神亡き世界の黙示録 / もってぃ 様
作品名:神亡き世界の黙示録
作者名:もってぃ
URL:https://kakuyomu.jp/works/16816452220850765706
ジャンル:SF
コメント記入年月日:2023年11月8日
以下、コメント全文。
初めまして。
この度は『批評&熟読します』企画にご参加いただき、ありがとうございました。
主催者の島流しにされた男爵イモです。作品の方を拝読致しました。
もってぃ様の作品は何度か企画でお見かけしたことがあるのですが、通しで拝読したのは今回が初になります。作品の最終更新日から察するに投稿は休止中、もしくは停滞していることが窺えたので、そのことにご助勢できるような批評を展開できればと思います。
さて、前置きはこの辺にして、まずは通読したうえでの所見をいくつか。
作風に関しては、一つの形を確立されている印象を受けました。ミリタリーに特化したSF小説ですね。文章に含まれる銃器や装備の説明、固有名詞や軍事用語など。作品への理解度の低い序盤はそれらの応酬に面食らいましたが、読み進めていくうちに抵抗は自然と薄くなっていきました。ミリタリー要素に疎い人は受け付けない作風かもしれませんが、そこは割り切るのが無難でしょう。ある意味、この作風こそが本作の最大の強みといえるわけですから。余すことなく描写される戦闘描写からは、もってぃ様のミリタリー知識への造詣の深さが伝わります。それを軸にして展開される人間ドラマや物語は、唯一無二の輝きを放っていたように思います。個人的には戦友との別れや、ジェイクとカーリーのやり取りが読んでいて楽しかったです。そこはかとなく漂うハードボイルド臭も、いい味を出していました。
世界観は物語の風呂敷を広げるカギとして今後、役立ちそうだと思いました。
6層に分かれた居住区と、MAの統制から外れた兵器たち。それぞれのAIの真意は不透明ですが、のちに明かされるという流れでしょうか。この辺りの設定は階級制度も合わさり、ディストピアな趣が表れていたように感じます。街を巡回するロボットやレジスタンス、おまけ的に登場する名作SF小説や食事場面からは遊び心が溢れていました。既存の世界観を踏襲しつつも、そこで生きる人々の息遣いを感じ取ることができたのは興味深かったです。こういう設定の掘り下げ方もあるのかと、作家目線でも勉強になりました。
それらを踏まえたうえで、次は気になった点に触れていきます。
➀登場人物の名前の多さと、主人公の個性
➁AMA側の兵器のバリエーション
➂物語の進むスピード
これら三つになります。その理由と提案を個別に説明させていただきます。
はじめに➀について。
これは表題にもあるように人物の名前の多さが、作品の読解の妨げになっています。単純な登場人物の多さに含めて、コードネームの存在。これによって作中での人物名は実質、登場人物の倍になっています。中盤以降は把握が容易になりますが、序盤はとにかく手探り状態です。何度か読むか、じっくり読めば人物名を把握できますが、読者に負担をかけずに把握してもらうのが理想的といえます。いまさら登場人物を省くのは難しいと思うので、巻頭に「登場人物一覧」を設けることをオススメします。そこで細かく解説してもらえれば、読者はいつでも戻って人物名を確認できますので。とりわけ序盤は名詞の応酬によって作品を正しく理解することが儘ならないので、この点は是非ともご一考いただければと思います。
そして、主人公の個性も磨く余地が残っています。
現状では主人公であるジェイクに、主人公らしさが足りていないと感じます。仲間との掛け合いや戦闘での活躍から人となりがわかる一方で、「平凡」の域を出ていないといいますか。リアルな人物であるあまり、作中では目立たない存在になっています。どちらかといえば、リオンやベックルズの方が生き生きとしています。作風からして本作は人物で魅せる作品ではないのでしょうが、主人公に個性があるに越したことはありません。カリスマ性やクセ、行動理念の特徴など。温厚ならば、それゆえの葛藤や逡巡はどれほどのものか。分隊の指揮を通して、どのように成長を遂げたのか。そうした部分が掘り下げられると、主人公の個性がさらに読者に伝わりやすくなるのではないかと考えます。
次は➁について。
これに関しては私の好みも含まれるのですが、敵のバリエーションを増やしてみても面白いのではと思いました。現状ではオーガーやベヒモスといった、大型兵器の登場に留まっているので。たとえば作中で名前だけ紹介されるドール。これの亜種として、人間側のギアやガジェットを一定時間無効化するEMP自爆特攻を仕掛けるドール。生体部品を身に纏い、MAの統制下で人間に紛れて活動するドールなど。火力だけでなく、そうした戦略型の兵器が現れると一層、作品が色づくかと。尤も、もってぃ様は大型兵器VS歩兵という構図を書きたいということが本文からは伝わってきましたが。
最後は➂、本作の最大の課題です。
物語の進行速度に関しては、かなり遅い部類に入ります。それもスロースターターでは言い訳できないレベルです。現状の十万字の使い方では、半分を過ぎる頃には多くの読者が離脱してしまうでしょう。その原因は戦闘描写や兵站の解説に、文字数を割きすぎていることにあります。拝読した範囲で割合を考えると、本作は戦闘や兵站の解説が七割、物語が三割と分けることができます。これでは物語はなかなか進まず、読者は読んでいて退屈に感じてしまいます。大きな伏線としては「ジョーの死」、「ダニーの失踪」、「カーリーの秘密」、「レジスタンスに拉致された技師」がありますが、十万字あれば解決しなくとも核心に迫ることは容易です。
本作のスケール(あと十万字ほどで完結or百万字近くの大長編になる)はわかりませんが、今の十万字の中身を調整することを意識してみてください。戦闘や兵站の描写を抑え、物語を主軸に話を展開させていく。戦闘などは言うなれば手段で、物語は目的です。これが逆転してしまっては、一つの作品として大きくクオリティが落ちます。趣味で執筆されているのなら構いませんが、少しでも新規読者の獲得を狙われているのならば、作品の改稿も視野に入れられてはいかがでしょうか。今の書き方では、最新話まで追ってくれる読者を得るのは難しいと思います。ご自身の書きたいものと、読者の求めているもの。その両方と相談しながら執筆していただければ、自ずと答えは見えてくるはずです。折衷案とまではいかずとも、どちらにも偏らないバランスの取れた作品構成を考えていただくことが肝要となります。
以上になります。
もし批評に関してご不明な点や不備があれば、私の近況ノート『11/3開催 自主企画専用ページ』にて対応致します。ご要望に応じて批評内容の解説も致しますので、気軽にご活用ください。作者様の創作活動の一助となれば幸いです。
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