第91話 次回予告

「みな、もう気付いていると思うが次回が最終回だ」

 このレッドの一言で全員に妙な緊張感が走る。

「まあ、正確に言えば明日忍転道との最終決戦に入って、来週最終回というべきなのだが――それはそれとして最後に俺達にはやらなければならない事がある……」

 それは?

「それは次回予告だ。そう――俺達には明日、最終回用の格好いい次回予告を最後に披露する義務がある。なので今からそれを決めたい」

 あ~う~ん……まぁそっか。最終回だもんね。最後の次回予告は力が入るってか入れるべきだよね。っと私が考えているとブルーも同じ考えだったか。

「なるほど。では最終回の予告は力を入れて予告だけで30分というのは如何か?」

 全然同じ考えじゃなかった。

「あんたそれ本編の尺ないじゃん」

 と私がブルーに叱責を飛ばすと。

「あ、いや。確かにそうなのですが30分ずっとオープニングよりかはマシかなと?」

「30分ずっとってもう歌番組じゃん!」

 あ、いや同じ歌30分だから作業用BGMの方がしっくりくるか……。


 とか考えていると。

「ちょっといいか?」

 と片手を上げたのは小豆ちゃんだった。

「最終回の予告に力を入れるのは概ね賛成なのだが、如何せん明日の展開次第では? ましてや明日の展開を予想しつつ更には来週の展開を予想しての予告となると現時点では至難の業だと思うのだが?」

 これにレッドは両腕を組み一つ頷き。

「確かにその通りかもしれん。だが博士、ここで必要となるのが逆転の発想だ」

 というと?

「というと?」

「いいか? 最終回に限った話ではないが次回予告とはネタバレが過ぎてはならない。丁度いい塩梅で『来週も見たい! 来週も面白そう!』と思わせるように見せる必要がある。となれば――最後の盛り上がりとなる最終回ともなれば、逆に殆どネタバレはしない方が良いまであると思わないか?」

「おお、なるほど得心した」

 と納得する小豆ちゃんに対してレッドは。

「まあ、実際最終回は忍転道とは戦わないしな」


 こ、こいつトンでもないネタバレさらっとしてるーっ!!


 いや、まあ……それが事実かどうかは私にはわからないから今のは聞かなかった事にして。

「それで? じゃあ具体的な内容は殆ど言わないとして、それ以外のところに力を入れようって話よね?」

「そうだな。例えば製作費10億円とかは結構力が入ってると思わないか?」

「次回予告だけでじゅぅう億!?」

 力入り過ぎでしょっ!! 次回予告だけで映画作れるわ……。

 としているとブルー。

「ではこういうのは如何か? 歴代のスーパー戦隊ヒーローのレッド殿全員を呼ぶというのは?」

「いや予告のためだけに全員呼んでも尺足りなくない? せいぜい3~4人が喋って終わりでしょ?」

 という私の言葉にブルーは大口を開けてカラカラと笑い。

「はっはっはっ。いやいや歴代のレッド殿達には予告をしてもらう訳ではなく、本当にただ来てもらうだけですよ」

「なんのためにっ!?」

「製作費の10億を使い切るためですな。呼ぶだけ呼んでギャラを払って終わり――あ! なんなら東京ドームを貸し切るのは如何か? 貸し切るだけでそこに歴代のレッド殿達を放置する……」

「いや先輩方もドームも扱いが雑じゃないっ? なんで無理に10億使い切ろうとするのよ?」

「え? いや……制作費の10億を使い切るのが最終回ではないのですか?」

「どんな最終回よ!」

 てゆーか製作費10億は確定なの?


 っという事で私が恐る恐る口を開く。

「あ、あのさぁ。とりあえず製作費が10億円あったらいくらでも豪華には出来るだろうからさ、先に文言考えない? 最終回っぽい且つネタバレしないようないい感じのヤツ……?」

 まあ、今日明日で10億使い切るのは無理だろうし……とは口に出さずにいると。

「うむ。確かにピンクの言う通りだな。では誰か何か良い案はあるか?」

 レッドの促しに真っ先に手を上げたのはグレーちゃんだった。

「よし。グレー頼む」

「はい。あの……やっぱり最終回っぽくするなら『さらば! 〇〇〇〇』みたいなのがよくないですか?」

「ほぉ……確かに。ならば『さらば! ピンクだけ!』とかはどうだ?」

「ちょっ、なんで私だけ死んだみたいになってんのっ!? てかモロネタバレじゃん!!」

 とレッドにツッコミを入れていると横からブルー。

「では『さらば! ピンクだけの人!』というのは如何か?」

「いやそれ結局私じゃん! 私の個性って色しかないのっ?」

 そりゃあんた達に比べたら地味だって自覚はあるけどさぁ……。


 ただこのままだと一生私が殺され続けるので。

「あのさ『さらば! 〇〇〇〇』もいいけど、例えば『おかず戦隊よ。永遠なれ』とか『地球最後の希望。ごはんですよ』とかも最終回っぽくて良くない?」

「ほぅ? 悪くはないな?」

 とアゴを撫でるレッド。

「ならば『さらばピンクよ。永遠に』とかはどうだ?」

「あんたは何がなんでも私を殺したいのかっ!」

 っと横からブルー。

「では『地球最後のごはん』とかは如何か?」

「なんか明日地球が滅びるなら最後に何食べたい? って質問みたいになってる!?」

 ってか私達のコンセプトが食べ物っていう弊害がまさか最終回までついて回るとは思わなかった!


 ――というワケで。なんとしても私を殺そうとするレッドの次回予告を退け、且つネタバレが過ぎない最終的な最終回への次回予告は。


 最終回

「別にピンクは死にません」


 に決定した。

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