第54話
そして、いろいろありすぎた皇女の誕生日パーティーは、まだダンスも始まっていないと言うのに、お開きになり、私とリイナは神殿へと戻った。
当たり前だけれど、あんなことがあった後、続行できるわけもないだろう。
これで、ロベリアは捕まって、留置所に送られることになり、フィリックとクロウはそっちの方に行くことになり、別行動となっている。
今日は徹夜らしい。
ちなみに、会場で刃物を取り出したあの侍女も同様だ。
2人はこれから取り調べが行われるらしい。
そして、侍女が着ていた服がクレム皇女の紋章をつけていたことから、クレム皇女はしばらく謹慎になるそうだ。
もちろん聖女の儀式の時同様、庶民にはこの事件のことは伏せられた。
しかし、貴族は皆参加していたので、この事件のことを知らない人はいないのだけれど。
まぁ、これをどうしていくかは取り調べ次第だ。
そして、そこは私としては重要ではない。
ロベリアから呪いのことを聞き出せるかどうか。
全ての話はここにかかっている。
その第一段階として、ロベリアを捕まえられたのは大進歩だ。
けれど……
「何か引っ掛かるわね……」
神殿に帰った後、一人部屋のテラスから、空を見上げながら一人そう呟いた。
これは本当に独り言。
でも、この独り言に返事を返してくれる人がいた。
「気になることでもありますか?」
白い鳥の姿のリオスだった。
今日はリイナは私の部屋にいないから、少し距離があると思うのだけれど……
いろいろあったからか、わざわざ部屋に来てくれたらしい。
私も私で、突然現れることに慣れてしまい、その程度では驚かなくなってしまい、普通に返事をする。
「いや……なんか全部。ロベリアが捕まったのはこの際いいわ。でも……なんでロベリアがいるのに、会場では別の……魔法が使えない侍女がリイナを狙ったの?」
「警戒されてると思ったんじゃないですか?リイナはずっと神殿にいたから、呪い対策の魔法がかけられてると判断したのかも……」
「じゃあ何でロベリアも皇宮にいたのよ」
「それこそ、皆さんの推測が当たったんじゃないですか?皇女がロベリアを匿っていたんでしょ?リベンジ果たすための保険として。」
「じゃあ、黒幕が本当に皇女だというの?」
「何かおかしなところがありますか?」
「……腑に落ちないのよ。」
あの侍女が私を襲ってきた後、皇女の取り乱し方が普通じゃなかった。
確かに犯人でも同じことを言うだろうけれど……
公爵令息と結婚する聖女が邪魔って理由だけで、あんな直接的に殺そうとする?
皇族にとって皇族になれない聖女が邪魔なのは理解できるけど……聖女候補全員殺したって、聖女の地位もシステムも消えたりしない。
だったら自分が女帝にでもなって、聖女システムをなくした方が早いわ。
「それに、皇女も言ってたけど、自分の誕生日パーティーよ?そんな時にリイナを襲えば、自分が犯人だって言ってるようなものじゃない……そんな自分が犯人だってバレるようなことをするほど浅はかな人間かしら……黒幕ならもっと上手く隠れようとするはずだわ……」
「そうですけど……黒幕はわからなくても、これで呪いは解けるのでは……」
「でも、リイナは狙われ続けるわ。いいえ……呪いといた後の方が危険かも。」
私が呪いを受けてる間は、聖女の地位が危ぶまれる分、狙いがそこなら、皮肉にもリイナの体は安全よ……
でも、呪いが解けて、地位が安泰すれば。
今度は本当に殺しにくる可能性がある。
「リイナと約束したから、もう必要以上に行動を制限したり、心配しすぎたりはしないけれど、黒幕は放置はできないわ。」
判断を間違えるわけにもいかない。
「今度、ロベリアにあった時、ちゃんとそこ確認しないとね。」
私はそう呟いて空を見上げた。
流れ星でも降ってこれば、お願い事するんだけどな。
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