第13話 調合


「先生、手伝って下さい。お願いします」

「わかったわ、ふふふ♪」

「先ずはこれを火にかけて下さい。その後、この薬草は水で洗って、こっちの薬草は根と葉に切り分けて、これはすりつぶして、それは水につけて下さい」

「えっ!そんなに?」

「なるべく早くお願いします」

「は、はい!」


 泣いた者がもう笑う。泣いては無いが恐怖に震えていたティアラは、魔法袋から機材や材料を取り出すと、素早く調合を始めた。そして尽くそってくれていたキーラに指事を出しながらで早く作業を進めている。元気になってよかったと、微笑んでいたのは束の間で、いつの間にかキーラが弟子のように手足として使われ始めていた。その指示の多さを手早くどうにかこなし、ティアラに確認を取りに行く。


「ティアラ、中々細かくならないんだけど?」

「腕の力だけじゃなくて、もっと体重をかけながらやるとすり潰せますよ」

「なるほど!うんしょっと」

「そうそう、そんな感じです。えっと、止血剤は完成、造血剤は新鮮な魔物の肝がほしいんだけど……」


 造血剤の材料で一つだけ足りないものがあった。代用品もなく、調合するティアラの手が止まる。


「ふっ、よっ、えい、やあ、ティアラ、どうしたの?」


 それに気づいたキーラが、言われた通りに作業しながら声をかけた。声が出るのは御愛嬌。それだけ一生懸命潰している。


「先生、作業を変わります。その代わり魔物ならなんでもいいので、急いで一匹狩ってきてもらえませんか?新鮮な肝が必要なんです」

「任せて!そっちは得意よ。我が標的を切り裂け、ウインドカッター」


すると、空を見上げ上空に魔法を放つキーラ。すると、ドサっと一羽の魔鳥が落ちてきた。その首から先は無い。


「これでいい?」

「はっ、はい!流石です先生」

「任せて♪ティアラは作業を続けて。私は肝を取り出すから」

「はい、お願いします」


キーラが撃ち落とした魔鳥は、スライムと同じく掃除屋と呼ばれる鳥の魔物ブァルチャだった。盗賊の死肉を漁るため、上空を旋回してその時を待っていたのを仕留めたようだ。その腹の羽根を毟り露わになった肌を杖で撫でると、綺麗に切れて内蔵が露見する。その肝を切り出し水魔法で洗ってティアラに差し出した。


「これでいいかしら?」

「はい、先生。本当に凄いです。かっこいいなぁ」

「ふふふ♪次は何をすれば?」

「ここにある残りの止血剤をアベルに」

「わかったわ」

「ここに肝を加えて良く混ぜて、裏ごししてっと。よし、造血剤まで完成っと♪次は魔力ポーションの準備をしなきゃ」


ティアラが次の薬の作業に取り掛かる。そしてキーラがアベルの下へと止血剤を持って駆けつけた。


「これが残りの止血剤よ」

「助かる。回復魔法も万能じゃない。俺の魔力にも限界がある。時間が稼げれば治療が間に合う。本当にティアラがいてよかった」

「後で本人に直接言ってあげてね。さっきのアベルは、余裕が無いのはわかるけど言い方が少しキツかったわよ」

「悪かった。ティアラに後で謝るよ」

「わかればいいわ。頑張ってね。私はティアラの所に戻るから」

「ああ、キーラもありがとう」


 そして日が沈む頃に皆の治療が終わった。可能な限りの命を救い、魔力欠乏で具合が悪そうなアベルは、その場に倒れてしまう。やりきったのだろう。その寝顔は笑顔だった。

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