星降る丘の少年

喜島 塔

第1話


 天空から星のシャワーが降り注ぎ、永遠に続きそうな闇夜に仄かな光を灯した。あの頃の私は酷い夢遊病を患っていて、夜がくるのが只々怖ろしかった。僅かな光でも見えようものなら、私は、その光を決して逃すまいと、無我夢中で追い縋った。


「やる気がないのなら無理に弾かなくてもいいのよ? はっきり言って、貴女レベルの子なら掃いて捨てるほどいるの。でも、皆、必死になって頑張ってる。だから、私は、その子たちの為に、私がしてあげられることを必死でしているの。貴女みたいに、嫌々ピアノを弾いている子に尽くしてあげられるほど、私は、優しくもないし、暇でもないの。ピアノと真正面から向き合う気持ちになるまで、私のレッスンには来なくていいわ!」


 なんて酷いことを言う人なのだろうと、私は憤った。ピアノなんて弾けなくたって、何も困りはしない! こんなもの、いつだって辞めてやる! と、思った。


 今、振り返ってみると、先生が言ったことは正論だった。あの頃の私は、自分のピアノの才能の限界に気付き、ひどくやさぐれていて、“持っている”子たちを羨み、妬み、卑屈になっていた。歪んでいた私に投げ掛けられた先生の真っ直ぐな言葉は、鋭利なメスのように、私の心を切り開き、中から、腐敗してドロドロした液体がじわじわと外へと溢れ出た。

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