第02話 ビリジアンランチ

第02話 ビリジアンランチ


腰部骨折者の食事は大変だ。

「寝ながら食べる横着をするな!」家族に怒られたことがあると思うが

仰臥位しか体位変換出来ないために

必然的に寝ながら食べることになる。

流石に固形物はNGで、ミキサー食に推移するのだが

ほうれん草のサラダの暴力的なフォルムと言ったら。

絵の具を溶いて皿に盛っているイメージ。

冗談を言うテンションじゃないから後日談だが

ビリジアンランチと即興で名付けた。

コンビニエンスストアのカップデリってポテンシャル高くて

ブロッコリーとタコと空豆と言う地味なトリオでも

味のクオリティはめちゃくちゃ高い!

ビリジアンランチにも想像を超えて欲しかったので

遥か未来からHOTな情報をお伝えしたのだが

どれだけメレンゲのようにほうれん草をミキシングしても

味の限界値を1mmも超えることは無かった。


名称出していいんかな?

やめておこう、ミルクセーキみたいな栄養ドリンクがあって

口に含むと歯が溶けそうなくらい

甘ったるい規格の女郎が居るんだけど

患者に大不評だったそいつを、俺は好んで飲み干していた。

絶命を思っての自傷行為だったが、

精神病院暮らしは辛気臭くてさ。

車椅子には代わりなかったが、脱出する気力が芽生えつつあった。

予定外の歩行訓練も、徐々に開始される。

第02話で早くも生還論?

ああ、善は急げだ。早く実社会に還ろう!

総合病院の個室で、生涯この窓の景色を見詰めて

一生を閉じるんだと思っていた。

短絡的だが、腰部は深刻なダメージだったし

左腕は幻覚を見るくらい痛み叫んでいた。

ビリジアンランチ、おかわり!……しねえよ。

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