第7話 ノアと彼女

バシャバシャ・・・

誰かが大雨の中を走っている。

わざわざ雨の中走る事ないのに。

外にいるときに雨に降られたのだろうか。

それとも・・・。


「まあ、どうでもいいか」

俺はまだ彼女の事をひきずっていた。


「見かけるだけでしんどいな。はぁ~」

気持ちがすぐ切り換えられたらいいのに。

俺ってこんなに未練がましかったのか。


今、俺はラズリー町にいる。

大雨だが、風魔法で体全体を包んでいるので雨には当たらない。

ちょうど風船の中にいるような感じだ。

雨の中のんびりと歩いていた。


「あれ?」

さっきから走っている人が目の前を通り過ぎる。

見るとびしょ濡れで女性のようだった。

もしかして・・?

彼女の事を考えていたから幻覚でもみたのかな?

目をこすって見たが、やはりリアナさんだった。


彼女は噴水の前のベンチに座って、ただ空を見つめていた。


声をかけるべきなのか?

少し離れたところから俺は声をかけかねていた。


ぎょっとした顔で俺を見るリアナさん。

何をそんなに驚いているのだろう。

「・・にしてんのよ」

雨の音で良く聞こえない。

俺はリアナさんに近づいた。

風の魔法を意図的に広げてリアナさんを包み込む。


「・・にしてんのよ!ていうか何で全然濡れてないのよ!」

「ああ、これ?風魔法を使って・・」

「・・あんたが噂のB級冒険者ね」


「えっ?ちょっと何してんのよ・・・」

俺は温かい風を発生させてリアナさんの服を乾かす。

肌に張り付いた服は元通りの形になり、水を含んだ髪も水分が抜け、明るい金髪を取り戻した。

「風邪引いちゃうと思って」

「・・ありがと」

リアナさんの瞳から光るものが流れる。

「あ、あれ?何で涙が・・・おかし・・」


俺は思わずリアナさんを抱きしめていた。

自分の行動に戸惑う。

「あ、ご、ごめん。俺とか迷惑だったよね?」

とっさに離れようとしたが

「・・いい」

リアナさんは俺の裾をひっぱり俺に抱きついてきた。

雨はまだ止みそうにない。

誰もいない空間で俺とリアナさんはしばらく抱き合っていた。


****


昨日は何も聞かなかったけど・・・。

リアナさんは俺が泊っている宿の同じ部屋に泊まった。

同じベッドに入ってからも、リアナさんは俺に体を密着させてきて・・。

俺は理性が外れてしまい・・唇にキスをして・・それから・・・。


「はあぁ・・」

俺はベットに腰かけて、ため息をついた。

衣服を脱いでしまっているので寒い。

彼女はベッドで寝ている。

「勢いとはいえ・・嫌われたかな・・・」


最近の俺はなんていうか、予想を超えている。

「のんびりと冒険者生活したかったのに・・・」

(これじゃ、どんなラノベだよ)

ん?ラノベって何だ?

記憶を取り戻しつつあるのか、訳の分からない言葉が出てくる時がある。

恐らくこの世界にない言葉。


「ノア、わ、わたしと組まない?」

リアナさんは上ずった声で、俺の背中から声をかけてきた。

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