第45話
麻衣ちゃんからクズと言われてしまった純花は、呆気に取られた様子で口をパクパクさせている。
親友であるはずの麻衣ちゃんから、クズはおまえの方だ、と言われればそんな反応にもなるだろう。
実は今日カレー目的で向かっているカフェには俺と心姫だけでなく、賢人と花穏、そして麻衣ちゃんも来ることになっており、麻衣ちゃんが純花に一撃を喰らわせてからすぐ、賢人と花穏も合流した。
麻衣ちゃんが純花の悪行を見かねて俺たちサイドへと寝返ってくれたことは賢人から聞いていたが、正直半信半疑だった。
いくら純花が目に見えて悪行を働いていたとしても、それが親友ともなれば見て見ぬふりをするのが普通だろうからな。
しかし、この状況を見るに本当に俺たちの味方になってくれたのだろう。
純花が最低の行為を働いていることに気付き、そして勇気を出して俺たち側に付いてくれて、今こうして断罪をしようとしてくれていることには感謝しかない。
「なっ、ちょっ、なんで私が麻衣にクズ呼ばわりされないといけないわけ⁉︎ 私何か悪いことした⁉︎」
『いや悪いことしかしてないんだが』とツッコミを入れたくなったが、今は麻衣ちゃんのターンなのでツッコミを入れるのはやめておいた。
「自分が瑛太君に対してしてきた仕打ち、忘れたわけじゃないでしょ?」
「そっ、それは……」
「瑛太君と別れた時は『瑛太が高宮先輩の悪口を言って引き留めようとしてきた』なんて認識違いの噂をばら撒いて、瑛太君に新しい彼女の影が見えたら『瑛太に無理矢理犯されそうになった』なんてありもしない噂を広めて……。それなのに『何か悪いことした?』って流石にそれはないんじゃない?」
俺の言いたいことを全て麻衣ちゃんが代弁してくれている。
俺から言われるよりも、親友である麻衣ちゃんから言われるのはかなりの大ダメージだろう。
「あ、あれはどっちも真実で……」
「私にはもうわかってるから。あれがどっちも純の嘘だってことも、純が簡単にそんな嘘をつける最低の人間だってことも」
「だっ、だって、私だって辛い思いを--」
「自分が辛い思いをしてるからってその何倍もの辛さを瑛太君に味わわせるなんてダメに決まってるじゃん! 純を止められずに見てることしかできなかった私が偉そうに言えることじゃないけど、瑛太君よりも絶対に純が悪いよ!」
「見てるだけだった自分も悪いって言うなら麻衣だって私と同罪なんじゃないの⁉︎」
「同罪なわけないでしょ⁉︎ 馬鹿なの⁉︎」
「ばっ、馬鹿⁉︎」
流石の俺も馬鹿という言葉には少し笑いそうになってしまった。
そんな言葉を言えてしまうほど、麻衣ちゃは純花に対して怒っているのだ。
「純のやってきた悪事がスイカくらいの大きさだとしたら、私の責任なんてミニトマトくらいなもんなんだよ! それを同罪だなんてありあるわけないでしょ⁉︎ ちょっと考えたらわかることじゃない!」
麻衣ちゃんの言っていることが正論すぎて、純花はグゥの音も出ない様子。
先程俺が隙を見せた時にも純花は反論してきて、俺はため息をつくことしかできなかったが、その時も馬鹿と言ってやればよかった。
「……私はね、純が大好きだったよ。綺麗で可愛くてみんなに優しくてみんなからも愛されてて。そんな純が大好きだったのに、なんでそんなクズになっちゃったの!」
「べ、別に私はクズになんか……」
「クズだよ! 自分が幸せになるために他人を不幸にする人間なんてクズって言わずになんて言うの⁉︎ ……申し訳ないけど私は今の純が大っ嫌いだよ。もう二度と友達に戻るつもりはない」
「突然出てきて急になんなの⁉︎ なんで私ばっかりクズ呼ばわりされないと行かないわけ⁉︎ クズクズ言ってくるあんたたちの方がよっぽどクズでしょ⁉︎」
「私の大切な人たちをクズ呼ばわりするのはやめてください‼︎」
大きな声に驚いた俺が横を見ると、先程まで俺の後ろに隠れて様子を伺っていたはずの心姫が俺の横に出てきて純花に対して憤った様子を見せていた。
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