第6話 職員室で話題のギフママ

❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁

☆やブクマ等の応援していただけますと、とても嬉しいです!

よろしくお願い申し上げます🙇‍♀️

❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁



「多田先生、ちょっといいですか?」


僕は職員室で事務仕事を片付けている大柄な学年主任に声をかける。

多田先生は無精髭をこすりながら振り返って、僕を見ると目をすがめた。

ああ、勘づかれている…。


「もしかして、ギフテッド相田案件か?」


多田先生がげっそりした声で僕に訊くので、僕は頷くしかない。


「相田くんのお母さんがブドウ糖タブレットを学校で食べられるように配慮してほしいとのことで…」


「今度はブドウ糖タブレット?!」


多田先生が声を裏返す。

無理もない、何度も相田くんのお母さんには無茶振りをされているのだから。



ギフテッド相田くんこと、相田俊太くんは現在小学4年生で高IQで有名だ。

入学直後は授業中に発言を我慢できず、癇癪を起こすなどの問題行動が多発し、発達障害が疑われた。

支援が必要な子どもではないかとのスクールカウンセラーのアドバイスで発達検査を受けてもらった経緯がある。

しかし、発達に問題は見られず、むしろ高IQであることが分かった。

IQ135。高い数値が出ていた。


良い報告は続くのか、1年生の冬には全日本算数ゴリンピックで上級生たちを押し退け予選を突破した。

それはそれは保護者さんは喜び、学内でも神童と呼ばれた。

今まで子どもの行動に不安を感じていたため、親御さんの喜びもひとしおだっただろう。


2年生に進級する頃には、学校生活に慣れたのか、相田くんの問題行動も落ち着き、我われ職員もほっと一安心…できたのは束の間だった。


なんと発達検査をした子ども支援センターの担当が

「ギフテッドですね!」

と言ったことで、相田さんのお母さんは

「うちの子はギフテッドなので、配慮してください!」

と依頼を連発するようになったのだ。


当時2年生の相田くんの担任だったのは、今、目の前にいる学年主任の多田先生。

多田先生は大いに苦労しながら、独自にギフテッドについて勉強した。

職員室の机にはギフテッド関連の書籍や論文が山積みになり、PCを見ると海外のギフテッド認定機関の英語サイトが開かれていることもあった。

多田先生は当時、

「できる限り、子ども1人1人に合った教育を!」

と熱意に燃え、海外で社会福祉士のような仕事をしていた人とも連絡を取った。

ちょうど文科省がギフテッド教育について議論を始めた時期であり、支援が必要な子どもとして捉えていたのだ。


ところが調べれば調べるほど、海外のギフテッド教育や日本の得意な才能のある子ども達への教育議論と、

相田さんのお母さんの言う「ギフテッド」に乖離があることが分かった。


そもそもギフテッドとは、海外でギフテッドと認定された子どもを指す。

認定基準は世界共通ではなく、各国や地域によって規定されている。

同じ国でも地域によっては認定基準が違うこともある。

目安としてIQを使う場合があるが、地域によってはIQ130を超えていなくともIQ115程度からギフテッドと認定されることもあるそうだ。


「IQ130を超える高IQはギフテッドなんです」


笑顔で相田くんのお母さんは僕たち教師に説明をしてくれたが、多田先生の調査ではIQ130以上のみでギフテッドと判定する国や地域は見つからなかった。


各国では心理士との面談やWiskit以外の知能テストや学力テスト、担任の推薦やアワードのチェックなどを総合的に行って、ギフテッドと認定している。

これらの審査は国や地方自治体や心理士が介入しての認定であり、そのエリアで公的にギフテッドと判定されたと言えるだろう。


しかし日本にはこのような公的・心理学的なギフテッド認定はない。

医学的にも診断はない。


残念ながら、今の学校の制度上ではなかなか対応が難しいタイプだと分かった。

文科省がギフテッドの認定基準からIQを外したことも痛かった。

IQを理由にギフテッドと言えなくなったからだ。

我が国のギフテッド教育ともいえる「特定の分野に特異な才能を持つ児童生徒」の教育において、IQは重要視されておらず、どちらかというと才能が重視されるような内容となった。


多田先生は頭を痛めた。

2年生の相田くんは様子も落ち着き、授業中に静かに話を聞くことができるようになっていた。

時々、授業中に発言が止まらなくなることや癇癪を起こすことがあったとしても、それらは同学年の子どもたちと大差のない状態だった。


むしろ、当時の多田先生のクラスには、2人の発達障害の診断がある子が在籍し、うち1人は付きっきりでサポートをする先生がついていた。

他にも家庭に事情があり、精神的に不安定になりがちな子が1人。

友達作りがうまくいかなくて不登校になりそうな子どもが1人。

他にも挙動に不安があるため発達検査を待っている子どもが3人。

当時の多田先生のクラスの人数が37人。

支援や配慮が必要な子どもは相田くん以外に7人もいた。

クラスの2割弱、5人に1人ほどが多田先生に助けを求めていたのだ。

多田先生に余裕がないことは明白で、そしてこれこそ今の日本の現実。

それでも多田先生はできる限りの対応をした。


「でも、俺の対応は間違いだったと思う」


今年の春、僕が4年生になった相田くんの担任になった時。

多田先生は僕のところに来て、わざわざ相田くん親子について話をしてくれた。

そして彼は「間違いだった」と言ったのだ。


「須田くん、相田くんのお母さんはね、最初、授業中に子どもに癇癪(かんしゃく)が起きたら、背中をさするようにお願いしてきたんだ。

教壇に立っている僕は、彼が苦しんだら出来る限り、彼の元に行って背中をさすったよ。

落ち着くこともあれば落ち着かないこともあった。

授業の内容も時間は決まっているけれど、なんとかなると思ったんだ」


僕は「須田くん」と急に自分の名前を呼ばれて、ピシッと背筋を伸ばしたのを覚えている。


「でもね、困ったことに相田くんのお母さんの要求はどんどん増えていった。

算数ゴリンピックに入賞するくらいなのだから、彼に小学2年生の授業が合わない。

だから、算数の授業中は持参したテキストをやらせてほしい、と」


「そんなことしたら、他の先取り教育をしている子どもの親も持参を希望しますね…」


「そう。例えば障害があって、字が書けないからパソコンを持ち込む場合なら問題ない。

疾病障害があって、診断書などがあれば、『当該児童が基礎学力をつけるためにパソコンが必要で医師も指示しているのです!』と、僕ら教師は他の保護者に言えるんだ。

子どもの学びも立場も守れる。

しかし、勉強が退屈だからというだけで、別教材を持ち込む子を許したら、どうなると思う?

先取り教育で授業に退屈している子どもなんてIQが高くなくたって山ほどいるんだよ?」


「学級崩壊になると思います」


即答する僕に、「うん」と多田先生は頷いた。

35人前後をまとめて一斉に授業するということを保護者は全く理解していないと思う時がある。

「先生、これしておいてもらえますか?」

連絡帳に保育園気分で保護者から指示が書いてあることがある。

35人程度の生活と安全を守り、教育を行い、時には支援や配慮を時間内に終わらせるということがどれほど大変か。

にも関わらず、

「親がすべき子どもの世話を先生がでやっておいてくださいね」

と学校に丸投げしているようなものだ。


クラスにいる子どもは、あなたの子どもだけではなく、他にも35人前後いて、全ての子どもが唯一無二の存在なのだ。


もう幼児ではない子どもたちは手強い。

少しでもいつもと違う対応にはすぐに気が付く。

彼らは特別扱いを羨ましがり、

「ずるい!」

と言って、いじめにつながることさえある。

親も少子化のせいか、子ども1人に対する熱量が多い。

親の「子どもに少しでも良いものを与えたい」という気持ちは年々高まっているように感じる。

そのため、他の子が良い待遇を受けられているのであれば、自分の子どもも受けられて当然だと考える。

学校教育には平等性が必要なため、1人に何かを認めるのであれば、その他の全員にも認める覚悟が必要だ。


だからこそ、特別に配慮をするのであれば、それなりの正当な理由・診断が必要なことは言うまでもない。


そして今の日本ではギフテッドの認定はなく、高IQという事実だけではなんともし難いのだ。


高IQであること自体は病気や障害ではない。


この状況の中で、相田くんのお母さんは、子どもは1年生で算数ゴリンピックで予選突破した高IQのギフテッドとして要求を続けた。


「塾の教材を教室に持ち込めないのであれば、算数の時間は保健室で勉強させてください」

「一律教育が才能を潰すのです!ギフテッドについてもっと勉強してください!」

「先生は理解が早すぎる子どもが子どもらしくなくて可愛くないとお考えなのではないですか?」

「ギフテッドは授業が退屈で苦痛を感じているのです。なぜ知的障害者は保護されるのに、高く突き抜けた子どもは保護されないのでしょうか?」


時には現場の教師にはどうしようもない要求もあった。

多田先生は春にこの話を僕に聞かせ、

「とりあえず担任になった限りは気をつけて」

と僕の肩をポンポンと叩いた。

とんでもない保護者をつけた子どもを受け持ってしまったと思った。




そして今日の春の個人懇談会。


「子どもの調子が悪いんです。

ギフテッドは脳を酷使するので低血糖になりやすいとSNSで知って、ブドウ糖タブレットを与えたんです。

そうしたらすごく調子が良くて!

学校でも調子が悪い時にブドウ糖タブレットを食べられるように持って行かせたいんです!」


ギフテッドにはブドウ糖タブレットが必要で、学校に持ち込みたいというご要望を頂戴してしまった。

今までは細かい要求はうまくかわし、なんとか話を合わせていたがこればっかりは困った。

多田先生はニヤニヤした。


「須田先生はイケメンで若くて、物腰も柔らかく、奥様をおだててやり過ごしてきたけれど、残念!逃げきれなかったかー!」


はははは、と多田先生が笑う。

実は、相田くんのお母さんは人目をすごく気にする方なので、他人からの見え方にも敏感だ。

女性でキラキラした方や、はっきり自分の意見を持って行動する方には反抗心を燃やす。

子どもには自信があるが、自分自身には自信がないのかもしれない。

そして、男性には甘い。

というか、異性に優しくしてもらえる自分に満足する傾向がある。

自分で言うのもなんだか、僕のように顔の整った若い男性に持ち上げられると、彼女は自己肯定感が上がるのか、僕の言うことをよく聞いてくれる。

それを見越して、学校側は僕を相田くんの担任として投入したのではないかとすら思っている。

ああ、きっとホストに入れ込む女性の中には、相田くんのお母さんのような人もいるのではないか。


(今まではなんとか奥様を宥めすかして、うまくかわせそうだったのに!)


「SNSに邪魔されるなんて!」僕はギリギリと歯軋りをした。



「ブドウ糖ねー。

低血糖のことがギフテッドの本にも書いてあったから、誰かがそれを言ってSNSのギフテッド界隈で流行ってんじゃない?」


多田先生が閃いたように言った瞬間、


「私ねー!そのネット情報やばいと思うよー!」


白衣の女性がそう言いながら僕達に近寄ってきた。

保健室の先生こと、養護教諭の佐々木先生。

子どもにはとろけるように甘く、優しく、しかし職員室では気が強いサバサバ女性。

ポニーテールを揺らして颯爽と歩いてくる。

健康に関わることだったので、僕が佐々木先生に職員室に来ていただくようお願いしていたのだ。


「相田くん、血液検査受けたの?常態的に低血糖なの?」


佐々木先生が近くの椅子に腰掛けて僕に質問する。


「いえ、血液検査等は全くしていないそうです」


「家庭での栄養についての取り組みは?なんでブドウ糖タブレットなの?どこのメーカーのブドウ糖タブレットを持ち込みたいの?」


「すみません、そこまで聞いてなくて…」


「聞いておいてよー!」


佐々木先生が仰け反りながら叫ぶ。

実は保健室で算数の授業を受けたいと言う要望を受けた時に、佐々木先生にもかなりのご迷惑がかかったらしい。

そして職員室では、ギフテッド相田案件は事実確認は念入りにすることが暗黙の了解だ。


(僕の情報収集が甘かった…)


「てゆーか!調子悪いのに病院行かずにブドウ糖タブレットでなんとかしてるのもヤバくない?!」


確かに。

それはおっしゃる通り。

僕は相田くんの母親から聞いた話を伝える。


「ぼんやりとか、イライラとかして、しまいに疲れ切って気力がなくなったようになるそうです。

で、SNSやネットで調べたらギフテッドにはブドウ糖が良いと知って、一度与えてみたら調子が良くなったそうで。

でも、1日に何度も調子が悪くなることもあるらしく、学校にも持参したいというご要望です」


僕が説明し終えると、「確かに病院に行った方が良さそうだよな」と多田先生が呟く。

それを聞いて、佐々木先生が僕達2人の方に顔をグイッと寄せる。


「血糖スパイクって知ってる?」


僕はサッカーのスパイクを思い出した。


「あんたたち知らないでしょ!

食後等に血糖値が急上昇して、それに反応してインスリンがドバーっと出て、今度が血糖値は急下降することよ。

この乱高下を繰り返すとね、心筋梗塞や脳卒中のリスクを引き上げます!


確かに血糖値が一時的に急上昇して、その時は良い気分になるとは思うけれど、急下降して結局、気分が悪くなります。


そしてこれ!ブドウ糖タブレットで人為的に起こせます!」


ビシッと厳しい口調で佐々木先生が言い切る。

僕と多田先生は「よく分からない」という顔で顔を見合わせ、その後、同時に佐々木先生を見た。


「つまり、むやみにブドウ糖タブレットをポンポン与えると、血糖スパイクを起こして、短期的にも長期的にも健康を損なうリスクがあるってこと!」


ええ?!

ブドウ糖ってスポーツマンも食べてるし、ラムネとして売ってるのに?

そんなに危険なの?!


「おいおい、俺の小学生低学年の子どもはラムネが大好きだぞ」と多田先生も驚く。


「必要な分に対して、足りない分を摂取するのは問題ない。それから、量も食べ過ぎないなら良いのよ。

ただ、今回のようにブドウ糖100%のタブレットをお守りのように何度も摂取するのは危険があると思う。

そもそも、相田くんの体調不良自体が血糖スパイクで引き起こされているかもしれないわ」


佐々木先生の話を聞いて、僕は相田くんの健康状態が急に心配になってきた…。

ブドウ糖がそんなに気をつけなければならない食べ物とは思っていなかった。


「本当は低GIの食品がおすすめ。

糖質の吸収が穏やかで、血糖スパイクが起こりにくい。

もちろん低GI食品を買ってもいいんだけれど、ブドウ糖が必要ならドライフルーツを朝食に取り入れることをおすすめする。

相田くん、アレルギーとかないでしょ?

食事改善が一番安全で簡単にできるのに、なんでブドウ糖タブレットなの?」


佐々木先生が眉を寄せて首を傾げる。


「SNSのギフテッド界隈で話題みたい」


多田先生がツミッタの画面を見せる。

ギフテッドについて熱心にポストしているアカウントがブドウ糖タブレットを勧めていた。


「こういう流行りで子どもの健康を損なわせるのって、もはや虐待だと思うんだけど!」


多田先生のスマホの画面を見て、佐々木先生は怒りで絶叫した。

養護教諭というだけあって、子どもの心身の健康について専門の知識を持って、子どもたちを見守ってくれている。

だからこそ、安易にネット情報に飛びつき、子どもの健康を害する危険があるようなことを、学校に要請してくる相田くんのお母さんに怒りを感じているのだろう。


「『教室でお菓子を食べていると思われるような行為をすると、相田くん自身が説明しなくてはならない状況が生まれると思うけれど大丈夫ですか?』と聞いてみたら、相田くんのお母さんは、『だったら保健室でお願いします』とのことで…」


僕がすごく言いにくい顔をして、佐々木先生に個人懇談でのやり取りを伝えると、佐々木先生は鬼の形相でこちらを睨む。


「保健室は子どもの健康のためにありますので、子どもの健康を害しかねない行為はお断りです!

血液検査等でブドウ糖タブレットの摂取が必要と医師が判断するなら、ぜひ保健室でお召し上がりください!」


付き合ってらんないわよ、と佐々木先生はそのまま保健室に戻って行ってしまった。

さぁ困った。

保健室は無理。教室も無理。そもそも、ブドウ糖タブレットの持ち込みを可能にしていいかも判断しかねる。

そーっと多田先生を見つめる僕。


「なー!ギフテッドを受け持つのはいいんだけどな、ギフママの相手が大変なんだよ!」


多田先生が僕の肩をバシバシ叩きながら笑う。

僕は笑い事になどできないが。

多田先生はひとしきり笑った後、ふと、ちょっと悲しそうな顔をして話し出した。


「相田さ、2年生の時の算数ゴリンピックで予選落ちしただろ?

本人はすげーショックでな。

でも、それ以上にお母さんがショックを受けちまって、相田のフォローがろくにできてなかったみたいだ。

相田のお母さんは「ギフテッドだ!次は最優秀賞!」って期待して、結構あっちこっちに言ってたみたいなんだよ。

なのに予選突破すらしなくてさ。

3年生の算数ゴリンピックの前は、相田はプレッシャーを感じてたのかな。元気なくてな。


好きな算数に苦しめられている相田をみていたら、やっぱり『ギフテッド』なんて、簡単に親がいうもんじゃないよなって思って。


算数が好きな少年のままで良かったじゃねーか。

IQが高かろうと低かろうと、『算数が好き』だけでいいじゃねーか。


結局な、相田は3年生の算数ゴリンピックに出なかったよ」


そう言って俯く多田先生は目に涙を溜めているように見えた。

多田先生はきっと「高IQで算数ができる相田くん」じゃなくて、きっと「算数が大好きな相田くん」を大切にしていたのだろうと分かった。


「ギフテッドって何なんでしょうね?」


僕は思わず口にした。


「知らねーよ。

分かってんのは、自分の子どもをギフテッドだと言いはる親に振り回されている子どもと教師がいるってことだけだよ」


僕はハアアアアアと深くため息をついて、肩を落とす。

「どうするよー?」と多田先生は腕を組んで、僕が考えを披露するのを待つ。

僕は教師になる時に決めたことを思い出した。

僕が教師として大切にしたいのは、

「短期的なだけでなく、長期的な子どもたちの幸せを考えて教育すること」。

だから。


「相田くんのお母さんに、一度ご家庭での栄養管理と受診をご提案してみます。

栄養については一旦、僕が調べて、それから佐々木先生にチェックしてもらって。

時間はないんで簡単なものになるかもれませんけど」


やはりブドウ糖タブレットの持ち込みは、簡単に「学校でやります」と言える内容ではない。

相田くんの健康が心配だ。

そして、それだけではない。

もしもブドウ糖タブレットの持ち込みが、他の生徒に広がり、他の食べ物の持ち込みの蔓延を招いてしまったら、食物アレルギーのある子どもたちにまで危険が及ぶ。

安易に了承はできない。


「ん、まずはそれが良いだろうな。ま、揉めたら一緒になんとかしてやるから!」


多田先生はガハハーっと笑って、「じゃ、俺は事務仕事するから」と僕を追い払った。



ギフテッド。

僕にはそれがなんなのかはまだ分からない。

正直なところ、学年が進むにつれて輝きを失う相田くんをみて、早熟なだけだったのではないだろうかと思う。

高IQであることやギフテッドであることがそんなに重要なのだろうか。

その子その子に成長のペースがあるのは皆同じなのだ。


相田くんにとって大切だったのは、

他者から見て輝いているかどうかではなく、

算数が好きという状態だったのではないか。

彼の喜びはもっと純粋なものだったように思うのだ。


でも。

その彼の喜びを手垢で汚したのは、他でもない母親だったのだろうか。


👉相田くんママは

第七話 ギフテッドは迫害されている!なギフママ

に「算数マニアママン」というアカウント名で再登場します!

https://kakuyomu.jp/works/16817330668984024709/episodes/16817330669740279250


❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁

☆やブクマ等の応援していただけますと、とても嬉しいです!

よろしくお願い申し上げます🙇‍♀️

❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁
































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る