第7話

アネモネ山に着いたカインズの3人は山の奥に住むドラゴに会うために山を登っている。


足場は階段になっておりきちんと舗装されているようだ。


「あと、どんぐらいで着くのかな〜。もう疲れたよ、、」


アブは汗だくになりながら文句を垂れる。


「この山に住んでいるとなれば何処かに小屋のような建物があるはずです。まだ小屋が見える気配が無いのでまだまだかかりそうですね」


サースは周囲を見渡して何も建物らしいものが見えないことを確認する。


「じゃぁここら辺で一旦休憩にするか!サース、場所を作ってもらっていいか?」


「はい、分かりました。」


サースはオーラから頼まれた後に地面に手を当てると地面から木が生えてベンチのように座れる場所が作られる。


「ふぅ、サースありがと!」


アブは木の上に座り込んで感謝の言葉を送る。


「もう少し登ったら開けた場所に着きそうだな」


オーラは目を細めながら上の方を見つめる。


「では、次の休憩はそこにしましょうか」


「わかった!」


3人は休憩を終えて、再度山へ登り始める。アブは既にヘトヘトの状態だが、サースとオーラはまだまだ余裕そうである。


「ふぅ、やっと開けた場所に着いたよ〜」


「見ろ、あそこに小屋があるぞ!ドラゴはあそこに住んでるに違いない!」


3人のいる場所から10分ほどの距離に小屋がある事にオーラは気付いたようだ。


「では、少し休んだら小屋まで行きましょう」


サースはもう一度木を生やして座るスペースを作り、木に座りながら提案する。


「そうはさせませんよ」


突如上空から翼の生えた人物が3人の前に着地して現れた。


「誰だお前は?」


オーラは突然現れた人物に警戒しながらも問いかける。


「私はメシアのリーダー、コピと言います。ドラゴさんは私たちのチームに必要なのでここであなた達を足止めさせてもらいますよ」


コピは背中の翼と鳥のような足を元に戻しながら話す。


「メシア?聞いた事がない名前ね。足止めという事は先に誰かを行かせてるって事だね」


アブはコピの発言でコピが一人でここに来ていない事を察する。


「つまり、手早く彼を捕縛した上で先に行ってる人物の対処も行わなければならないという事ですね」


サースは冷静に現状を分析する。


「なら、さっさとやっちまおうぜ!」


オーラは自身の体を包むようにオレンジ色のモヤを纏った後、コピに向かって真っ直ぐ駆け出していく。


パチン


「炎球(フレイムボール)」


コピが指を鳴らした後に手のひらをオーラの方に向けると炎の塊がオーラの方に飛んでいく。


「三木壁(サンモクヘキ)」


サースが地面に手を当てるとオーラの前に太い木が三本現れて向かってくる炎から守る。


木は燃えて崩れ落ちてしまうが、木の後ろに隠れていたオーラが燃えている木を避けながらコピに突っ込む。

同時にコピの左右から何故か二人のアブが迫ってきており、残る後方にも大量の木が隙間なく生えており逃げ道を失っていた。


「いいチームワークだ」


パチン


「霊化」


コピは3人に称賛を送りながらもまた指をならす。


「らぁぁ!」


そんなことは構わずに、オーラはコピに向かって殴りかかろうとし、それに合わせて左右の二人のアブも同じタイミングで殴ろうとする。


だが3人の拳はコピには当たらずに体をすり抜けて、3人はぶつかってしまい、その衝撃で二人のアブは煙となって消え去る。オーラはなんとも無いみたいだが、オーラの拳がコピの体をすり抜けた後に、コピはオーラの腹部に蹴りを入れる。


「ぐ、なんなんださっきからコロコロと違う能力を使いやがって」


オーラは蹴られて怯んだものの、オレンジ色のモヤのおかげでダメージはそれほど無いようだ。


「変化に炎に透明化、多くの能力が使用出来るみたいですね」


「恐らく、幻術系か能力の模倣。後者だとしたら厄介だね」


サースはコピが使っていた能力を分析し、サースの後ろでアブは能力の予想を立てている。


「ただ、今の透明化がレイさんの能力なら対処法があるわ。二人とも合わせて!」


アブがサースとオーラに呼びかけると、周囲に10人ほどのアブが現れ同時にコピに向かって走り出す。


「包樹圧木(ホウジュアッキ)」


突如コピの周囲を囲むように木が生えてきてそれぞれがコピに向かって伸びていく。


コピは空中に浮かびながら木を通り抜けて目の前にいるオーラに攻撃を仕掛けようとしている。


迫ってくるコピに対しオーラは後ろに下がり、代わりにアブの分身が前に出てきて次々にコピにぶつかろうとするが全ての攻撃はすり抜けていく。


「今よ!」


アブの掛け声と共にアブの分身に紛れたオーラがコピの顔を殴りにいく。


コピは何かを察したのか咄嗟に手を顔の前に出すが、オーラは構わず拳を振り抜く。



「ぐっっ!」


振り抜いた拳はコピの体をすり抜ける事はせずに防ごうしていた手ごとコピを吹き飛ばす。


コピが防ぐために使った手は全ての指の関節が折れていて指が変な方向に曲がっている。


「らぁぁ、どうだ!」


「やはり、あなたの能力は能力の模倣だったのね。今使っていた能力は霊化。どんな物体もすり抜ける事ができるようになるけど連続して使えるのは10秒ほどなのよ!」


アブはコピが使っていた霊化の能力の対処法を知っていたようた。


「そうだったのですね。今まで勿体ぶって使っていませんでしたが、そのつけが来てしまいましたね」


パチン


「回復(ヒール)」


コピが怪我を負っていない手で指を鳴らすと怪我を負っていた手は緑色の光に包まれてあっという間に治っていく。


「今のはストロングさんの能力ですね。もしかしたら超能隊の全ての能力を使えるかもしれませんね」


サースは流れてくる冷や汗を腕で拭う。


「別になんでも使える訳では無いですがね。例えばウィークさんの能力を使う事はできなかったですね」


パチン


指を鳴らすとコピの姿は消える。


次の瞬間にはサースの後ろに立っていたアブが無言で地面に倒れてしまう。アブの背後にはいつのまにかコピが立っていた。


「アブ!!」


アブの倒れる音でサースとオーラはそれぞれアブの方に振り向く。


「瞬間移動ですか。超能隊の能力が使えるのだったらポートさんの能力を考慮すべきでした、、」


サースは悔しそうな顔をしながらも手は地面に当てており、コピに向けて木を生やして攻撃する。


パチン


コピは指を鳴らした後に手を向かってくる木に当てる。すると木は手に触れると消え去ってしまう。


「今度はブレイクさんの能力ですか、、」


「アブをよくも!!!」


オーラは怒りに身を任せてコピに突っ込んでいく。


「殺していませんよ、貴重な戦力ですからね」


コピは向かってくるオーラに向かって右手を伸ばす。


「針樹雨(シンヂュウ)」


だがサースの周辺の地面から針状の木の枝が空に向かって発射され、周囲一体に向かって降り注ぐ。アブの体には木が巻き付いていて降ってくる木の枝から守られている。


オーラは体に纏っているオレンジ色のモヤを右手に全て移動させた後、オレンジ色のモヤは傘のような形状に変化しオーラの身を守る。


「これは右手だけでは塞げなさそうですね」


パチン


コピはオーラと同様にオレンジ色のモヤをを傘状に変化させた。木の枝が二人に降り注ぐが傘状のモヤに全て弾かれて行く。


木の枝が降り止んだと同時にオーラはコピ目掛けて走り出す。


ボン!!


小屋がある上空で爆発が起こり、オーラは小屋の方に一瞬意識を割いてしまう。


パチン


「ピンクボール、ピンクカーテン」


オーラが小屋に気を取られた隙にコピの周囲を囲うようにカーテンが閉められる。


カーテンが完全に閉められた後、カーテンは消え去りコピの姿は消え去っていた。


「クソ!!逃げられたか!」


オーラは地面を殴り、怒りをぶつける。


「恐らくドラゴの勧誘が終わったのでしょう。さっきの爆発はその合図でコピはここで足止めする必要が無くなったというところでしょう」


サースは小屋の上空で起きた爆発とコピがこの場からいなくなった状況からドラゴはもう勧誘されてしまったと考えたようだ。


「うぅ、あいつは!?」


アブが目覚めと同時に素早く立ち上がり周りを見渡す。しかしコピの姿が見当たらない状況から、逃げられたことを察したようだ。


「アブ!無事でよかった!」


オーラはアブの無事を確認できて安心したようで少し涙目になりながらアブに駆け寄る。


「アブさん、コピと名乗る人物には逃げられてしまいました。一旦小屋まで確認に行った後、現状をブレイクさんに報告しましょう」


「そうね。恐らく小屋から既にいなくなってるとは思うけれど一応確認しましょう。今回の任務は失敗に終わってしまったわね、、」


カインズに与えられた勧誘の任務は突如現れた謎の人物によって失敗に終わってしまった。


何故自分達と同じタイミングでアネモネ山に現れたのか、コピと名乗る人物の目的は何なのか、3人は沢山の謎に包まれながらも街に帰還する。

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