英雄様、ワケあり幼妻はいかがですか?
久川 航璃/ビーズログ文庫
プロローグ
東にある小さな島国からやってきた
光が
目の前には、扉を
文句なく整った
ヴェール越しですら圧が強い。
彼の後方で左右に
「ようこそ、テネアリア様。私はサイネイト・フランクと申します。この国の皇帝補佐官をしております。こちらはツインバイツ帝国第十二代皇帝、ユディング・アウド・ツインバイツ
花嫁を
この国では皇帝よりも先に発言するのは不敬には当たらないらしい。
エスコートして馬車から降ろしてもらう動きもないので、その場でテネアリアは夫となる大男――ユディングに頭を下げた。
「はい。陛下、お初にお目にかかります、テネアリア・ツッテンと申します。末永くよろしくお願いいたしますわ」
思いのほか
そんな彼は
だが、不意にどすっと
ヴェールを被っていて視界の悪いテネアリアには何の音かわからなかったが、侍女のツゥイが目を丸くしたのが気配で伝わる。
「さっさと手を取れ!」
青年が小声で男に向かって指示をする。ああとか、うむとか声をあげてユディングは丸太のような太い
「きゃあっ」
「姫様っ」
そのまま
「この馬鹿っ、姫君をもっと
「運ぶんだろう?」
心底不思議そうな声が真後ろから聞こえて、テネアリアは彼の背中をばしばしと
意図は伝わったようで、ぐるんと視界が回る。
彼の所作は
ユディングは肩に担いだテネアリアの腰を両手で摑んで目の前に持ってくる。本当に荷物になったようだ。もちろんテネアリアの両足は地に着いておらず、ぶらんと下がったまま。あまりの身長差と彼の逞しさに思わず
「どうした」
「腕に乗せて、
「腕?」
不思議そうにしながらも、ユディングはテネアリアの言葉に従ってくれる。彼の性格は
ユディングは片方の腕でテネアリアを抱え上げると、腕の収まりのいい場所に固定した。
彼の腕に座る形になると、テネアリアの方が目線の高さがやや上だ。
おもむろにユディングは向きを変える。そのまま歩き出すつもりらしい。
「ふふ、
うっかり
馬車から転がり落ちるように出てきたツゥイは真っ青になりながら、「姫様っ」と小声で
サイネイトは信じられない光景だと言わんばかりに
はた目には
周囲にはお構いなしで、テネアリアは心の中で
ユディング様にお目にかかれただけでなく、髪にまで触れられるだなんて信じられない――っ、ああなんて
結果的に、ユディングの時が再び動くまで、テネアリアはにこにこしながら漆黒の髪の手触りを楽しんだのだった。
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