囁き・26
遺産相続ですって……?
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この世界の人間は、その命を終えると、その人が所有していた資産……預貯金や不動産や、借金まで、配偶者や子供に相続する、つまりあげるという事ね。
こんな滑稽な制度が、当たり前だなんて、この世界の風習には驚かされるばかりだわ。
もちろん、私達の世界でこんな制度と風習はないわよ。個として独立している私達は死を迎えても、個であり、所有していた資産を誰かに差し出すなんて事は皆無だわ。
だからみんな死を迎えるまでに、パラアータル・マネリアルをすべて使い切るのよ。この世界の葬儀なんて行事はないから、その費用も不要なのよ。例外は、前にも話した二度生きる場合は、パラアータル・マネリアルを残すけれど、楽しんで生きて、楽しんで死んでゆくのが一般的かしら。
法的な血縁者には、親族が死亡した事は知らされるけれど、ただ、それだけの事なのよ。これを悲しいと感じるか、そうでないと感じるかは、存在している世界で概念が異なるかもしれないわね。
実は私の法的な遺伝子の提供者のひとりはもう、いないのよ。あなた達の世界で言う父親という存在に該当するかしら? 残されたもう一方の提供者である母親とも、ここしばらく、というか
私だけが、疎遠ではないわよ。むしろこれが私達の世界では普通の風景よ。
でも、この世界では死を
残された親族同士の骨肉の争い……まったくこの世界の人間達はお金が絡むと善人でも悪人に変身するのよね。
たいていは、わずかな資産をめぐっての
これが、この世界の富裕層と呼ばれる階層の争いだったら、想像を
これでは、死を迎えた人間達はどう思うのかしら? 「死んでも、死にきれない」という表現は、こういった時に使うのね。それと、なんだかこの世界では、死ぬと天国か地獄のどちらかに行くという伝承があるみたいだけれど、本当にそんな
死んだら終わりではないのかしら? そんな、ふたつの世界でまた生き続けるなんて事が、あるのかしらね。一説では、死を迎えてからが、本当の人生が始まる……なんて主張もあるのよね。
いわば、この世界は修行の
そして、現世での過酷な修行が始まる……でも、その修行も平等ではない。病気・自殺・事件・事故・殺人……いろんな事象で修行を強制的に終わらせる不条理も、あるのよね。
それで、平等でも不平等でも、死を迎えてから
なんて曖昧で滑稽な概念かしら?
私達の世界で、こんな御伽話を語ったら、きっとみんな笑ってしまうわね。
現実を楽しく生きて、笑顔で死を迎える……未練も心配も、
それが、この世界では可能なのかしら? きっと永遠に叶わないかもしれないわね。
それにしても、死にゆく人間のカネや不動産なんかをあてにして、親族の
私は……なんの恐れもなく、笑顔で自らの死を迎えたいわ……。
なんだか、気持ちが落ち込んできたわ。
甘いものもある事だし、初回が放送され始めた春アニメでも観る事にするわ。そう言えば、薬屋さんは、来年の放送が決まったけれど、エルフさんは、どうなのかしら? まぁ、大丈夫かしら……。
さぁこの次も、この世界のダメなところ
あなたのそばで……
囁いて……ア・ゲ・ル♡
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