序章 求婚は接吻から
「シュヴァリエ
ヴァイオレットの人生で初めてのキスは、未来の夫の命を救うための、ムードの
「ヴァイオレット・ダンズライト! 今この時をもって、貴様との
ハイアール王国の王太子である、ダッサム・ハイアールが
ヴァイオレットより少しだけ高い身長のダッサムは、サラサラとしたプラチナブロンドの
ほとんどの舞踏会参加者は「そんな
「ダッサム様……っ」
百年に一度、異世界から転移してくると言われるキセキの存在だ。
約半年前、人々を
ニホン、という国に住んでいたらしく、
そんなマナカは、ダッサムのことを
「隣にいらっしゃる聖女様──マナカ様と新たに婚約を結びたいが
「なっ! 言い方を
「……なるほど」
ヴァイオレットはポツリと
扇子を力強くパシンと閉じると、ヴァイオレットの
乱れた横髪を耳に
「お前は王宮で彼女に会うたびに、聖女としてもっと勉強しろだのマナーが
「グチグチと言ったつもりはありませんが……それが嫌がらせですか?」
「これを嫌がらせ以外のなんだと言うんだ! マナカはこの国に一人しかいない聖女だぞ!?
ダッサムの言葉に、ヴァイオレットは再び静かに溜息を
(
表情をほとんど
しかし、ヴァイオレットは、自身はなにも間違ったことはしていないのだからと言い聞かせて、
それからダッサムはというと、マナカから聞いたというヴァイオレットの
ヴァイオレットがそんなことをした覚えはないと伝えても、「マナカが言っているんだから正しい!」という良く分からない理論を
「私は将来ハイアール国の国王になる人間として、ヴァイオレットのような醜い女を妻にはできない! よって彼女との婚約は破棄し、新たに聖女マナカを私の妻にする! 皆のもの、盛大な
一部で巻き起こる
それをしているのは、婚約破棄宣言があった際、ヴァイオレットのことを
(レリーヌ
代々筆頭公爵家としてハイアール国の
だから、ヴァイオレットはこの事態に
それからヴァイオレットは歓声が
「改めて申し上げますが、私はマナカ様を爪弾きにしたつもりも、危害を加えようとしたこともございません。知識やマナーを身に付けたほうが良いとは何度か申しましたが、それには理由が──」
「ええい!
「……っ」
将来
(私の今までの努力や
けれど、今は過去に目を向けてもなにも変わらない。それに、なにもこの事態は想定できていなかったわけではないのだから。
ヴァイオレットは
そんなヴァイオレットに、会場中の雑音が
「婚約破棄の件は
パチンと指を鳴らし、近くに待機させていた従者から、ヴァイオレットは
「は? なんだこれは?」
「……? 婚約解消に必要な書類ですが。ダンズライト家側の署名は
「私が言っているのはそういうことじゃない!
先程より
今日一番感情的になっているその姿に、何故望みの婚約破棄が
けれど、そんな疑問を解消することも、どうでもいいことだ。
ヴァイオレットは
「殿下がマナカ様と
「……っ!! つまり、この状況も貴様の想定の
「……!?」
目を血走らせたダッサムは、王族とは思えないような口調で
「貴様のそういうなんでもお見通しといった態度が昔から大嫌いだったのだ!! 勉強やマナーが
「…………っ」
好かれているとは思わなかったけれど、まさかここまで嫌われているだなんて。
「……そう、でしたか」
ショックで、もう立っているのも
それなのに、ダッサムは
可愛らしいとか、話しているだけで
「私の新たな婚約者はこの国に一人しかいない聖女だ! ヴァイオレットなんかよりも
「やだ……ダッサム様、
ダッサムにそっと寄り
「そんなことはないよ、マナカ。ああ、そうだ。この場で聖女の力を披露してやってくれないか? そうすれば、この国においてそなたがどれほど貴重で尊い存在なのか、より
「分かりました……!」
ヴァイオレットに見せつけるようにして、マナカの腰を引き寄せながら提案したダッサム。対して、マナカはなんとも嬉しそうな表情で
そして次の瞬間、マナカの体を
「これが、キセキの力……
誰かがそう
それもマナカが
その様子にダッサムはヴァイオレットを見て、
──キャァァァ!!
会場後方から聞こえる
「……っ、シュヴァリエ
──この時のヴァイオレットはまだ知らなかった。
直後の自身の行動をきっかけに、
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