第20話「実戦演習!最愛恋の実力!」
あれから光也が正式にDelight所属の奏者として加入し光也と瑠璃華のシンクロ率も上がり自我消滅の心配は無くなった。
その日の晩はパーティーを行い団欒しながら楽しい夜は更けていった。そんな翌日の早朝。
2023年5月28日 9:15分
「みんな集まったね。怪我の調子は大丈夫かな?」
先日の怪我が完治した達樹、光也、隼人の三人は最愛恋呼び出されDelight内の広大なグラウンド場に集められていた。
「もーばっちりよ!」
「問題ないです」
達樹と隼人がハッキリ言い切る形で答える。重症であった達樹と隼人の受けた傷は完治し万全の動きができるまでに回復しきっていた。
光也自身は二人に比べると比較的ダメージは少なかったためピンピンしている。
「しっかしこんな朝っぱらからグラウンドまでわざわざ集めて……走り込みでもすんのか?」
「いや、無事三人集まったって事でみんなの実力を把握しておきたくてね。今から俺対達樹達で実戦演習をしまーす」
「恋さんと戦うのかよ!?」
「そうだよ。遠慮なく殺す気で来てね」
俺対達樹達。そのその言葉の意味をそのまま受け取るなら三対一での戦闘ということになる。
「三対一って……流石にあれだろ。いくらあんたが強いって言っても正直今の俺はノリに乗ってるぜ」
「あぁ……俺もこの前はヤバかった……このまま下克上なんて事もあるかもだぜ?」
先日の中級憎愚の撃破によりハイになっている今の光也と達樹は勝利のイメージを強くて保ち続けている。特に光也に関しては自分が負ける事など想像もついていない。
恋との接点も二人に比べて薄いため自分らよりは強い先輩くらいにしか捉えていない事もあるだろう。
「なるほど……心配してくれるのはありがたいけどその辺は気にしなくて大丈夫かな。俺から受動的に声を出させたらそっちの勝ち」
方法はくすぐりでも金的でもなんでもありだと澄ました顔で補足する。
三人はストレッチを済ませ臨戦体制に入る。
「よっしゃ行くぜ!はあああぁぁぁぁ!!」
想力を身体中に巡らせる。三人は幻身し達樹にはサイドテール、光也にはツインテール、隼人にはポニーテールが顕現される。
「いくぜぇぇぇ!!」
「秒で終わらしてやるよぉ!!」
「なっ……!無闇に突っ込むな!お前ら!!」
最初に仕掛けたのは達樹と光也。達樹は拳に想力を込め光也は葬刀に雷を宿して恋へとぶつける。
――が向けられた拳と刃の先に恋の姿はなく瞬時に二人の背後に回り込んだ恋の人差し指がツンと触れる。二人は凄まじい勢いで吹き飛ばされ辺りに土煙が舞う。
「今何された!?光也わかるか!?」
「かけらもわかんねぇよ!!」
あまりの一瞬の出来事に二人の頭がついていかない。
「人差し指に想力を込めてつついたの。まぁこんなに吹っ飛んじゃうとは思わなかったけど」
身体の部位に想力を集中させ破壊力を増加させる。奏者における戦闘の基礎段階の運用方法である。
自分が持つアイドル因子の力を発現できない奏者は必然的にこの戦闘方法になる。
「おい舐められてんぞ達樹!」
「バカお前もだよ!」
二人してバカな口論で揉め合う中でも恋は容赦しない。恋は二人の間に割って入り達樹と光也の頭を鷲掴みにする。その間わずか0.1秒。
「緊張感を持って欲しいな。ここは今戦場なんだから」
鷲掴みにした両頭を勢い良くぶつかり合わせる。
あまりの衝撃に悲痛の声を上げる両者をそのままグラウンドの端まで投げ飛ばす。
「「ああああアアアァァァァァ!!」」
そのまま追いかけようとした恋を静止させたのは隼人であったが炎を纏った斬撃が遠方から飛んでくる。
「武装顕現……格闘メインじゃなかったっけ?案外浮気者なのかな?」
「色々模索中です……!」
灼熱の炎を纏うことのできる隼人と優菜のイメージにより顕現された。
【ウィザリングブレイガン】
その名の通り斬撃と銃撃を可能とする万能剣による銃撃で隼人へ距離を詰めつつ炎を宿した刃で直接斬りかかる。だが恋は一切避ける気配がない。
(避けないのか!?)
予想外の行動に困惑したがそのまま刃を振り下ろす。
だがその刃は恋まで届く事はなく、刃を防ぐ恋の腕の周りには逆巻く波の如く防護する棲水が纏われていた。
「水!?」
「今躊躇したね。言ったはずだよ。殺す気で来いって」
そのまま右足を掴まれ達樹らと同じように投げ飛ばされる。
その様を見ていた達樹らに電撃が走る。
「おい!今の見たか!!」
達樹が光也へ声を荒げて呼びかける。ここが攻め時であると。
「あぁ!!今がチャンスだぜぇ!!」
猛ダッシュで達樹と光也は再び己の武器に想力を宿して恋へと立ち向かう。
そして射程圏内に入った後達樹はひたらすらに拳を振るう。だが一撃喰らわせる事すら叶わない。容易に避け続ける恋の腕からは清水が飛び散っている。
(くっ……最悪タックルでもして抑え込んでやろうとも思ったのに隙がねぇ……!一瞬でも動きを止めた瞬間やられる!)
だがそれも想定内。二人の本命は光也の葬刀による雷撃をヒットさせる事である。達樹の猛攻はあくまで囮であった。
「みずタイプはでんきタイプに弱いんだよ!!」
恋の腕に目掛けて刃を振り下ろす。だが突如として目の前に大きく立ちはだかった土壁により遮られる。
「今度は土ぃ!?」
「でんきタイプはじめんタイプに弱いよな」
奥の手がいとも容易く封じられてしまった二人。
土壁が消滅すると同時に恋の両腕に凝固な岩石で出来た拳が形成され、唖然とする二人にその拳は容赦なくぶつけられ殴り飛ばされる。
「水かと思ったら土って……こういうのって一人一個じゃないのかよ!」
立て続く理不尽の連続に納得がいかない二人。ここで光也の想力も底をつき始める。
「まだまだくっそ眠いんだけど……もうちょっとだけでも頑張れそうかな?三人共」
いまだに息一つあげない余裕な表情の恋。
続け様に隼人の火力すら凌ぐほどの業炎を腕に宿してそう煽り立てる。
「今度は炎か……!?」
「上等だこんちくしょおおぉぉぉ!!!」
三人は持てる力の全てをぶつけて恋へぶつかり続ける。ボロボロになりながらも。
そうこうしてる間に実践演習が始まってから30分が経過した。
「ゲームセット」
グラウンドには想力を使い切り地面に突っ伏す三人と汚れ一つつけずに何事もなかったかのように砂埃が舞う中に佇む恋の姿があった。
(格が違う……一撃もかすりすらしなかった……!)
余りの戦力差に光也の過剰なまでに上がっていた自信も砕かれる事になった。達樹と隼人も改めて恋の実力を再確認した。
「まぁ……結果はこうなっちゃったけど30分もノンストップで戦い続けれただけで凄いよ。もっと三人とも強くなれる。俺が保証するよ」
(やっぱ恋さんはつえぇ……上には上がいる。俺はまだまだ弱い。もっともっと強くなってやる!!)
最愛恋の実力を目の当たりにした達樹達。一時の休息の後。この後は自由時間の予定だったが三人は恋へ再度実戦を懇願し再び特訓を再開した。その特訓は夜更けまで続いた。
ボロボロになり激しく疲弊した三人であったがその心は熱く燃え滾っていた。今よりもっと強くなるために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます