13:師匠
こっこに土下座させて満足したので、スッキリ気分でダンジョン探索へと赴く事ができた。
「あ、一緒に行ってもいいかな? 突発コラボしようよー!」
そんなこっこの提案に、しばしば考える。
一人で潜りたい気分なんだが、まあ、確かに途中までなら二人でも問題ないか。
確かこっこは、5Fまで降りられるようになったんだっけか。
……やっぱり、こっこは凄いな。裏ダンジョンの探索初めて、まだ二週間くらいだろ。俺は、半年かけたかな?
それからさらに半年かけて、ようやく10Fまで辿り着くことができて……だけどそれ以来、さらに一年経っても、ほとんど深層に潜ることができないでいる。
最大到達地点は、14F。
それも14Fは、本当に到達しただけだ。足を踏み入れて、すぐに帰還した。苦手とするタイラントマンティスと運よく12Fでかち合わないで13Fまで行けたものの、そこで魔法を枯らされた。下層への階段を見つけて、記念に降りた。それだけ。
天才冒険者芒野こっこが、俺の半年をどのように立ち回るのか。実践で拝見させてもらおう。
「んー、あんまカメラ意識しなくていいなら、途中まで付き合ってあげてもいいぞ」
「マジ? やったー!」
そう言うとこっこは早速【カメラファンネル】を飛ばし、スムーズに配信をスタートさせた。
――なんてことがあって、今、俺は10Fにいる。
こっことは8Fで別れた。「カズキくんとパーティー組んだら自己新記録階層これたよー! やったー!」なんて言って、【白鷲の羽】で帰還した。その後は自室でリスナーと雑談会だろう。
俺も、やはり一人で潜るよりも早いし楽だし、助かった。
なんてことを……目の前のモンスターに、語った。
「あ、そうだ。師匠の技、コロシアムで役に立ったよ。対戦相手、めちゃくちゃ早口で
「悪かったわね。モンスターには通用しなくて……ねっ!」
10Fのボスモンスター。スケルトンキングの曲刀が袈裟斬りに俺の命を刈り取ろうと迫る。それをこちらも剣でもって十字で受け、ぶつかり合った反動をそのまま利用して後退。着地後すぐに弓矢を構えて、連射した。
攻撃しながら、話は続く。
「いやあ、モンスターにも通用しないわけじゃないんだけどさあ。ダンジョン内で縮地って、使い辛いんだよ。小回り効かないし、速すぎてうまくコントロールできないんだよな。俺、センスないからさあ……」
「いや、それは単純に……おっと! ななによその隙は。殺されるわよ!」
「ぐわっ……!」
げえ! 射った矢を打ち返してきやがった! 肩に刺さった……!
スケルトンキングの曲刀は側面が広く、そこでうまいこと攻撃をガードしたり受け流したり、今みたいに打ち返したりしてくるのだ。知ってたのに、油断した。
そして相手はモンスター。弱みを見せれば、ここぞとばかりに追撃してくる! ちょっとは容赦してほしいものだが……モンスターには、人間の都合なんて関係ない。
「師匠! ちょ、ポーション飲ませて!」
「ごめんね。妾、モンスターだから。殺せそうな人間は殺さずにはいられないのよねっ!」
白く細い腕。白く小さな顔。大きな眼窩。白くアバラの見えた胸。というかもう一言で骸骨。
俺の師匠だ。
何度も殺されかけた。
だけど何度目かの邂逅で、なんか話が通じる相手だとわかって、会話を試みたら、なんか思った以上にフレンドリーだった。
……口だけな。その行動はいつもと変わらず、本気で俺を殺そうと、武器も【エネミースキル】も出し惜しみしない。
だけど、話して殺されかけて、話してボコボコにされて……だけど話しているうちに、太刀筋が甘いとか、もっとちゃんと狙えヘタクソ! とか、だんだん、配信者にイキって口出しする指示厨みたいなことを言いだしてきたのだ。
それがまあ、10Fに来るたびに、そんなご指導ご鞭撻を受けるものだから、いつしか俺も、このスケルトンキングを師匠と仰ぐようになり、なんか技とかも教えてもらうようになり……。
「師匠! 今日も勝たせてもらうっ!」
「うむ。どうせまた12Fでボロボロにされてくるんだろうけど、頑張りなさいね」
師匠から教えてもらった縮地を駆使して、うまく背後に回ることに成功した。ある程度の広さがあれば思う存分活用できるのだ。壁にぶつかる心配しないでいいから。
師匠の背後から、がら空きの首を斬る――。
師匠はあっさりと二つに分断されて、光となって、消え去った。
次に10Fまでくると復活してるから、感傷に浸るまでもなく、魔石とモンスター素材を回収。
よしよし。これが欲しかったんだ。師匠の魔石。
目的は達成したが、まだいける気がして、11Fに降りた。
そして師匠の言うとおり、12Fでタイラントマンティスと死闘を繰り広げたので、そこで帰還した……。
そういえば、戦闘中、師匠何か言いかけてたっけ?
俺が縮地が下手なのは単純に……なんだ? 何か単純な理由で改善できるなら是非とも教えてほしいものだ。今度確認してみよう。
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