第20話 朝


 皆で朝食を終え、タベルの下へ向かうアベルとジャック。流石にイアンは、昨日の件で行くのをやめたらしい。

 そして、代わりに護衛を任されたジャック。基本アベルとタベルの話し合いだ。黙っていても問題ないからとキーラに押し付けられた。


「悪いね、助かるよジャック」

「問題ない」

「そうだな、問題あるのはイアンだから」

「仕方ない」

「でも、ジャックはどうなんだ?」

「なにがだ?」

「その、惚れた相手とか好きな人とかは?」

「…………」

「ジャック?」

「ついたぞ」


 到着すると、馬車の修理を、最低限の見張りを残し護衛達でしている最中だった。


「タベルさん、おはようございます」

「お、おはようございますアベル様」


そう言ってテントに入るアベルに、挨拶を返しながらも、驚きの視線はジャックに釘付けのタベル。


「きょ、今日はイアン殿ではないんですね?」

「え、ええ、あの後色々とありまして……」

「本当に、うちの娘が申し訳ございません」

「まぁ、それは仕方のないことかと……」

「「はぁ~~~」」

「「うん?」」

「「ははははは」」


ため息から同じ動作と発言に笑いがこみ上げてきた二人。


「ごほん、所で今日の予定はいかがですか?」

「はい、昼には馬車の修理が終わりますので、出発し、夕方には街に到着する予定ですよ」

「良ければ我々も同行させて頂いても?」

「いいんですか?」

「もちろん、それに護衛が増えれば、街まではお互いの安全度も高まりますし」

「ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」


イアンから言われた事をそのまま伝えるアベル。先を急ぐ旅ではあるが、このまま放っといて置くことも出来ないし、また盗賊が仲間を連れて戻ってくる可能性も考え、安全策を提案するようイアンと話し合っておいたのだ。その提案が通り一安心。


「もし、まだ傷が痛む、体調が悪い人がいたら治療しますので言ってくださいね。もちろん昨日頂いた謝礼に含まれてますからこれ以上は頂きませんよ」

「本当に、あなたって方は……治癒士が皆、貴方様のような方ならもっと皆が平和に……」

「俺もそう思う……」

「あははははタベルさんもジャックも止してくれよ。お立てても何も出ないぞ」

(本心なんですけどね)

(本心だ)


「ところでお嬢さんは?」

「その~何といいますか……イアン殿に振られて落ち込んでいる所を、護衛の一人に慰められまして……今はその彼のそばに……」

「「あっははははは」」


ジョゼがいない事を聞くと、何と既に次の恋が始まっているらしい。それはタベルも父親として言いづらそうに話す訳だ。

 しかし、アベルとジャックの二人は大爆笑。逞しいのは良いことだ。熱しやすく冷めやすい。人それぞれだろうが、これを待ってる仲間達に言うのが楽しみでならないアベルだった。

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