人外美女と結婚するために海上保安官になったけど着任初日にフラれたので今後も猛アタックし続けます

こむらまこと

プロローグ

 ひんやりとした細い指が、海水に濡れた俺の髪をそっと掻き上げる。



「……ああ、良かった」



 誰かが、俺の顔を覗き込んでいる。

 逆光のせいで細部が判別しにくいけれど、それが女の人で、青色の髪と二本の角を持っていることはすぐに分かった。



「もう、大丈夫だからね」



 しっとりとした優しい声が、恐怖に打ち震えていた俺の身体と心に、慈雨じうのように心地良く染み込んでいく。



(きれい……)



 晴れ渡った空の青に似た彼女の瞳に、収まりかけていた胸の鼓動がトクトクと早まるのを感じる。


 俺を見つめるその瞳は、穏やかで優しくて、なのにどこか寂しげで。


 その瞳に、俺は――

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