第39話 if シスターズの共演④ ~シスコンの真意~
【前書き】2024.05.06
これは第四章ではなく第一章の36~48話のifとなります。
これを書くにあたった理由としましては、美玖と葉月の行動が非常識すぎるという指摘を受けまして、私自身も読み返したところ確かにそうだと思いました。
一応、言い訳のようなことを言わせていただきますと、当初は
1.美玖と葉月が怜、桜彩の所へとやってくる。
2.四人で意気投合する。
3.怜と桜彩のトラウマについて告白
4.四人で桜彩の誕生日を祝う
というプロットを組んで物語を書いていたのですが、小説家になろうの方へ投稿する直前に、桜彩の誕生日を四人ではなく怜と二人きりで祝いたい、と思って突貫作業で話を変更した結果、美玖と葉月の行動に充分な修正が効かずに現在のようになってしまいました。
先述の通り、私自身も読み返して二人の行動にデリカシーが大きく欠如していると感じた為、当初のプロットに修正を加える形で36~47話を書き直してみようと思います。
もしかしたら現在掲載している内容と入れ替えるかもしれません。
修正に当たってのご意見、感想等あれば遠慮なくお願いいたします。
※書き直した美玖と葉月の行動全てにデリカシーが伴っているわけではありません。
第四章は今週中には投稿開始出来るように頑張っていきますので引き続きよろしくお願いいたします。
【本編】
怜に渡された桜彩のノート。
そこに書かれた内容を葉月は一文字たりとも見逃さないようにじっくりと眺めていく。
(…………どうだ?)
(…………お願い!)
二人が祈るように見守る中、ついに葉月はそこに書かれた内容を読み終える。
「ふふっ。凄いわね、これ」
満足そうに笑みを浮かべて葉月が頷く。
「どうですか? 桜彩の努力を分かっていただけましたか?」
「ええ、正直驚いたわ。ごめんなさいね、桜彩。まさかあなたがこんな風に変わるなんて思っていなかったから」
葉月が対面に座る桜彩へと手を伸ばしてその頭を撫でる。
その手を桜彩は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに受け入れる。
「あの、葉月さん。葉月さんは桜彩を疑っていたのではないですよね?」
ふと思ったことを聞いてみる。
これまでの葉月の言動に怜は違和感を感じていた。
言葉で正確に表すのは難しいが、この葉月という人物はおそらく美玖に近い。
美玖という自分のことを本当に大切にしてくれている姉を持つ怜だからこそ、直感的にそれが分かる。
桜彩が怜に迷惑を掛けていることを申し訳なく思っているようなことを言ってはいたが、葉月は『桜彩』のことは疑ってはいないのだと。
「え?」
怜の言葉に再び桜彩が目を丸くして驚く。
一方で葉月の方は表情を崩す。
「気付いていたのね?」
「気付いていたっていうか、なんとなくですけど」
「…………ど、どういうこと?」
怜と葉月の会話の内容が分からない桜彩の視線が二人の間を往復する。
「桜彩が俺に迷惑を掛けていないか気にしていたようなこと言っていたけど、その実葉月さんが疑っていたのは最初から俺だけってことだ」
怜の言葉に葉月が頷いて頭を下げる。
「ええ。お詫びするわ。桜彩、あなたが毎日毎日色んな料理の写真を送ってきたでしょ? それもどう考えてもあなた一人じゃ作れないような物を。だからこっちであなたの身に何が起きているのか確認しに来たのよ」
「え、ええっ!?」
葉月の告白に桜彩が驚きの声を上げる。
「そ、それじゃあ私が葉月を安心させようと思って送ってたお食事の写真は逆効果だったってこと……?」
「まあ結果としてそういうことね」
「そ、そんな……」
自分がやった行為が逆に大切な姉を心配させる結果となってしまったことに肩を落とす桜彩。
葉月はそんな桜彩に苦笑しながらも慰めるように頭を撫でる。
「言っておくけど、こっちに来たらその理由が美玖の弟だって分かって一応安心はしたのよ。ああ、美玖の弟が桜彩を助けてくれたのかってね。私は美玖のことは信じてるし、その美玖が怜、あなたのことを信用しているのも分かってるわ。でもね、それでもあなたのことを直接確かめたかったの」
それが葉月が桜彩に疑いの目を持ったように見せかけていた理由。
怜が桜彩にとって本当に力になってくれているのか、それを知りたかった。
「美玖の弟なら桜彩のことを誑かしてるわけじゃあないとは思ったんだけどね。それでも試すような真似をしてごめんなさい」
「試されたなんて思っていませんよ」
怜にしてみれば葉月は桜彩の成長を確認しただけ。
別に責められたわけでもないし暴言を吐かれたわけでもない。
それに大切な妹が同年代の異性と夜遅くに同じ部屋にいたのだ。
葉月の立場からすれば怜に不審な目を向けるのは当然だと思う。
「それと葉月さん、ノートの一ページ目を見て下さい」
「え?」
怪訝な顔をして怜の言った通りのページを開く葉月。
そしてそこに書かれていた言葉を見てその顔が驚きに染まる。
『目標:ゴールデンウィークまでに簡単な料理を作れるようになって葉月を安心させる!』
「桜彩……」
思わず葉月の目が熱くなる。
照れる桜彩を抱きしめて
「良かったわね、桜彩。こんな良い人に巡り合うことが出来て」
「もう……。私は最初からそう言ってたのに」
拗ねたように桜彩も葉月に笑い返す。
「そしてありがとう、怜。桜彩を大切にしてくれて」
怜の方を向いた葉月がそう怜に言葉を掛ける。
美人姉妹二人の笑顔に見とれながら、怜もつられて笑顔になっていく。
「桜彩ちゃん。あたしからもお礼を言わせてもらえる?」
「え?」
するとそれまで黙っていた美玖も口を開く。
「お、お礼と言われても、私は怜さんにお世話になっているだけですので……」
桜彩にしてみればお礼を言うことはあってもお礼を言われることに心当たりは全くない。
出会ってから今に至るまで、桜彩は常に怜に助けられてきた。
そんな頭に疑問符を浮かべる桜彩に対して美玖はふっと笑いかける。
「今のあなた達のやり取りを見て、二人の間に信頼関係があることは良く分かったわ。怜は他人を深い所では信用しない子だから。だからありがとう。あなたが怜にとって信に足る相手であってくれて」
「い、いえ……それでしたら私の方もです……。最初に説明したように、怜さんが私のことを友人として大切にしてくれたので、私も怜さんを信じることが出来たんです」
「だからこそそこで怜を裏切らないでくれたのが嬉しいのよ」
そう言いながら笑いかける美玖。
桜彩としては前から不思議に思っていたことがある。
怜は基本的に人当たりも良く多くのクラスメイトとも交流を持っている。
しかし怜と仲良くなった今なら、怜は陸翔と蕾華以外の相手には一線を引いているのが良く分かる。
おそらくだが美玖の言葉は怜にとってその辺りの――
「……お茶を淹れ直しますね」
そんなことを桜彩が考えていると怜がそう言って立ち上がる。
「あ、私も手伝います」
慌てて桜彩も立ち上がって怜の後を付いて行く。
「ふふっ。本当に仲良いわね」
「ええ。良かったわ。こうして引っ越してきた部屋の隣にあなたの弟が住んでくれていて」
「それこそあたし達の方こそ。隣に桜彩ちゃんが引っ越して来てくれて本当に良かったわ」
仲良くお茶の準備をする二人の後姿を美玖と葉月は微笑ましく見つめていた。
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