第12話 殺意の証明

第12話 殺意の証明


2023年最後の買い出しに夫婦で向かう。

当たり前だが、玄関には施錠をして。

当たり前と断ったが、昭和の良き時代は開けさしでも平気だった。

獲られるようなものも無いし、命を狙われる危険も無い。

町内や地区内が、ゆるやかな絆と信頼で護られていた時代。


ショッピングバッグを自転車に搭載するのは危険だ。

一時期、原動機付自転車でひったくる事例が続発!

一時期よりは安全と構えても

誰が模倣するかわからない手口だ。


冒頭の玄関施錠も、岡山県で起きた殺人事件が尾を引いている。

おそらく犯行動機はあっただろうが、

心当たりが無い人間関係を築けていても

誰に命を狙われるか解らない社会。


僕も先輩に本気で命を狙われたことがある。

生還出来たのは鴻峯商事に仕事に出ていて、家を空けていたからだ。

先輩は掃き出し窓をレンガでぶち壊して室内に侵入するも

両親の叫び声に吃驚して、軽自動車で逃走したらしい。

辻褄が合っていないようだが

「あいつを殺そうと思って、室内に侵入した」

と、取り調べの際に独白したと人伝に聞いた。


先輩は面倒見のいい兄ちゃんみたいな人だった。

躁鬱病の躁状態と、情報の錯綜がぐちゃぐちゃになって

生命を終わらせると言う決断に至ったのだと。

「麻雀で勝った」「将棋で勝った」「カラオケ採点で上を行った」

「月給を上回った」みたいなことも気に食わなかったと。

加減すれば良かったのか? と言う極論にも達するが、

全力同士で出した結果を受け容れられない時点で

先輩は、俺が知ってる慕っていた先輩では無かった。

仕事が休日だったら、俺はこの文章を書けなかったかも知れない。

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