第87話 動き出した忍転道
忍転道の様子見に入ってから多少の月日が流れた。
忍転道のユーチューブチャンネル「青と白の宝石」を観察してはいたけど、動画はそこそこにアップされ続けていた。例えば――
最初から最後まで部屋の中で男がたった1人で2時間かけてミステリー小説を読み続け犯人を推理するだけの様子を流し続けるドキュメンタリー映画「ミッション・イン・ボッチ・フル」主演トム・クルーズ……の映画をレビューしたレビュー動画「ミッション・イン・ボッチ・フルをボッチでフルで見た感想」や。
大人気漫画。エルリック兄弟の活躍を描いた「鋼の年金暮らし」。
何故かエルリック兄弟と呼ばれる鋼野エドワード(84)と鋼野アルフォンス(86)という他人同士のパプアニューギニア人2人が盗まれた年金を取り戻し犯人を捕まえるまでの物語……における真犯人が誰なのかを考察する考察動画「真犯人はトム・クルーズ」等を上げていた。
探りを入れてきたグレーちゃんの話によると忍転道……というか参謀のダイコンは意図的にこれらの動画をユーチューブに上げる事を優先したり。あとは臭影者の方になるけど戦国坂四十六やその姉妹グループで4大ドームで和歌を詠ませる
――んだけど。
……その事件は突然に起きた。果麺ライダーさんが忍転道にボコボコにされたのである。
「驚いたな? これまで大人しかった忍転道が急に攻撃を仕掛けてくるとは……完全に油断していた。しかしとりあえずライダーの命に別状はなかったが――果麵ライダーの命とも言える変身ベルトが破壊されたらしい……」
と言ったのはレッドである。
「しかもその変身ベルトが代わりに――己の血を捧げないと2度と外れない呪いの変身ベルトへと変えられてしまったらしいですな?」
と、これを言ったのはブルー。
「それとやっぱりライダーさんのシンボルとも言えるバイクも破壊されて、バイクの方は乗ると必ず不幸になると言われている呪いのケンタウロスに変えられちゃったらしいですね?」
と言ったのはグレーちゃんだけど――
いや、別に誰もわざわざケンタウロスに乗らないくない? ていうか乗せてくれるの? まあ、ケンタウロスに乗ってる果麵ライダーさんをちょっと見てみたい気もするけど……。
としているとレッド。
「しかし幸いな事にベルトとバイクを呪いのアイテムに変えられはしたものの、呪いのベルトは未装着かつライダー自身は変身しなくても暗殺拳……北斗神拳は使えるので別段問題なく戦えると言っていた」
もうハッキリ北斗神拳って言っちゃったよ……てゆーかやっぱり変身しないで戦えるタイプだったかライダーさん。
「なので呪いのベルトはそのまま危険物としてゴミの日に出したので安心して欲しいとの事だ」
いや何が安心出来るのよそれ? 確かに危険物かもしれないけどお祓いとかしないで捨てちゃって大丈夫なの?
「因みに呪いのケンタウロスは生ゴミとして出したらしい」
「それはホントにやっちゃダメなヤツじゃん!!」
さすがに声を出してツッコミを入れる私だけど、レッドはキョトンとした顔で。
「何故だ? ちゃんとお祓いはしてから捨てたらしいぞ?」
なんでケンタウロスの方はちゃんとお祓いしてんのっ!?
っと私が目を丸くしていると横からブルー。
「いやレッド殿。ピンク殿は生ゴミではなくプラスチックゴミとして捨てるべきだった……と言いたいのでは?」
「ちっっっがうっ! そこじゃないのよっ! 問題なのはそこじゃなくて生き物をゴミとして捨てるなって言いたいのっ! てか色んなところからクレームくるわよ!」
するとレッド。
「なるほど。つまり生き物はゴミとして捨てるのではなく貴重品として捨てれば良いのだな?」
「そーゆー事言ってんじゃないわよアホっ!! 飼えなくなったペットを無責任に捨てるなとかそーゆー話よ!」
「おい貴様ピンクッ! ケンタウロスさんをペット扱いするなっ! ケンタウロスさんはちゃんと選挙権も持ってるんだぞ! 最近じゃウマ娘にも出演しているし!」
た、確かに半分ウマ娘だけどもぉ? てか人権通り越して選挙権持ってんの? じゃあそのケンタウロスは18歳以上……ってそんな事どうでもいいわっ! という一瞬の雑念を払い除け。
「選挙権まで持ってるの知ってんならゴミとして捨てるって発想自体捨てなさいよっ! あんたもブルーもライダーさんもっ!」
っという事で私視点だと呪いのケンタウロスが最終的にどうなったのか詳細は不明だけど――
レッドは。
「まぁとりあえずだ。ベルトもバイクも失ったが、ライダー自身は怪我さえ治れば再び戦線には復帰出来ると言っていた。なのでライダーはそれまで一旦演出上戦線離脱するという事だ」
演出上? …………あ! そっか。別に怪我だけならレッドとかブルーが回復魔法かければ速攻で全快するもんね。それが出来るのにしないから演出上って事か……ん?
「え? いや、あのさ……なんであんた達が回復魔法かければ一発なのにかけないの? ライダーさんて一応入院はしてるんでしょ?」
「ああ、一応病院で療養中だ。そして俺達が回復魔法をかけてやろうと申し出たのだが、本人に『演出上拒否する』と言われたので奴は今自力回復中だ」
「えぇ……」
いや何そのメタい発言……も、もしかして一旦戦線離脱して、最後の戦い辺りで華麗に復帰するって演出?
まぁ、なんにしても本人が拒否してるんじゃしょうがないし、最終決戦前までに戻ってきてくれればいいか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます