last.希望と絶望



 希望と絶望──絶望と希望


 それはもしかしたら……隣り合わせなのかもしれない。


 彼がそうだったように。


………いや、きっと、そうだったんだと思いたい。



 キッチンカウンターの上、彼が残してくれた折り鶴──…“夫婦円満の象徴”を見て、そう思う。



「ねぇお母さん、今日は何時までお仕事なの?」

「あぁ、今日はね……、17:00には終わるかな~」

「分かった!早くお迎え来てね!」



 私が保育園の支度をしている間、頬にたっぷり食べ物を詰めてモグモグと朝ご飯を食べている娘。


 キラキラ輝く瞳の綺麗な女の子。

 私の子供とは思えないくらい、心も美しい子。



 暗闇を生きていたきみが残してくれたものは……

 あまりにも大きくて、尊いものだった。



 彼は私を変えてくれた。

 救ってくれた。



 私も彼を救いたかったけど………



……と、これ以上考えるのは、辞めることに決めている。


「お父さん、いってきまーす!」


 折り鶴に向かってご挨拶。

 もうすっかり馴染みの光景。


 この子のキラキラ輝く瞳を見るたびに……

 私は彼を、思い出す。


 かけがえのない時間と

 一生の宝物を残してくれたきみ。


 名前も知らないきみと……


 私はこれからも、生きていく───


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名前も知らないきみと 望月しろ @shiro_mochizuki

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