2-4
「ご存知のように、私は高い塔のてっぺんに閉じ込められて、外界と
父は
テネアリアにとっての家族は
だからといってテネアリアが悲観したかと言えばそんなことは全然ない。ただサイネイトの話によれば、家族と
三年前からだが、塔から連れ出してくれる英雄を待っていたのは本当のことだし――。
テネアリアは心の中で付け加えた。
真実が
そもそもこの縁談自体が仕組まれたことなのだ。ユディングは何も知らないけれど。
「サイネイトが調べて勝手に求婚したんだ。
「それを今、言います?」
そういうことは、正直に言わなくてもいいのに。
可哀想な姫の夢を
家族との縁が薄くて病弱で、わりと不幸な
ユディングはあまり考えを口にしないので、思考が読みにくい。効果がないとなると計画を見直さなければならないのだが……。
少しだけ傷ついたように告げれば、彼の眉間の皺が深くなる。安定の困り顔だ。
可哀想になってテネアリアは苦笑しつつ答えた。
「知ってましたよ、そんなこと」
愛しい旦那様には甘くなってしまうものだなと自身を
「なに?」
「きちんと知っています。陛下が知らないうちに求婚話が出て、やっぱり知らないうちに
「やっぱり信じられない」
「今は信じてくれなくてもいいですよ。私が勝手に貴方を愛しているのですから。貴方は
テネアリアはぎゅっとユディングのお
触れると現実だと実感できる。幸福感が増し増しだ。
「ひ、姫!?」
「私は貴方の妻なのですから、名前で呼んでいただきたいわ」
「……名前」
「テネアリアです。そのままでもテネーでもアリアでもアリーでもお好きにどうぞ」
だから、彼にならなんとでも
ワクワクしながら見上げれば、心底困り果てた
「
「名前を呼んでいただけるまでは陛下のお願いは聞きません」
グリグリと
それとも服に
身だしなみなんて気にする男ではないので、サイネイトあたりが気を利かせて
うっかりときめいてしまったほどだ。
温かい体温を感じればそれだけで、幸せな気持ちになる。
「みだりに男に触れるのは、よくない」
「
「そうなのか?」
「そうですよ。大体、結婚したのに初夜も済ませてないとか問題大ありですわ。あ、今からでもいいですよ」
「初夜!?」
「なんです、初めてってわけでもないんでしょうに」
二十六
ぱちくりと見上げれば、なぜだか絶望的な表情をした皇帝がいた。
「いや、お前からそんな言葉が出るとは思わなくて……何をするのか知っているのか?」
「ばっちり実地で勉強済です」
「実地で!?」
口から魂が飛び出るのではないかというほどに驚きを見せた夫に、テネアリアは
「あー、いえ、
「…………
「あら、乙女の本気を無視されるの? わかりました、今すぐ準備をしてまいります!」
「待て!」
がばりと体を離すとぎゅっと腰を
「……時間をくれ、テネアリア」
思いのほか
それだけで幸福の絶頂のような
もちろん彼の
「かしこまりました!」
その後、ユディングがデザートを食べ終わるまでお腹にしがみついていたのは言うまでもない。
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