怜」


「…………さよなら」


「…………それじゃあね」


 からかわれて拗ねた二人は姉の方を見ずにぶっきらぼうにそう言った。



【後書き】

 姉二人のデリカシーの問題ですが、修正後は一応は許容範囲内かと思います。

(一応怜と桜彩が自分達が気が付いていないだけで相手に好意があることはバレバレなので)

 ですがまだデリカシーが足りない、修正前の方が良い、修正後の方が良い等意見ありましたら感想等で伝えていただけるとありがたいです。

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