第33話 モンペの言いがかり
「ですから、これを見過ごしていいことではないと申し上げているのです!」
神父様の部屋に、貴族の婦人たちが集まっている。
あの女性は……みな元聖女候補のお母様方で、神父の周りを取り囲み、詰め寄っている。
「しかしですね……儀式はすでに執り行われ、正式に……」
「詭弁を仰らないでください。」
「あのような儀式、無効です。」
神父も必死に説明しようと頑張ってはいたのだけれど……
誰も耳を傾けようとしない。
前世でこういうの、学校で見たことあるなぁ……いや、テレビか?ネットか?
なんでもいいけど、こういう親たちを表す言葉って、なんかあったわよね……なんだったかしら……そうだ、モンペだ!!
どんな世界にも、モンペっているのね……いや私の前世が反映されてるだけかしら。
なんにせよ、モンペの前に、アモルト神父は無力だった。
「彼女が正式な聖女であることは、皆さんもお認めになったではありませんか、最終決定は覆りません」
「悪い冗談はおよしになってください」
「まだ、彼女は正式な聖女になっていないはずですわ。」
「彼女は、滝にたどり着くこともできなかったではありませんか。儀式に参加した我々貴族、全員が目にしております!」
「あの滝で、神と会話しない限り、正式な聖女になり得ないことは、周知の事実!」
「確かに彼女は、私たちが納得せざるを得ないほど実力をお持ちですわ、ひのうちどころがこれまではなかった、しかし状況は一変しております。」
「気の毒だとは思いますが、彼女は今回の一件で呪われた親族が出てしまったではありませんか」
「彼女は聖女の座に相応しくないのでは?」
「不吉です」
「そうですわ、あのようなことがあっては、彼女の血筋は汚れたようなもの。そんな彼女を神に仕えさせるわけにはまいりません。」
「そもそも、生命を吹き込む力だと伺いましたが、聖女にはそもそも、浄化や治癒能力を持つ人ん弦の方が相応しいのではなくて!?」
「リイナ嬢は聖女の座を降りるべきです。」
「聖女の再選定を要求します」
扉の隙間から、彼女たちの主張を一通り聞いた私たちは、それ以上聴いていられなくて、そのわずかに開けた扉を静かに閉じた。
「どう言うこと?」
扉を閉めて早々に、私は2人に質問をする。
彼ら2人は事情を知っていたようで、しばらく口をもごもごとさせたあと、説明をしてくれた。
「君は一週間部屋の中にいたから知らないかもしれないけど……今、リイナが本当に聖女に相応しいのか、議論されてる。」
「え……でも、儀式は終わったはず。一度儀式をしたら……」
「今の話を聞いただろ?リイナは滝まで行ってない。」
「じゃあ……」
「儀式は君倒れた後、中断されたんだ。あのまま続行できるはずないだろう?」
「一応庶民たちが混乱を起こさないように、表向きはリイナが聖女ということで通してるけど、実際はまだ、一番肝心な『神との対話』を終わらせていない。正式な聖女にはなってないんだ。」
言われてみればそうだ……普通あんなことがあった後、儀式なんかできるはずない。
でも、儀式ができなかったからって、聖女の選定をやり直せ……というのは暴論ではないか。
あくまで、リイナは狙われただけであって妨害したのはロベリアで……
でも、話を聞くと、そこは問題ではないらしい。
「しかも、儀式中の出来事だ、ルナが呪いにかかったことは、出席した貴族たちはみんな知ってる。」
「神官の服って腕が簡単にめくれるだろ?倒れた君を必死に介抱しているときに、腕があらわになったんだ」
「じゃあ……私のこの呪いのこと知ってるのって」
「儀式に出てた全員が知ってる。だから、抗議が来てるんだよ……『呪われた人間が身内にいる家系に、聖女を任せていいのか』ってね。このままこの意見が通ると、最悪聖女の座を剥奪される」
フィリックはそう言いながら扉の方を指差した。
「そんな……」
「呪いが解ければそれでいいけど、もしそのまま呪いで君が死んだら……そのまま聖女の座が別の誰かに奪われるかも。そうなると問題は……」
クロウが何かを言いかけたその時。
「フィリック様」
廊下の向こうから、中年男がそう叫ぶ声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。