126.俺大好きなニワトリスたちと、買物をする俺

 先ほどの冒険者たちはまだギルド内に残っていた。

 今日はもう依頼を終えて休んでいるのだろうか。

 二、三パーティいるのかな? 背の高いテーブルの前にある椅子はあらかた埋まっていた。


「やあ、君たち。ちょっとモール駆除をしてみないかな?」


 イカワさんがうさんくさそうな笑みを浮かべて彼らに声をかけた。


「ええ? やあよ、あたし」


 女性の一人が嫌そうな顔をした。まぁ、モール駆除って普通は土まみれになるイメージだもんな。嫌がるのも無理はないと思う。


「まぁまずは話を聞いてほしい」


 聞くだけなら、としぶしぶ女性が頷く。


「モール駆除は安い仕事だが、モールがいると作物が取れなくなってしまう。それはみんな知っていると思う」


 イカワさんはぐるりと冒険者たちを見回して言う。うん、なんか芝居がかっててうさんくさい。(大事なことなので二回言いました)


「ただ、駆除の重要性はわかっていても依頼料の安さで躊躇していた者も多いだろう」


 みなうんうんと頷く。


「だが、そのモール駆除に補助金が出ることになった」

「えっ……」

「マジか……」

「補助金? いくらだ?」


 冒険者たちがざわめく。


「依頼金に上乗せされるんだよな?」

「そうだ。なんと、一匹につき……銅貨五枚が上乗せされる!」

「おおー!」

「銅貨五枚、だと……?」

「一匹につき……?」


 微妙そうな顔をしている人もいるが、銅貨三枚もあればキタキタ町のギルドのところでパン一切れと野菜スープが食べられるもんなぁ。こっちの物価がどうなってるか知らないけど、一食分上乗せされると考えたらでかいんじゃないだろうか。


「で? 依頼の方は一匹辺りいくらなんだ?」


 やる気になったらしい冒険者がイカワさんに尋ねた。


「一匹につき銅貨三枚だ。だから一匹駆除すれば、銅貨八枚が出るぞ」

「おお……」

「それは、でかいな……」

「一匹につき銅貨八枚なら悪くはないわね」


 女性たちもやる気になったらしい。よかったよかった。


「だがどこの畑なんだ? ここにいる全員でやるとなると……」


 一人が俺たちの方をちら、と見る。ああ、うちは従魔を連れてるから根こそぎ狩られるんじゃないかと思ってるのかな?

 シュワイさんがそれに答えた。


「安心しろ。私たちが狩るのは銅貨一枚での依頼の畑だ」

「そ、そうか、それなら……」


 というわけでみなこころよく引き受けてくれることになった。今日はもう時間が中途半端なので、明日の朝ギルドに集合してからみなで移動するということになった。

 ま、すでに被害を受けているなら一日二日経ったところで今更なんだよな。しかも追加の依頼はさっき受け取ったってイカワさんが言ってたし。

 ホテルにまっすぐ戻ってもいいのだが、まだ明るい時間だからもう少し街中を散策してみたい。

 せっかくなのでみんなで買物に行くことにした。

 キタキタ町で手に入らない果物とか買えたらいいなと思った。


「買物に行くなら、オトカは羅羅ルオルオに乗ったままの方がいいだろう」


 シュワイさんに言われて、俺はうろんな視線を向けた。


「……ええ?」

「嫌そうだな?」


 そう言うシュワイさんはとても楽しそうだ。


「嫌に決まってるじゃないですか」

「従魔たちを早く町の人に覚えてもらった方がいいだろう? その為には羅羅の上に乗って移動するだけではなく、買物などをして町の人と触れ合った方がいいんじゃないか?」

「そ、それはー……」


 そうだけど。

 シュワイさんの言っていることがいちいちもっともでなんか腹立つ。だってシュワイさん絶対この状況を楽しんでるしな。

 でもシュワイさんがいることでとても助かっていることに間違いはないので、俺も観念して言うことを聞くことにした。


「シュー、オトカ、イジメルー?」


 だが羅羅に乗ったままのクロちゃんが、首をコキャッと傾げて珍しくシュワイさんに聞いた。


「いじめてないよ」


 シュワイさんが笑って言う。


「イジメルー」

「えっ?」


 シロちゃんが後ろからパッと飛び降りて、シュワイさんをつつこうとした。シュワイさんがそれを避ける。


「宿に戻ったらつつかせてあげるから、ここでは止めてほしいかなっ」

「マモルー?」

「守るよ」

「えええええ」


 シロちゃんはシュワイさんから言質を取ると、満足したように俺の後ろにまたもふっと収まった。


「……シロちゃん」

「ナーニ?」

「シュワイさんのこと、つついちゃだめだよ」

「ヤクソクー」

「そんな約束はしませんっ!」

「ヤクソクー!」


 全くもう。宿に戻っても絶対つつかせたりしないんだからなっ。

 そんなちょっとしたやりとりもあったが、そのまま買物に向かった。

 市場は役場のある通りの一本ギルド側にあった。狭い道の両端にいろいろな物を売っている店がある。道が狭いのでシュワイさんが先頭を歩くことになった。そのシュワイさんの肩にピーちゃんが止まる。ピーちゃんは先頭でないと嫌みたいだ。

 シュワイさんの後ろを、クロちゃん、俺、シロちゃんを乗せた羅羅が続く。


「ひぃっ、タイガーッ!?」

「従魔なんです、すみません」

「ニワトリスゥッ!?」

「従魔なんですー」


 何度従魔と言ったかわからないけど、それで周りの店の人たちには覚えてもらえたみたいだ。ピーちゃんは果物を売っている女性からマンゴーのような果物をもらって「オイシー!」と言っていた。


「それを……六つもらおうか」


 シュワイさんは人数分(?)数えてマンゴーを買った。


「他にほしいものはあるか?」

「ンー? オヤサイー?」


 ピーちゃんが首をコキャッと傾げてねだる。

 そんなかんじで野菜や果物をそれなりに買ってからホテルへ戻ったのだった。


次の更新は、16日(月)です。よろしくー

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