第15話 旅立ち

「ジュリアさん、この道を進むとどこに着くんだい?」


「まだ20キロは先になりますが、公都こうとフェルナンドですね。」


「公都…。ということは、この国で一番大きな都市ということだね?」


「ええ。私も行ったことはないのでえらそうなことは言えませんが、村の人から聞いた話ではそうなりますね。」


「そうなんだね。では、どのような都市なのか楽しみにするとしよう。」


「ええ。私も村以外を知らないので楽しみです。」


 私たちはホセ村を出発し、最終目的をレーナス帝国にさだめて旅することにした。


 現在いるイースラン公国からレーナス帝国までは相当そうとうな距離が離れているため、移動には長い期間をようするだろう。


 様々な国や都市を回りながら、この世界のことや、一般的な常識じょうしきを学ぶいい機会きかいとしたい。


 そして、ジンディオールが言うように、この世界や旅を存分ぞんぶんに楽しみたいと思う。


 とは言え、ジュリアさんを旅の仲間に引き入れてしまったが、少々軽率けいそく判断はんだんだったかも知れない。


 確かに右も左もわからないこの世界では、ジュリアさんの存在は自分にとっては心強い。


 しかしながら、それは私が彼女の安全面に責任せきにんうことを意味している。


 万が一の事があったとしても、ジュリアさんやアシュアさんが私を責めることは無いかも知れないが、私は自分が許せなくなるだろう。


 私は、そういった最悪のケースを回避かいひしながら、ジュリアさんを安全にみちびいていく必要がある。


(ジュリアさんは、回復魔法が使えるようだったが、実際に自衛じえいできる能力があるのだろうか?)


 私はジュリアさんのことが気になって、『インフォ』で彼女の能力を調べてみることにした。


《 基礎情報 》

名前:ジュリア

レベル :2

性別:女性

年齢:17歳

種族:人狼じんろう

職業:旅人

説明:幼少期に盗賊に襲撃しゅうげきされて両親を失う。その後、祖父アシュアに育てられる。ずっと村だけで生活してきたので、村の外の世界に強いあこがれを持つ。ジン・ディオール・フブキを助けたことがきっかけで、一緒に旅立つことを決意する。


《 スキル 》

回復魔法:レベル2

弓術:レベル1

魔力増幅ぞうふく:レベル1

unknown


(おっ!回復魔法に弓術きゅうじゅつが使えるのか。出発前にアシュアさんに弓矢を渡されていたが、そういうことだったのか…。)


 攻撃魔法はまだ使えないみたいだけど、彼女の持つ『魔力増幅』という能力は、魔法使いでも名をせる高位こういの者が持つ能力であると、私はジンディオールの記憶で知っていた。

 

 インフォによると、魔法の威力いりょくや効果を高め、魔力保有量ほゆうりょうを高める能力があるらしい。


(魔力増幅…。凄い能力だったんだね。ジュリアさんは、魔法の素質そしつがあるのかも知れないな。以前見た『聖治癒ヒール』は凄い回復能力だったし…。)


 戦闘になったことがないのでその実力はわからないが、弓が使えるならしばらく後方から攻撃してもらう方が安全だろう。


 一方、自分もゴブリンリーダーとの戦闘により、レベルが18まで上昇していた。


 強力な敵との遭遇そうぐうや、多勢たぜい無勢ぶぜいな状況におちいらなければ、危険は避けられるだろう。


 こうして私は、改めて気を引きめながら長い旅路を歩み始めたのであった…。

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