エリム・ノイヌーヴの甘い囁き♡

囁き・50

　総裁選に代表選ですって……？

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　この国の与党と野党第１党の顔を選ぶ選挙が、なかなかの盛り上がりをみせているわね。要は自分の支持者を、あの手この手で集めて規定推薦人を確保して、他（ほか）の候補者との狭間（はざま）で、表と裏でのばかし合いが繰り広げられるのよね。

　一言（ひとこと）で言えば、権力闘争という事かしら……与党も野党も、人間達の集合体なのだから、いろんな思惑が渦巻いて、互いに駆け引きをしているのでしょう？

　そこに、この国の人達の思い、苦しみは含まれ、改善しようという思考はあるのかしらね。討論会ではみんな耳触りのいい言葉と政策を語っているけれど、本心で言っているのか、嘘が内包されているのか、この国の人達はきちんと見ておかなければならないわね。

　与党は９人、野党は４人立候補しているのね。まぁ、若い人もいれば、女性や見慣れた顔の人もいたりして、いちおう体裁は整っているかしらね。

　そして、メインは上位２名による決選投票なのでしょう？　他（ほか）の候補者を支持していた人達が、ふたりのどちらに票を入れるのか……ワイドショーや討論番組で、政治ジャーナリストのみなさん達が独自の人脈や分析で予想しているわね。観ていると、なかなかに面白いわ。

　そこで影響力を増してくるのが、派閥という集団なのね……野党はグループって言っているわね。

　まったく、この世界の人間は、ひとりである事になにか恐れを感じでいるのかしら……どうしても仲間を作って、その中で安心したいのね。

　この世界では、３人集まれば派閥ができるって言うわよね……それが極端になっているのが、政治の、永田町の世界という事かしら。

　個として独立した私達からしてみれば、くだらない行いと概念ね。

　この国に限らず、それぞれの政党がそれぞれ徒党を組んで、この程度の世界しか構築できないなんて、呆れた政治の統治システムだわ。

　この世界もまだまだ未発展というべきかしら。いったい何百年、こんなか弱いシステムを維持、続けていこうとしているの？

　はたして、どちらの政党も、誰が総裁や代表になるのか……投開票まで瞞（だま）し瞞され、裏切りとすり寄り、誰もが表と裏の顔を巧みに使い分けて、自らの価値と地位を上げる事に腐心するのね……。

　今もテレビで政治ジャーナリストのみなさんが、票のゆくえや、誰が誰につくか……なんて事を予想しているわ。各局をハシゴする政治ジャーナリストさん達は特需を謳歌（おうか）しているわね。

　どうしたのエルフさん……えっ？　わたしも総裁選に立候補したい？

　ちょっとなに言っているのかわからないわ……もう立候補もできないし、国会議員でもなく、この党に所属もしていないでしょ。

　政策？　私の話（はなし）を聞いていなかったのかしら……魔法をこの国に普及させる？　その為の人材開発も行うですって？

　なんだか、怪しいわね。やめておいてね……なんですって？　各地にダンジョンを建設して、その権利でガッポガッポだね……そんなに事はうまく運ばないわよ。それにあなた、いつもミミックの罠にかかって、お弟子さんのお世話になっているのでしょう。

　そうやって「暗いよぅ、怖いよぅ、引っ張るんじゃなくて、逆に押し込んで……」とか言って、お弟子さんに呆れられてると聞いているわよ。

　えっ？　魔法防衛軍を創設するですって！？　まだ魔法にこだわるのね。大人しく、そこにある甘いものでも食べていてね。

「ゾルトラーク！」

　あらあらエルフさん、突然なにを叫んでいるの？　そして杖はしまいなさい！　いくらあがいたところで、国家議員ではないのだから、総裁選になんて出れるわけはないのよ。この世界、この国には魔法なんてものは、ラノベやアニメの世界の話（はなし）よ。

　それこそ、１００年後だったら、魔法もスタンダードになっているかもしれないわね。はい、これで気持ちを抑えてね。

　薬屋さん……また黒い液体の入ったペットボトルを出したわね。

　毒に特化した国づくり？　またおかしな事を言い出したわね。そんな事を推進したら、この国はテロ国家として、世界中から認定・警戒されるわよ。

　エルフさんも薬屋さんも、あまりこの世界の事象に強く干渉しない方（ほう）がいいわよ。

　慎（つつ）ましく女子会を楽しんでいればいいのよ。

「わたくしが、おふたりにお力添えしてもよろしくてよ……」

　エカテリアーナさん、ふたりを焚（た）きつけるのはやめてね。

　あなたが言うと、一気に現実味を帯びてくるから、ある意味怖いわ。

　もう実際に、今回の総裁選や代表選を裏で操（あやつ）っているのかしら……。

　まさか１１月に行われる大統領選も、もしかしたらエカテリアーナさんの手のひらのお遊びなのかもしれないわね。

　アリスも調子に乗って相乗りするのは、やめてね……もうトップアイドルとして成功・注目を浴びているのだから、政界進出なんて事は考えないでね。アリスがトップになったら、この国が超崩壊するわよ。

　エカテリアーナさん、どこに電話しているの？　エゲつない権利と財力を行使した裏工作はしなくてもいいのよ……通話を切ってもらっていいかしら。

　めずらしく乗り気なお弟子さんも、気持ちを抑えてね……別にこの国の政党の総裁や代表になったからって、いい事はなにもないわよ。

　どうせすぐに梯子を外されるのだから……。

　そんな事より、甘いものをたくさん買ってきたから、みんなで食べましょう……エカテリアーナさんが海外から取り寄せた高級スィーツもあるから、今日は超豪華なお泊まり女子会になるわね。

　にしても……こんな貧弱で国によって異なる政治統制システムなんかでよく、この世界、この国は存続していられるわね。

　私達の世界の超シンセティック・シンギュラリティ・セーフテッド・システムが懐かしく思えてくるわ……。

　それで結局、総裁選・代表選が終わったら、すぐに解散総選挙が待っているのでしょう？

　私が言うのもなんだけれど……

　この国の形はあなた達が選択するのよ。権利は、きちんと吟味して、欠席せずに行使してね。

　この意味……わかってもらえると嬉しいわ。

　さぁこの次も、この世界のダメなところ

　あなたのそばで……

　囁いて……ア・ゲ・ル♡

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「総裁選・代表選？　この国はなんて不効率な事をやってるんだ？　あれっ？　そんなに深刻な表情で、どうしたイリア」

「リリア……更新日の曜日を間違えてしまったわ……」

「ちょっとなに言ってるのか、わかんない」