時の魔術師の冒険録

五三竜

プロローグ

 人が生まれてきてから苦しみを味わう回数はいくつだろうか?100回?1000回?1万回?


 いや、そんなものは分かるはずもない。なんせ、人はそんなものを数えないしすぐに忘れてしまおうとする。


 そして、その苦しみに耐えきれなかった人は、心を黒く染め過ちを犯す。だからこそ人には人が過ちを犯そうとした時止めてくれる誰かが必要だ。その人がいない時人は死を迎える。


 それは、現実世界も夢の世界も、想像の中の世界もどんな世界でも共通のことだ。


 彼はそれを知っていた。知っていたからこそ人と接することを試みた。しかし、人は自分とは異色の存在を認めはしない。


 いや、それだけでは無い。人は、誰かが苦しんでいても見て見ぬふりをする。『仲良くないから』、『自分も苦しいから』、『お前だけ苦しいアピールするな』、そう言って苦しんでいる者を見捨てる。


 その苦しんでいる者は世界から見捨てられ、そして1人静かに暮らすか、死ぬかだ。そんな時誰かに声をかけられれば助かるかもしれない。だが、1人になってしまえばそんなことは絶対に無い。


 そんな人の『見て欲しい』『認めて欲しい』という承認欲求はただの害悪でしかないのだ。


 彼は現実世界でそれを知った。そして、異世界でもそれを知った。苦しみの中に希望は見いだせず絶望しかない彼はずっと苦しみの中をさまよっていた。これは、そんな異世界で1人になった彼の冒険のお話。そして、彼が死ぬまでのお話……

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