一.n回目の共同作業(1/3)

 真夏の潮風が、マリンゴーグルを装着した俺の顔面に激しく衝突しながら通り過ぎていく。



「――ああ、問題無い。あの大きさなら、我々だけで対処可能だ」



 前方に見える貨物船と、貨物船の船首部分に覆いかぶさるバージェスを注視しながら、無線機越しに現場の状況を本船に報告する。



「――以上だ。ではこれより、作戦を開始する」



 俺は本船との通信を終えると、無線機をホルスターに収納し、時速80kmで航走中の水上オートバイと並泳する半身半蛇の相棒バディに呼びかけた。



「キルステン、予定通り作戦決行だ。いつものように俺がトドメを刺すから、キルステンは裂け目クラックを開けてくれ」


「分かった、任せて」



 肩から上を海面から出して泳いでいるキルステンが、前方にいるバージェスを見据えたまま返事をする。しかし、すぐに俺の顔を一瞥すると、晴れ渡った空色の瞳を曇らせてこう釘を差してきた。



「鉄火、くれぐれも無茶はしないでね。どれだけ身体を鍛え抜き、技術を磨き上げたところで、あなたは陸生生物人間に過ぎないのだから」



 そう言うなり腰から2本の短剣を引き抜くと、速度をグンと上げて水上オートバイを追い抜き、体長30mはあろうというバージェスに一気に接近した。



ッ!」



 キルステンが、オールのような形状をした側扁の尻尾で海面を強く叩いて宙高く跳ね上がった。

 

 しなやかな筋肉の付いた両腕を胸の前で交差させ、あわや貨物船の内部に触手を伸ばそうとしていたバージェスに鋭い斬撃を浴びせた。

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