第2話

---15分前の中央広場


広場では賑わっており、様々なお店が立ち並んでいる。

そんな中で一際ガタイのいい男性が片手に樽の酒を持ちながら歩いており、足取りもふらついている。


「おい、お嬢さんちょっと一杯付き合ってくれねーか?」


男とすれ違った女性は運が悪く男に絡まれてしまった様だ。


「す、すみません、急いでいるので失礼します」


女性は怯えた表情をしながら、その場を立ち去ろうとする。


「このリーザス様の酒が飲めねーってことか?一杯くらい付き合える時間はあるだろ!」


リーザスはそう言うと女性の肩を掴む。


「ハハ、やめておきなよ、彼女が可哀想だ」


リーザスの背後から妙な格好をした人物が声をかける。


「あ?なんだテメェは。変な格好しやがってヒーローのつもりか?」


リーザスは怪訝な表情をしながら声をかけてきた人物に圧をかける。


「ハハ、ヒーローじゃなくてピエロだよ。僕を見た人に笑ってほしいからこの格好をしているんだ」


ピエロと名乗った人物は派手な水玉模様の服を着ており、小柄なせいか服がダボ着いている。

白顔で目の周りが紫色で塗られており、両目の下に赤い涙マークが描かれている。


「彼女は楽しそうじゃないよ?その手を離してあげるんだ」


ピエロは自身の赤いアフロの髪を撫でながら言い放つ。


「生意気なやつだな。引っ込んでろ!」


リーザスは手に持っていた酒の樽をピエロに向かって投げつける。

だが、投げつけた樽はピエロに当たらずそのまま地面に当たって壊れる結果になる。


「ハハ、まずはその指を剥がしてあげるね」


いつのまにか女性とリーザスの間にピエロは現れており、右手に持ったナイフで女性を掴んでいたリーザスの右手を切り落とした。


「ぐあぁぁ!何してくれてんだクソ野郎が!!」


リーザスは痛みで悶絶しながらも、残った左手でピエロを殴りかかる。


「ハハ、遅いよ。左手も切り落としてあげる!」


ピエロは殴りかかってくる左手を避けながら、ナイフを左手目掛けて振り下ろす。


キィィン!


振り下ろしたナイフは突然現れた男が持っている刀で塞がれた。


「やりすぎだぜぃ!これ以上はもうよすんだ」


ちょんまげの髪型が特徴的の男はピエロのナイフを弾いた後、リーザスの服を掴み後ろにリーザスを投げつけピエロから遠ざける。


「俺が悪かった!酔っ払ってて気が大きくなってたんだ。許してくれ!」


リーザスは無くなった右手を左手で押さえながら、弱弱しい声で謝罪をする。


「あいつも謝ってるんだからお前も許してやるんだぜぃ」


男はピエロに刀を向け警戒をしながら説得する。


「ハハ、ムサシさんですね。やっぱり強そうだ〜!せっかくの機会だ。僕とちょっと遊んでくださいよ〜」


ピエロは走り出しナイフで素早く切り掛かる。


「おいおい、お前はあの女性を助けたかったんじゃないのかよ?」


ムサシと呼ばれた人物は振り下ろされるナイフを刀で受ける。

お互いの身長は同じであり、力が拮抗し鍔迫り合いが起きた。


「ハハ、こんなもんじゃないよね?早く本気を出してよ!」


ピエロは笑いながらナイフを振り下ろす力を強める。


「ごちゃごちゃうるせーぜぃ!」


すぐさまムサシはナイフを受け流してピエロに切り掛かるがギリギリのところで回避されて距離を取られてしまう。


「ハハ、危ない危ない。のってきたかな?こっちもやらせてもらうよ?」


ピエロは笑いながら軽快なステップを踏みながら話す。


「レッドボール、レッドパワー」


ピエロが言葉を発すると突然右手に赤い球が現れる。

そしてすぐさまその赤い球を握りつぶすと、赤いオーラがピエロを包み込んでいく。


「身体能力の強化か?じゃぁ俺も少し本気を出してやるぜぃ」


ムサシは言い放つと2本目の刀を抜いて両手に刀をもつ。


「ハハ、やっと二刀流のムサシが見れるんだね!」


ピエロはムサシが両手に刀を持った瞬間にムサシの方に走り出しており、先ほどまでの動きよりも明らかに速いスピードで近づく。


「面白そーなことやってんじゃねーか!俺も混ぜてくれよ!」


ゴクウが突然上空から現れて雲の上から棒をピエロに振り下ろす。

ピエロは驚きながらも手に持つナイフを、振り下ろされてくる棒に当てて塞ぐ。


「ハハ、あなたはゴクウさんですね。もう少しムサシさんと遊んでいたかったのですが、、」


ピエロは強化しているはずの力で押し勝てないことに驚きながらも、棒を弾き後退する。


「ケチくさいこと言わねーで俺とも遊んでくれよ」


ゴクウは手に持つ棒をクルクルと回転させながらピエロを挑発する。


「ゴクウ、今いいところだったんだぜぃ!ちょっと引っ込んでてくれよ」


ムサシは割り込んできたゴクウに向かって不満の言葉を投げかける。


「ハハ、流石に超能隊を二人相手にするのは楽しく無さそうだね。今日のところはここで引かせてもらうよ」


そう言うとピエロが纏っていた赤いオーラは消える。


「ピンクボール、ピンクカーテン」


またしてもピエロの手に突然ピンク色のボールが現れ、ピエロは即座にボールを潰す。

するとピンク色のカーテンがピエロを中心とした円状に閉まっていく。


「逃がすかよ!」「逃さねーぜ!」


悟空とムサシは同時にピエロに向かうが、カーテンは既に閉まってしまいピエロの姿は隠れてしまった。

それでも二人は棒と刀でそれぞれカーテンを切り裂いたが、そこにはピエロは既にいなかった。


「何だったんだあいつは?」


ムサシは呟きながら両手に持っていた刀を鞘に収める。


「俺はこの怪我人をストロングさんのところに連れていくから、ムサシはこれから集まってくる超能隊の奴らに状況説明頼むわ!」


ゴクウはリーザスを雲の上に乗せてすぐさまどこかに飛んでいってしまった。


「あいつ、面倒くさい役目を押し付けやがったぜぃ、、」


ムサシはため息をつきながらこれから集まってくる人達にどう説明をするか考える事にした。


---

部屋の何もない空間に突然ピンク色のカーテンが現れて、円状にカーテンが開いていく。


「やぁ、遅かったじゃないか。なにをしていたんだい?」


部屋には人が既におり、その人物はカーテンに向かって声をかける。


「ハハ、コピさんすみません。超能隊と軽く遊んでしまいました」


カーテンが完全に開かれ、現れたピエロが椅子に座って本を読んでいる人物に向かって笑顔で謝罪する。


「超能隊と?まだ姿は見せないつもりだったんですがね。まぁいいでしょう」


ピエロにコピと呼ばれた青年は本を片手に持ちながら立ち上がる。

身長は高く180センチほどの椅子の背もたれと同じ高さである。銀色の髪が腰までの長さがあり、顔はかなりの美形である。


「時間も待ってはくれないですからね。そろそろ私たちも動き始めますか」


コピは口角を軽く上げて不敵な笑みを浮かべる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る