第16話 本領発揮

「ハローハロー、挨拶は聞こえたか? 返事を知ろよクソッタレ」


 俺は嘲りながら拳銃を捨てる。

 撃ち殺したギャングは血だまりを広げるばかりだった。

 ぴくりとも反応しない。


「な……あっ、れ……?」


 残る三人のギャングは呆然としていた。

 あまりに唐突で思考が追い付いていないのだ。


(まさか殺されるとは思わなかったのだろうか)


 ギャング側が優位な状況で、俺が反撃してくるとは予想外だったらしい。

 見せしめとして、隊長を殺してから悠々と物資を奪うつもりだったのかもしれない。

 つくづく理解不能であるが、こいつらが混乱しているのはよく分かった。


 俺は両手の指をコキコキと鳴らす。

 力を抜いてギャング達を見た。


「おい、どうした。何か文句でもあるのか?」


 上体を左右に揺らしながら嘲笑する。


 我に返ったギャングは拳銃を引き抜こうとした。

 その一瞬を見計らって、俺は沈み込むように屈みながら前進する。

 ギャングの一人の腕を掴むと、その背後に回り込んだ。


 他の二人は拳銃を構えるも、仲間を盾にされて動けない。

 俺は掴んだギャングの片腕を捻り上げる。

 向けられる銃口を見つめながら笑った。


「ほら、撃ってみろよ。俺はここにいるぜ」


 ギャングは悔しそうにする。

 さすがに仲間は撃てないらしい。

 その甘さが命取りになるとは知らないようだ。


 俺は掴んでいたギャングを蹴り飛ばし、残る二人にぶつけた。

 連中がよろめく姿を見ながら踏み込んで装備していたナイフに触れる。

 抜き取るその動きを利用して、一人の首を後ろから掻き切った。


 裂けた首から鮮血のシャワーが噴き上がる。

 鮮血が天井まで濡らす中、俺は別のギャングの手に回し蹴りを当てた。

 手放された拳銃が床を滑っていく。


「てめぇっ!」


 唯一巻き込まれなかったギャングが激昂し、拳銃を連射してきた。

 しかし、そこに俺はいない。

 銃口の動きさえ注視していれば、回避は容易であった。

 発砲に合わせて懐に潜り込んだ俺は、相手の顎を肘でかち上げる。


「ぐゅぇっ!?」


 ギャングが大きく仰け反った。

 弾みで噛み千切られた舌が宙を舞う。

 そのまま倒れるのを視界の端に収めつつ、俺は残る一人の処理にかかる。


「ひっ、ひっ、ひぃ……っ!」


 俺に手を蹴られたギャングは、落とした銃を拾いに向かっていた。

 腰が抜けたのか、四つん這いになって必死に手を伸ばしている。


 俺は口笛を吹きながら回り込むと、笑いを堪えながら尋ねる。


「よう、何かお探しかい?」


「だ、だすげて――」


「大丈夫だ。元気出せよ」


 俺はギャングを励ましながら、腕を胴体に回して胸にナイフを突き刺す。

 肋骨を削る感触の後、刃先で心臓を捉える。

 動きを止めたギャングからナイフを引き抜いて血を振り払う。


 舌を噛み切った最後の一人のもとへと戻る。


「おえ、あう……ごぼぉぁ……」


 そのギャングは自らの血に溺れていた。

 舌が切れてパニックになっている。

 ショックのせいで無防備な姿を晒していた。


 俺は拳銃を拾って苦しむギャングの顔に向ける。


「特別サービスだ。楽に殺してやるよ」


 そう告げて発砲する。

 弾丸はギャングの顔面をあっけなく貫き、床に赤い花を咲かせた。

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