第57話「人外幻身の使い手!光也vs龍二」
光也は葬刀へ雷を宿し龍二へと斬りかかり続けるも容易に腕で防がれてしまう。
龍二の両腕に龍鱗が纏われており半端な斬撃は無効化できるほどの強固な物だった。光也は一度距離を取る。
(ザラザラしてて硬ぇ。半端な攻撃だと刃こぼれしちまいそうだ)
『……』
「どうした瑠璃華。特に変わる気はねぇぞ」
『いや……あいつとぶつかり合うとなんかこうモヤモヤするのよ。なんて言うか……懐かしい感覚っていうか』
「懐かしい?」
「奇遇だな。俺の中の
アイドル因子達は異世界への来訪により記憶障害を引き起こしている。個人差はあれど自分の力の本質や元いた世界での交友関係等の記憶が曖昧になっている。
これらの記憶は同一世界のアイドルと干渉する事で緩和されて行き本来の自分の記憶力を取り戻すとされている。
次の手を考えあぐねる光也へ龍二が呼びかける。
「それはさておき……お前手加減してるだろ」
「あ?」
「確かに俺の龍鱗は硬ぇがお前が本気を出しゃ斬れねぇ事はねぇだろう。俺は本気でやり合いてぇんだよ」
「これは実戦じゃない。俺達みんなが更に強くなる為にこうやって集められてる。腕切り落とされてちゃそれどころじゃねぇだろ」
「……あーそうか。そういう事か……これは俺が悪いな。せっかくマジでやり合ってくれようとしてる相手に手加減させちまってた俺は……とんでもねぇまぬけ野郎だ」
「?」
「安心しな。お前が殺す気で来ようが俺は死なねぇ。腕を切り落とされることもねぇ。ましてや俺に片膝つかせる事すら出来やしねぇ……!気遣わせちまってた事を詫びるぜ!市導光也!!
ゴオオオォオォ!!!
龍二は内なる想力を出し惜しみなく解放する。辺り一体を紅蓮の想力が発現し満ち溢れていく。
迸るマグマの如く龍二の体内を巡り各部位に頑強な灼熱を宿す甲殻が纏わりついていく。両腕両脚は豪大かつ破壊力を誇る龍を模した形状へと変化しており龍尾も現れその様は龍人族と呼ぶに相応しい。
その王者の風格をも漂わせる圧倒的な圧に光也は生唾を飲む。
「
「驚いたな。そんな事も出来んのかよ」
「これが俺達の最強のイメージだ。気抜いてると一瞬で消し飛ぶぜ!!」
再び二人は衝突し合う。優勢なのは龍二。龍爪やより強固になった龍の拳は先ほどまでとは比べ物にならない程の強烈さであり攻撃に転ずる機会を見出せない。
(ぐっ……!!こんなゴツい図体だってのにスピードが衰えねぇ!早くて重い……っ!!攻撃範囲もデケェし隙がねぇ……!)
「まだまだヌリぃぞ!!こっちは全力フルパワーだぜ!!もっとギア入れろ光也ぁ!!」
「っ!……気安く呼ぶな!!」
光也は目の前の相手は生半可な相手では断じてないと認識する。
仲間内であれど実戦同様の気概で挑むべき相手と断定する。
光也は繰り出された両腕に対して葬刀を一気に振り落とす。
「
龍二の龍腕が血飛沫を噴出しながら地面へと叩きつけられる。確かに出来た隙を見逃さず即座に次の攻め手へと転ずる為再度想力を葬刀へと込める。
「慄葬りょ!
次の攻撃を繰り出そうとした矢先。違和感を感じる。目の前にいる相手は一切臆していない。少なくとも形勢を逆転されそうになっている人間の態度ではなかった。
「この程度じゃ俺には届かねぇ。眠てぇぞ市導光也!!」
「!!」
「爆灼放!!」
ガパッ!!
龍二が大きく口を開くと同時に業火が勢い良く放たれる。
光也は空中が故に自由が効かない。もろに爆灼放をくらい吹き飛ばされる。
「くそったれが……問答無用だな……ったく!」
光也は想力を咄嗟に耐久面に振ることで爆灼放の威力を緩和したがモロにくらっていれば死すら考えられた。
龍二は幼少期から喧嘩っ早く粗暴な性格をしていた。故に本気の殴り合いに関しては光也よりも圧倒的に場数を踏んでいる。更に各技の破壊力に関しても光也の上を行っていた。
「さぁてどうしたもんか……」
(一つ気がかりな事がある。さっきのババアロボは想力に反応して襲ってくると言っていた。じゃあ何で今は襲ってこない。俺もあいつもこれでもかってくらい使ってんだろうが……
いや、考えるのはやめよう。俺は今戦闘に集中出来てねぇ。半端な戦い方で勝てる相手でもねぇ。その他諸々はこいつをぶちのめしてから考えろ)
「おいおい俺の相手をしてくれるんじゃなかったのかよ。せっかくのお仲間の実力がこんなもんじゃ……陽もがっかりしちまうぜおい!」
「お前の言う通りだな。悪かったよ……余計な雑念がちらついちまってた。安心しな宮守龍二……こっからはお望み通り
光也は右手の葬刀を左手に持ち変えそのまま右手でピースの形を浮かべる。
「あ?なんだそりゃ?いきなりピースして何がしてぇんだよ」
「時間もかけらんねぇからな。お前は2分でぶった斬ってこの戦いは終いだ」
「!……面白ぇ……!上等じゃねぇかぁ!!」
再度二人は距離を詰め、想力を漲らせ激しく衝突する。
――――――――――
その一方で達樹はゴール地点へと途方もない道のりにメンタルと体力が着実に奪われていく中でも必死に抗い無難に進み続けていた。
(想力のバランスは分かってきた。この程度の出力ならさっきのおばちゃんロボは現れない。でもこのペースじゃ間違いなく間に合わない!……どうすりゃいいんだ。みんなはどうやって進んでるんだ!?)
視界に入る範囲に奏者達はいない。前方にいる奏者達は何かしらの方法を見つけ出して進んでいる。
でもどうやって?走り続ける中で懸命に考える達樹だったが正解にどうしても行き着けないでいた。
そんな達樹の前に物陰に潜んでいた越ヶ谷恵夢が襲いかかる。
「ぐっ!?」
達樹は恵夢の攻撃を拳で受けるも後ろへやや大きく後退させられる。
「お前は未萌奈のとこの……!」
「ふっ……やはりそういう事でちたか。えむちまは完全にこのマラソンの突破口を見つけ出してしまったでちよ」
「なっ!?まじか!?」
「今ので確信しまちたでち。このマラソンの攻略の鍵を握るのはずばりぃ!」
「どけゴラァ!!」
突如前方から猛スピードで逆走してきた茶髪の男は両腕にスクラップを寄せ集め作られた巨大なガントレットを装着している。
男はその巨大な拳で恵夢を掴み上げ遥か彼方先へと恵夢を放り投げた。
「ひぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なっ!?おいっ!!」
「会いたかったぜぇぇ輝世達樹ぃ……!」
(またヤバそうなのが……!)
「誰だてめぇは!!」
「三番隊……安達烈矢」
「烈矢……!」
(三番隊……!卓夫が言ってたやつか!)
「てめぇは決して許されねぇ事をした。大罪人だ。俺の生きる希望を奪った。てめぇを直接フルボッコにする日を心待ちにしてたんだぜ俺はよ」
「……悪いが心当たりがねぇ。俺がお前に何したってんだ」
「あぁ……?まぁ話は俺にボコられてからにしようや。もう1秒だって破壊衝動を抑えられそうにねぇからよぉ……!」
「構えろ。無抵抗なお前をボコっても意味はねぇからな」
目の前の烈矢はマラソンの事などつゆ知らず達樹と闘る気満々である。致し方ないと達樹も戦闘体制に入る。
「そのイカつい腕……ぶっ壊されても文句言うなよ!!」
「ぶっ壊せねぇよ!!お前如きじゃなぁ!!」
―――― to be continued ――――
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