第4話 スライム討伐

その夜は宿屋で泣きはらすことになった。

初めての失恋。

このまま村に帰るのも気が引けた。

「すこし、冒険者頑張ってみるか」


****


午前中はだらだら過ごし、午後に冒険者ギルドに顔を出した。

人は少なくて、職員が数名いる程度。

「俺にできる仕事ありますか?」

昨日の職員に声をかけた。

昨日はよく顔を見なかったけど、職員の女性は白髪で灰色の瞳。

胸のネームプレートにはスノウと書いてあった。


「そういえば、ノアさんは魔法が使えるんでしたね。パーティを組まれてはいかがですか?」

「え、でも最初はスライムとか、薬草採取とかじゃ・・」

「まあ、そうなんですけど、リアナ様のお知り合いらしいじゃないですか。それに全属性持ちなんてなかなかいないですよ?」

「今日は弱いモンスター討伐で良いです」

「そうですか」


俺はDランクという一番低いところからのスタートだ。

最初くらい普通に依頼を受けたい。

「んじゃ、このスライム討伐で!」

俺は目の前にあった紙を取って、依頼を受けることにする。


「これですか・・まあ、大丈夫でしょう」

スライムだよな?一番弱い??

スノウさんは少し怪訝そうにしていた。

どうしてあんな顔をしているんだ?


スライムが出現するという場所に来ていた。

町から数キロ程度のところだ。

街道に近い場所だから、大量発生していたら移動が困難になるだろうな。

目の前に、水色のぷよぷよした物体が現れた。


「これがスライムか」

家から持ってきた剣を振りかざす。

サクッと感触があり、すぐに消えてなくなった。

コロンと石が落ちる。


「これが魔石?」

水色の透明な石があった。

スライムって思っていたより弱いな。

実は少し緊張していたのだけど。

「サクサクやっちゃおう。沢山倒せば報酬も多いだろうし」

俺は調子に乗って倒しまくった。


「あれ?おっかしいな・・」

スライムが消える気配が無い。

結構な数倒しているんだけど。

ますます増えている気がする。


巨大な影が俺の目の前に現れた。

「キングスライム!」

俺は目を見開いた。

キングスライムは普通のスライムが集まった形態らしい。

詳しくはよくわかっていない。

大きさは・・家一軒くらいありそうだった。

普通のスライムより強い事は確かだ。


「剣だと面倒だな」

時間がかかりそうなので、俺は魔法を使うことにした。


炎の輪フレイムサークル

巨大な火魔法の円を作りキングスライムを閉じ込める。

キングスライムの外側は火魔法の壁が出来ていた。

逃げようとしても逃げられない。


『ピギイィ・・』

キングスライムはあがくことも出来ず燃え尽きた。

焼け跡には青い大きな魔石が転がっていた。

白い煙が立ち込めて焦げ臭い。

ちょっと火力が強すぎたかな?


「キングスライムがいたから、スノウさんは変な表情だったのか」

前もって言ってほしいよな。

まあ、俺は倒せるからいいけど。

金色の輝く石が転がっていた。


「そういえば、これってDランクの依頼なのか?まいっか」

俺は魔石を皮のショルダーバック(魔法収納鞄マジックバック)に入れて、ギルドへ戻ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る