第11話 帝国の魔剣士リーナ(リーナ視点)
私は魔剣士隊、
魔剣士隊とは、大陸最強の部隊と
部隊内の上下関係は、序列順位が絶対的な
私たち魔剣士隊は、魔剣士を育てる機関、通称『ラボ』の卒業者で
私にとって
彼はラボの先輩であり、魔剣士隊の隊長でもあった。
ジン隊長の実力は、他の隊員と比較しても圧倒的だった。
序列二位のフレイですら全く
私は、10名で構成される魔剣士隊において、少しでもジン隊長に近づけるように必死に
彼に認められたいという思いが、私を突き動かしていた。
「ジン隊長、お疲れ様です!」
鍛錬が終わると、汗を
彼は私に感謝の笑顔を見せてくれた。
「すまないな、リーナ。私に好意的なのはお前かフレイだけだな。」
「私の目標は、ジン隊長ですから。あなたのような剣士になりたいんです。」
「ほう…。ならば、手合わせするか?」
「いいんですか!?是非お願いします!」
ジン隊長は、良き上官であるだけでなく、隊員の
私は心から彼を
しかし、
私は種族の違いなど気にならなかったが、他の隊員は陰で劣等種だと馬鹿にしていた。
私はそれが許せなかった…。
◇ ◇ ◇
「おい、リーナ!聞いたか?あのジン隊長が何者かに殺されたってよ!」
「え…嘘でしょう!?」
私は彼の
彼の部屋に入ると、血まみれの
ジン隊長は、胸を深く刺されて
近くには、フレイや他の隊員が
「ジン隊長!どうしてこんなことに…。」
私は、息をすることを
「リーナさん、私たちが気づいた時には…。」
「警備隊の調査では、正体不明の何者かに胸を一突きされて殺されたとのことです。」
フレイとアランが私にそっと声を掛けた。
「嘘よ!何者って誰よ!大陸最強の男が殺される訳ないわ!これはおかしい!絶対におかしいわ!」
私は、自分だけが悲しみ、取り乱していることに気づき、泣きながら部屋を飛び出した…。
◇ ◇ ◇
ジン隊長を入れた
生前、彼はフレイに死んだ際の対応をお願いしていたという。
棺ごとライム大河へ流し、海の底で眠りたいというのが彼の希望だったのだそうだ。
フレイはその願いを
私はフレイが嫌いだったが、そこは評価しようと思う。
隊員が並び、全員で棺を見送る。
「ヒューマンが隊長だとは、本当に最低だったぜ!」「ああ。あんなガキの下につくのは
私は彼らの言葉に耳を疑った。
自分たちの部隊の隊長を見送るには
「ちょっと、あなたたち!隊長を見送るのに何てことを言っているの?」
「リーナ。またかよ!劣等種への
「そうだぞ!俺たちは奴がいなくなって
「馬鹿な!?ならば、そのような相手をどうして見送りに?」
「他の部隊や軍部の目が光っているからに決まっているだろ?
「おい、もう流れて行ったぞ!もういいだろ?行こうぜ!」
ジン隊長の棺が川の流れに乗って動き出すと、誰も最後まで
私は、一人残って棺が見えなくなるまで見送り続けていたのだった…。
◇ ◇ ◇
ジン隊長の
ジン隊長は、強さだけでなく、知性や人望も
そんな彼を見送るにあたって、
また、ジン隊長の死因にも疑念が残っていた。
大陸最強と
そのような敵が存在するとしたら、私は聞いたこともない。
魔法による攻撃ではなく、刃物で刺されて
胸に深い傷を負い、背中には浅い傷があった。
つまり、正面から斬りかかられたということだ。
ジン隊長が油断していたとしても、相手と
ジン隊長の剣技は、私だけでなく、序列上位の剣士でも
私は、隊長の死に何か裏があるのではないかと疑うようになった。
しかし、殺害現場に居合わせていなかった以上、
(証拠がなければ…。でも、もしかしたら…。)
私は先日、酒場で隊長と飲んだ時に何か大事なものを
私は酒に弱くて、その時は記憶が
「ああ…。これだ!」
真っ赤な
これらのものは確かに隊長から預かったものだったが、何の目的で渡されたのか思い出せなかった。
(どうしてこんな大切そうなものを私に…?)
思い出そうとするが、全く記憶が戻らない。
《ザザッ!》
その時、一瞬だけ雑音と共に隊長と飲んでいる時の
(え?何か思い出せる…?)
《ザザッ!》
再び一瞬だけあの時の情景が浮かんだ。
ジン隊長が得意げに二つのものについて語っていたことを思い出した。
「思い出したわ!」
真っ赤な小石については全く思い出せなかったが、目の置物についてはハッキリと思い出せた。
『
ジン隊長はそう呼んでいた。
この置物は、自分が体験できなかった出来事を再現できる特別なアイテムだ。
その場所に行って使うことで、少しの間だけ時間を巻き戻して
一度再現した事象は記録保存することもできてしまう。
ジン隊長は、部隊遠征で会議に参加できないことが多かった。
そこで、後で軍会議の様子を見たり、自分が見守れなかった部下の
この二つのものは父親から受け継いだ
今となっては、それがジン隊長が
そんな貴重なものをなぜ私に
(再現の瞳…。この道具があれば、隊長がどのように殺されたのかわかるのではないか?)
私はある
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