第25話 嫌な予感
「あぁ、覚えているよ」
約5年ぶりに対峙した因縁の人物。
もう中野は何とも思ってないのかもしれない。
でも決して俺の記憶からは消されることがない、消すことが出来ないこと。
「それにしてもなんでお前が結姫と一緒にいるんだ?」
「え?」
なんで今中野は結姫の名前を言ったんだ?
何故このふたりが知り合いなんだ?
「もしかして同じ中学か?」
「まぁ…はい、そんなところです」
微妙に歯切れの悪い返答をする結姫に疑念を抱く。
「なんでって、俺ら3人ともいっし……」
「あー!!いた俊介!なにしてんのこんなところで、早く行くよ!」
中野の話の途中でうちの高校らしき女子生徒が割って入ってきた。
「ごめんごめん、ちょっと旧友と再開しちゃってさ」
旧友って……、俺は友達だと思ったことは一回もないっての。
「話の途中になったけどさ、会えて嬉しかったよ」
それでさ、と言って中野は続ける。
「結姫に関しては
「え?ちょ…嫌…!!…待って!」
その言葉を聞いた結姫は背中を向ける中野に慌てたように手を伸ばす。
結姫がこんなに慌てるなんて…絶対におかしい。
何かが引っかかる。
とても大事なこと、すごく重要なことのような気がする。
結姫に何か危害が加わる前に何とかしないと…
♢♢♢
「良かったぞー!!」
「最高!!」
「いいぞー!!」
あの後俺たちはどこか不安な空気を抱えつつも体育館のステージ発表を見にきていた。
体育館で行われていた3年4組のステージ発表が終わった途端館内は拍手と歓声で包まれた。
内容としては交通事故で最愛の恋人を亡くしてしまった主人公がとあるきっかけを経てその恋人の思い出のかけらをかき集めながらゆっくりとゆっくりと前に進んでいく完全オリジナルストーリーだった。
正直オリジナルストーリーと聞いて期待度はすごく下がっていたが思っていた100倍は良かった。
マジでお世辞抜きで。
だって感動してちょっとうるっと来たもん。
ちなみにその内容に隣にいる結姫は少し目が潤んでいた。
「面白かったな」
「はい、見に来てよかったです」
「オリジナルストーリーでここまでできるとは、誰か作家でもいるんじゃないかあのクラス」
「ふふ、そうかもしれませんね?」
さっきの中野とのやり取りが引っかかっているが今の結姫は気にしていない様子だ。
いや、正確に言えば気にしていないことを装っているのかもしれない。
ただあの会話の意味を把握していない俺にはできることなどない。
ただ近くで見守ることしか出来ないのだ。
「一通り見たし花火までゆっくりしてるか」
「あの…本当に申し訳ないんですけど、花火の件に関して急用ができてしまったので今日はこれで帰らしてもらいます」
「……え?どうして…」
「少し急用ができただけです」
「そっ、か…」
何かが引っかかる。
中野と再会してから何かがずっと引っかかる。
なにかとてつもなく大きな嫌なことが起こりそうな、そんな予感がする。
「じゃあ今日はこれで解散にするか」
「そうですね」
「あのさ、もし何かあったらなんでも言ってくれよ、力になるからさ」
せめてこれだけでも、と思って発した言葉に結姫は少し困ったようなどこか寂しげな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます」
そして結姫が発した言葉はそんな端的で、無機質な社交辞令的感謝だった。
いつもの結姫とは乖離したその様子に疑念どころか不安を抱かずには居られない。
俺が何とかしなきゃ…でも、どうすれば……!!
「では、私は帰りますね」
ここで引き止めなきゃダメだ、そう脳が直接体に訴えかけてきた。
それは直観的なものなのかもしれない。
あるいは経験論に基づいた未来予測による警鐘なのかもしれない。
でも、体は愚か、口すらも動かなかった。
「それではさようなら」
結姫が発したその言葉はいつもとは違った意味合いが含まれている気がしてならなかった。
待ってくれ結姫、俺を置いてかないでくれ、1人にしないでくれ……!
その心の叫びも結姫に届くはずもなくただ虚しく空気中に溶けていった。
♢♢♢
「……これから俺はどうすればいいんだ」
結姫を助けたいのに助けられない、それどころか現状今何が起こっているのかわかっていない。
そんなんじゃ助けたくても助けられない……どうすれば…。
そもそも何が起こっているのか把握しなければ。
その時だった——
「マジであいつ調子乗ってるよな」
「それなー、夢咲のやつちょっと顔がいいからって調子乗って」
「顔が普通のやつには死ぬほど塩対応なのに最近噂になってるやつってイケメンらしいじゃん、ほんとにしょーもない」
「あれ、夢咲の下の名前なんだっけ」
「覚える気すらないよ」
「ゆうひ?とかじゃなかった?」
「そうだっけ、まぁどうでもいいや、今頃朱美たちがなんかしてるでしょ」
その女子高生たちの会話に振り返らざるを得なかった。
そのままその女子高生たちに近づいて思わず口に出していた。
「結姫はお前らの思ってるようなやつじゃない、すごいいいやつなんだよ……お前らの嫉妬で俺の好きな人を悪く言うな!!」
もう怒りでおかしくなっていた。
結姫はそんなやつじゃない、そんな酷いやつじゃないって。
こいつらにはどう言っても届かないのかもしれない。
でも、それでも俺の心がそれを言わないことを許さなかった。
好きな人を侮辱されることを俺が許さなかった。
「……は?誰あんた?」
「
〜〜〜〜〜〜
こんにちは星宮亜玖愛です。
今日は一言だけ。物語、動きます!
それと応援コメントすごく励みになってモチベ上がるのでじゃんじゃんコメントしちゃってくださいー!!
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