第40話「終止符を打つ!渾身のエアロヴィアインパクト!」
3行でわかる前回のぐじへんは
自らに宿る少女と本気のぶつかり合いを経て彼女の名前、内に秘める能力を引き出す事に成功する。アイドルと絆を深めた輝世達樹は真なる力を覚醒させ金塚謙也へ再び挑む。
――――――――――
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!!カマ野郎が!!」
血に染まる教会内にて謙也の剛腕が達樹へ迫る。
両者共に主な戦闘スタイルは近接肉弾戦。達樹はこれまでの拳に想力を込めての戦法に新たに付与された疾風の力を纏わせることで更に威力を増加させている。
両者の拳が激しくぶつかり合い純粋な破壊力自体は拮抗しているが。
「……ちぃっ!?」
達樹の拳と共に絶風の刃がシンプルな殴り合い蹴り合いをしている所に不意に中距離まで届く斬撃が飛んでくる。
疾風の力を常時纏わせる事も可能だが力を得て数分の達樹は想力操作に慣れていない為万が一に備えて瞬間的での使用に抑える。
(少しでも気を抜いたらあの風の刃で切り刻まれかねない……だが奴の動きも慣れて来た。次隙を見せた瞬間がてめぇが死ぬ時だぜ)
謙也は精神を研ぎ澄ませ、次の確実な一手に向けて相手の動きを再度考察分析する。
『あいつ何かを狙ってますね』
「……そうだな」
『ここは例のアレで行きましょう』
両者標的を睨みつけ一切の隙を見せない。
最初に動いたのは達樹。牽制として風の刃を振るい放つ。
謙也は拳に憎力を集中させ多少の擦り傷を負うがかき消す事に成功し両者間の距離は最早目前。両者共に打撃の射程圏内となる。
(今のあいつは文字通り調子に乗ってやがる。身に余る巨大な力は慢心を呼ぶ。その隙を突いて畳みかける!)
達樹の猛攻にギリギリで回避し続ける謙也。両者互いに攻撃の主導権を握り握られつつとめど無く攻撃を浴びせていく。
ザシュッ
ここで謙也の頬を風の刃が掠める。その僅かに出来た一瞬の隙をつく為達樹は左脚へ想力を込めて謙也の頭上から踵落としをぶち当てる。
余りの衝撃に謙也は意識を一瞬持っていかれるも蹴られた勢いのままその勢いを利用して旋回し、回し蹴りを達樹へ直撃させ吹き飛ばす。
「ぐっ!!」
(重い……っ!)
「今のは効いたろ!!?」
空中では自由が身体の自由が効かなくなる。奴を殺す絶好の機会だと謙也は拳に憎力を込めて達樹の顔面目掛けて追従し渾身の右拳をを繰り出す。
「死んどけ!!」
だが確実に標的を目掛けて全速力で繰り出された謙也の渾身の右ストレートは無を捉える。
(消えた!?いや違う!!)
達樹は消えた訳ではなく高速で移動し距離をとったわけでも無い。謙也は数センチ視線を下に逸らすとサイドテールを風に靡かせる少女の姿があった。
その少女は春風大我。達樹は攻撃の直前大我はと完全顕現し奴の攻撃箇所にズレを生じさせた。達樹と大我の身長差は20センチ強。故に謙也の攻撃は的を外す事となった。
隙だらけの謙也に対して大我はカウンターのボディーブローを放つ。
「ガラ空きですよ!!」
ドゴォッ!!!
(ちぃっ……!避けれねぇ!!防ぐしか!!)
大我の拳が憎力を腹部は集中させた謙也の腹部へクリーンヒットする。
その想像を絶する破壊力に謙也は想定外のダメージを負い血反吐を吐きながら悶え苦しむ。
(まじか!!こんな子が発していい威力じゃねぇだろ!!?)
完全顕現はアイドルその物を現実世界へ剥き出しにする事でスペックの200%を発揮して戦う事ができる。
デメリットとしては力の核を曝け出す事による破壊された際力を失い、最悪は両者共に絶命に至るという点。
更に戦闘自体が奏者自身でなくアイドル主体となる為、彼女達の戦闘センスに全てを委ねる事になる。
だが先ほどの戦いで達樹は身をもって理解していた。春風大我というアイドルの強さを。
謙也はなんとか踏みとどまり敵を見据える。
でがその直後には目の前に疾風を纏う拳が迫っていた。
ドガァァ!!
謙也の顔面に大我の拳がヒット。同時に疾風を纏ったその拳は打撃だけでなく斬撃効果もあり謙也の顔が無数の鎌鼬により切り傷を入れられる。
身体中から出血し醜怪な様となる謙也。だがそれでも大我は慢心せず臆する事なく連撃を加えていく。
「ウブそうな見た目の割に容赦ねぇなぁ!!お前もちゃんと俺が殺してやるから安心しろよぉ!!」
「あなたなんかに殺されない!これ以上罪のない人達を傷付けさせはしない!!」
激情する謙也に対し大我も溜まりに溜まっていた怒りをぶつける。
謙也は現状大我の猛攻の前になす術なく如何にダメージを最小限に抑え切るかに念頭を置いて動いていた。
(認めたくねぇがこの子のが俺より強い。こいつを思い切りボコれりゃ勝機は出てきそうなもんだがさせてくれそうもねぇ)
だが大我の洗練された立ち回りの前にまともにダメージを与える事が出来ずにいた。
(あいつを直接ぶん殴る事は無理だと受け入れよう。力を浪費させるなりして元の男の姿は戻す)
謙也は攻撃に割いていた分のリソースを全て防御へ振り再度交わる。
その結果全弾回避、防御する事は叶わなかったが大我の猛攻を凌ぐ事に専念する。
謙也の読み通り時間経過により完全顕現が解かれ達樹の姿へと戻る。
「はっ!読み通りずっとその姿は無理だったな!!こいつで終わっとけ!!」
謙也は密かに集積させていた憎力を拳に込め達樹の腹部目掛けて拳による一撃を叩き込む。
訪れる一瞬の静寂。達樹の口元からは血が流れ落ちる。
「痛すぎて何も言えねぇか?これが実力差だ。どれだけ力を得ようが、それがお前の限界なんだよ」
勝利を確信していたのも束の間。謙也の右腕を力強く鷲掴みにされる。
「こんなもん全然痛くねぇな……!」
「なにぃ!?」
「言ったろ。二人でてめぇをぶっ倒すってな」
現実問題完全顕現による力は圧巻であり、謙也の勝率による観点で考えれば輝世達樹の姿に戻してでの戦闘の方が有効な事は間違いない。
だがその力の差を埋めんとばかりに湧き上がる力。
その源は男としての意地と受け入れ難い敵への身を焦がすほどの怒り。輝世達樹は原理や理屈に一切振り回されない。
お返しにと言わんばかりに達樹の右ストレートが謙也のみぞうちへ直撃しそのまま殴り飛ばされ後退する。
「くっそがぁぁぁ……!!あんなカス男如きにやられるだとぉ……!んな事あり得て良い訳ねぇだろうがぁ……!!」
謙也は苛立ち策を模索する。なんとしてでも標的を殺す方法。勝つ方法はないかと思考を巡らせる。
すると視界に入ってきたのはろくに動く事が出来ずに倒れ込む三竹未萌奈の姿。
(これだ!!)
謙也は勝機を確信した。この女を殺せば大幅な強化が見込める。謙也は負傷する未萌奈に一切容赦なく襲いかかる。
「あいつの狙いは未萌奈か!?くっ……!」
「間に合わねぇよ!!死ねぇ!!」
倒れ込む未萌奈の背中。達樹も追うが間に合わない。謙也は勢い良く未萌奈の上半身を踏み潰し風穴が開けられ、謙也は大幅な強化を身を持って実感……したかと思われたが瞬く間に未萌奈の身体は無数の鴉へと姿を変えて離散していく。
「そんなバカみたいに何もしないで寝てる訳ないでしょ」
「未萌奈ぁ!!」
謙也から距離を置いた場所まで鴉散を使用し移動。
未萌奈の無事に達樹は安堵の息を零し安堵する。
「ちぃ……まぁいい。どちみちあれだけボコられたんだ。そんなに早く傷が癒えるわ訳ねぇ。まともに動けねぇだろ。次こそ殺す」
「そうね。今の鴉散で溜まって来てた分の想力は使い切っちゃった。もうまともに動けそうもない」
「はっ……だったら素直に俺に殺されるしかねぇよな?」
「それは無理。あんたはもう一歩も動けないから」
「なっ……なにぃ!?」
何をバカなと未萌奈は襲い掛かろうとするも身動きが全く取れない。というよりも両腕、両脚が言う事を聞かない。
「鵜散自体に割いた想力は50%。残りの50%はあんたの四肢の動きを奪う事に割いた。ぷち
「こ……このクソ女があああぁぁぁぁ!!!」
「流石未萌奈!!」
ふと気が付けばヤル気満々の達樹が謙也の眼前へと迫っていた。
着実に確実に達樹の右拳に想力が漲っていく事を直に感じる。冷や汗を垂れ流しながら実感する。目前に迫って来ている二度目の死を。
「ぐっ……そ、そうだ!おいお前!俺を助けてくれたらめちゃくちゃ可愛くてエロいアイドルを紹介してやるよ!!好みはどんな女だ!?俺が言ったら女共なんてすぐ股を開く!すぐにお前もモテモテハーレム男にぃ!」
必死に媚び売る謙也だが達樹は一切耳を貸さない。
「もっかい死んで詫びろ!!エアロヴィア……!!」
ありったけの力を込め振るった疾風を纏った右拳を止める事なく、これまで殺されて来た人間達の怒りを乗せて謙也へと打ち込む。
「インパクトォ!!!」
「ぶぼごおぉぉぉっ!!?」
達樹の疾風の力が付与され強化された渾身の力を込めた右ストレート。
『エアロヴィアインパクト』が謙也に直撃し複数の壁を貫通して殴り飛ばされていく。
その絶大な破壊力の前に謙也の肉体は朽ち果て消滅した。
「ふぅ……」
『やりましたね達樹さん!!私達の勝利ですっ!』
「あぁ。ありがとな大我。それと未萌奈も……って寝ちまってるか」
達樹は疲れ果てて倒れる未萌奈を抱き抱え結婚式場を後にした。
また大きく破損した会場の修理費として達樹達の今回の任務による給料は全て消滅してしまったと言うのはまた別の話。
『結婚式場での死闘
勝者 輝世達樹、三竹未萌奈、春風大我』
―――― to be continued ――――
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