第6話 憎しみと恨みと……

 慧人はレミアを殺したあとその体を抱きしめて泣いた。それから何時間も泣き続けた。そして、天を見上げて絶望した。


 気がつけば空は曇り初め雨が降ってきた。その空はまるで慧人の心のように泣いている。


 慧人は何日もその場で泣き続けると、レミアの体を綺麗に洗いきちんと火葬した。そして、レミアが死んだ場所から少し離れた隠れた場所に墓を立て埋めた。


「……レミア……。必ず仇は打つ。アイツらには報いを受けてもらう。絶対に……絶対に殺す。そして、俺もそっちに行くよ」


 慧人はレミアの墓に向かってそう言って男達を探して歩き始めた。


 と言っても、慧人は時の魔術師。あれから男達がどこに行ったのかが見える。慧人は直ぐにその男達を見つけた。


「あいつら……死んでもらう」


 慧人はそう呟いて拳を強く握りしめる。そして、男達の後をつけた。


「……」


 慧人は無言で男達の後をつけていく。しかし、男達はそれに気が付かない。その時男達の会話が聞こえてくる。


「アイツはハズレだったな。あの女もただの人間だったみたいだ。ったく、時間の無駄だったぜ。噂なんか宛になんねぇな」


「そうだな。時の魔術師を狩ったらお金が貰えるって話だったが、あんな奴が時の魔術師なわけないからな」


「これで何人目だよ。もう既に12人はヤッてるだろ?」


そんなことを言って笑っている。


「次は誰にするかだよな」


「お前、女好きすぎだろ。男になにかしようとか思わねぇのかよ?」


「キモイやつだな。俺は女にしかきょうみがねぇんだよ」


男達は大声でそんなことを言って笑う。慧人はその話を聞いてさらに怒りが増してくる。そして、静かに後をつけた。


「……」


 男達が路地裏に入ったその時、男達が後ろを振り返った。そして、慧人の存在に気がつく。男達は慧人を見てニヤリと笑った。


「お前、あの女はどうした?」


「殺した」


「「「っ!?」」」


 男達はなんの迷いもなく暗く冷たい声でそう言う慧人に一瞬だけ恐怖を覚えた。そして、言う。


「ハッ!殺したのか!?大切な女だったんじゃねぇのかよ!?お前やってんな!アッハッハッハッハッ!」


「うるさいな。その臭い口を消すぞ」


「言ってろ!何も出来ない雑魚が……っ!?」


 その瞬間、男達の口は開かなくなった。どうやら慧人が男達の口の周りの時間を止めたらしい。


 慧人は男達の口を封じるとゆっくり近づいていく。そして言った。


「お前らは許さない。バラバラにして魔物の餌にでもしてやるよ」


 慧人は表情を一切変えずにそう言った。男達はその抑揚のない冷たい声にさらに恐怖を覚え、なにかを言いたそうにもがき出す。


 しかし、慧人はそんなこと気にしない。ナイフを10本ほど取りだして1本ずつ男達に刺していく。


「何か言いたいのか?黙れよ」


 そう言いながらナイフを1本2本と刺していく。男達はその度に叫び声を上げようとした。しかし、口が開かないためもがくだけだ。


 慧人はその姿を見ても何も楽しくなれなかった。爽快感も達成感も何も無かった。ただ、この男達を殺したい。そんな思いだけだった。


 そして、慧人は最後の1本のナイフを構える。


「これで、レミアの気も晴れるのかな?あの世で聞いてこいよ。いや、違うな。俺も直ぐにそっちに行くんだ。あの世でも殺してやるよ」


 慧人はそう言って男達を容赦なく殺した。

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