十四.3歩進んで2歩下がる(1/2)
結論から言うと、俺はキルステンに助けられた。
密かに呼び寄せていた同僚のミアプラ人たちに子供を預けるなり海岸に引き返したキルステンは、オレンジ色に輝くペレライトの短剣でエレミヤの触腕を躊躇せず切り裂いたのである。
『ギャアアアアッ!』
『鉄火! 鉄火!』
解放されて激しく咳き込みながら身体を起こすと、他のミアプラ人たちに連行されるエレミヤと、酷く動揺した様子のキルステンが目に飛び込んできた。
(また助けられちまったな……)
キルステンの目尻に涙が浮かぶのを見た俺は、結婚への道がまた一段と遠ざかったのを感じたのだった。
「……ずっと、良心の呵責を感じていたわ」
作戦本部に戻った後、巡視船艇が並ぶ夜の岸壁で、キルステンはその本心をポツリポツリと明かしてくれた。
「バージェスは制御不可能という大嘘を吐き、バージェスからの救助劇という白々しい茶番を演じて…………そして、未来ある少年の人生を狂わせてしまった」
「……」
ミアプラに対する俺の感情は、複雑だ。当時は未完成の研究だったとはいえ、その事実を明かしてくれさえすれば、地球との共同研究によって完成を目指すという道も取れたかもしれないのだ。
それに何よりも、失われた人命は元には戻らない。
だが、最後の言葉については、大いなる事実誤認と言わざるを得なかった。
「キルステン、それは違」
「鉄火」
キルステンは俺の言葉を遮ると、夜空を映した瞳でじっと俺を見つめた。
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