第29話「未知なる領域!歴戦の覇者・仙道巳早登場!」
2023年 5月30日 16:30分
先日の笹倉静葉の一件から翌日の放課後。達樹と卓夫は恋に言われた通りDelightを訪れていた。
「ま……まさか……拙者があの有名なDelightの敷地内に足を踏み入れる事になるとは……も!もしかしたら拙者の推しアイドルやどちゃくそぺっんぴんさんの未知なるアイドルちゅわんとお会いできる可能性も!?」
「ねぇんじゃねぇか?ここって場所にもよるらしいけどほぼ男しかいないらしいし」
「そ、そんなアホなぁ!!?!?アイドル業界の更なる躍進を謳っているのに女っ気なしってどゆことでござるかぁぁぁ!!??」
「建前なんだよ基本は……っていうか遊びに来たわけじゃねぇだろ」
本来の目的を忘れそうになっていた卓夫に喝を入れ目的地へ向けて進み始める。
今回向かう先は達樹からしても初めて足を踏み入れる場。奏者がメインで扱う本館から少し離れた先に抗者が集う別館があるらしく、そこへ向かう道中違和感に気づく。
「急に女っ気が出てきたな……」
ちらほらとすれ違う女性。先日の東城明日香のように完全顕現している訳でもない。
見渡す限り純粋な女性が半分はいる。男子校から一瞬にして共学へ移り変わった感覚だった。
服装はあらかたの人間が白一色。達樹たち奏者が身に纏う黒衣装のウインドブレーカーに対して補色の白一色。
抗者ってやつの衣装に当たるものなのか。汁物は食べるのが億劫になりほうだな……なんて考えてると一人の女の子が目の前から歩いてくる。
少し小柄で前髪が綺麗にピンクに染め上げられている。
瞳はオッドアイ仕立てになっており右目が黒。左目がピンクのロングツインテールヘアに白装束。
所謂地雷女子と呼ぶに相応しい身なりの少女は口に棒状のチョコレートクッキーを口にしている。腰には露骨に太刀が差されている。
属性てんこ盛りな彼女を見ていた達樹は余りにもまじまじと見てしまっていた。冷淡な顔立ちな彼女でそそくさと歩く少女の目が合う。
「何かついてる?」
「えっ?あぁ……いや、なんでもねぇ。気にしないでくれ」
「そ……」
そのまま少女は何事もなかったかのようにこちらには一切気に求めず去っていった。
「達樹殿……あれは、タイプクーデレの地雷系女子(刀持ち)という男の萌えと燃えを凝縮したような最強のハイブリッド女子なのでは!!?拙者連絡先交換チャレンジ(信頼度3%)に挑ませて頂いてもよろしか!!?!?」
「3%もあるか?」
今の一瞬で達樹は理解した。これまで携わってきたDelightとは異質の場であると。
秒でガン無視を決め込まれた卓夫と共に既定の場所へ辿り着き扉を開ける。
「来たね。二人とも」
そこで待っていたのは最愛恋。ともう一人いたのは金髪ショートの女性。スタイル抜群、ぱっちり開く澄んだ瞳と顔立ちもすっとしている。
ぱっと見でわかる程の金髪ハーフ美人は二人を見定めるようにじっと舐め回すように見つめてくる。
「えっと、そっちの女の人は?」
「彼女は篠宮エレンジーナ。戦闘部隊
「えっえぇっ!!?ちょっ!まっ!!?えぇぇっ!?せ、拙者にあはんむふんなご指導ををを!!?!?」
達樹達をしばらくじっと見つめていたエレンジーナがようやく口を開く。
「元気いっぱい素晴らしい〜♪私の事は気軽にエレちゃんって呼んでね♪卓夫君だっけ?やる気の方はどうかな?」
「や、ヤル気!?それはもう1000那由多%有りに余っておりますぞぉぉぉ!!?」
「それじゃ早速始めようか!ウォーミングアップがてらフルマラソンでもしよっか!私から10m以上離れたら金的ね!」
「余裕綽々瀬戸内寂聴でござるよ!ってえっ、フルマラソンって42.195kmじゃ?えっ金的?拙者今日が命tあああぁぁぁぁ!!!」
卓夫はエレンジーナに手を拒否権などないと言わんばかりに猛スピードで連れ去られていった。
「あいつ殺されないよな……?」
「まぁ健闘を祈るって所だね」
一気に部屋が静かになり達樹に対しての本題に入る。
「君に会いたいって人がいてね」
「会いたい人?」
すると扉を開けて一人の男が入ってくる。
「挨拶が遅れてすまない。輝世達樹君……先日まで遠方にいたものでな」
入ってきた男は眼鏡姿に奏者衣装に黒髪髪を立ち上げており。頬に傷を持ち見た所40〜50代。貫禄と威厳を放つその男の佇まいからはただ者では圧が伝わってきた。
「お、俺の事知ってるんですか?」
「あぁ。私の名前は
「!?……父ちゃんからっ!?」
――――――――――
同日 東京都内 某廃墟
最愛恋から致命傷を受けた哀憐は絶命の間際。液状化に残り憎力を注ぎ何とか一命を取り留めていた。
元の人間の姿に戻る事はままならず完全回復の為に今はひたすら身を潜めていた。
「それにしてもこっ酷くやられちゃったね。哀憐」
「まさかあいつと出くわすなんて……まぁ久々にゾクゾク出来て良かったけどね」
「流石に最愛恋を相手にするのは今は部が悪い。一人で殺るなら必要以上に前準備をした上で臨まないと無理だよ。それにあいつは完全聖転換が出来る」
「ごめん、つい楽しすぎて頭から抜け落ちちゃってたわ」
「まぁ気長に行こうよ。僕らも僕らで頑張るからさ。ね?悲哀!」
返答が無い。沈黙が場の空気を凍らせる。
「まーた寝てるよもぉ!!」
――――――――――
同日 Delight 別館 トレーニングスペース
「デストヴィアインパクトォ!!」
ドゴォォォ!!!
先ほど達樹の前に現れた男。仙道巳早と達樹はトレーニングルームは移動し巳早から指導を受けていた。
力の差は歴然で最愛恋との実践同様まともに攻撃を当てることすらままならず最後に渾身のデストヴィアインパクトを巳早へ叩き込んだが掌で容易に受け取れられてしまう。
想力の全てを込めて打った渾身の一撃が故ここで幻身が解除される。
「……威力は申し分ない。父親譲りのパワフルな戦い方だ」
「……あざます」
実践を終えてくたくたになった達樹は巳早と共に食堂へ移動し食事を開始する。
「凌牙の事は悔やんでも悔やみきれない。私や他の奏者達にとっても彼の存在は偉大だった……君達親子には迷惑をかけてしまったと思う。本当にすまなかった」
「……謝らないでください。父ちゃんは人知れず命懸けでずっと顔もろくに知らない誰かの為に戦ってた。そのおかげで救われた命があって、そう思うと俺も頑張らないとって思うんです」
「その為にももっと力を付けたい。だがその気持ちと相反してアイドル因子の力は何故か引き出せていない自分にどこか焦りを感じている」
「!!」
今の自分の現状をこの出会って数時間で完全に見透かされていた事に驚く。
ずっと前から抱いている疑問であり課題。輝世達樹は今も尚自らに宿るアイドルの名前を知らない。そのせいでみんなと比べるとスタート地点にすら立てていないのではないかと達樹は日々焦っていた。
「こうして君と接した上で君とアイドル因子との隔たりは概ね理解した。出会った頃の凌牙も同じ悩みを抱えていたよ」
「そ、そうなのか!?」
「だが敢えて言わないでおこう。自分自身での気付きが何より成長には必要不可欠だ。
ただ一つ助言するのであれば……アイドル因子は私達にとってただの力の動力源ではない。私達と等しい感性を持ち、誰かを想い敬い生きている。彼女達も誰かの為に大切なものを守る為に戦う覚悟は出来ている」
「それってどういう……?」
「この先は自分自身で考え答えを導き出してくれ。あまり甘やかすのも教育に良ろしくない」
「えぇ〜〜??」
巳早の言葉を脳裏に書き留め、この日の特訓は終了。
達樹は帰宅してその言葉の意味を考えながらも眠りについた。
だがその一方で暗躍する憎愚の影が迫っていた。
ーー to be continued ーー
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