ゲ ロ あ ま 胃 も た れ 短 編 集
小泉明日香
二択
「先輩、クリスマスって予定ありますか?」
「えッ!? ないけど!?」
「へぇ。そうなんですね」
「う、うん」
「…………」
「…………」
「そういえば最近うちの犬が芸を」
「えぇッ!? えッ何!? えッ今の何だったの!?」
「は? 何がですか?」
「いや! どっちかじゃないの!?」
「どっちかって?」
「『先輩予定ないならシフト代わってください』か『先輩よかったら二人でどっか行きませんか』のどっちかだよ!!」
「えっ……と、何の話ですか?」
「クリスマスだよォ! キミが振ってきたんでしょォ!?」
「え? 何か怒ってます?」
「怒ってるわけじゃないけど! あんな切り出し方されたら、どっちかだと思うに決まってるじゃん!」
「そんなの私が知ったこっちゃないですよ」
「なんなんだよォ! オタクの心を弄びやがって! ちょっと期待したのに!」
「えっ、待って下さい、それって私が先輩をクリスマスデートに誘う可能性があると思ってたってことですか?」
「そうだよ!」
「この私が!? 先輩なんかと!?」
「そ、そうだよォ!」
「百歩譲っても『シフト代わって下さい』の方が濃厚なのに!?」
「そっ……いいだろ別にィ!」
「えぇ……先輩、そういう目で私の事見てたんですか……」
「ウワーッ! 誰か僕を殺してくれーッ!」
「え、好きなんですか? 私の事」
「えぇッ!?」
「『えぇッ!?』じゃないですよ。好きなんですか?」
「それを聞いてどうすんの!?」
「好きなんですか?」
「ぐっ……好きィ!!」
「うわっ、あっ、へぇ~。そうだったんですねぇ。ちなみにどこが?」
「顔ォ!!」
「……もっと気の利いた事言えないんですか? だからクリスマスに予定ないって分かってます?」
「気が強い所ォ!!」
「あっ、ふーん。そうですか。他には?」
「僕に話かけてきてくれる所ォ!!」
「えっキモ~。なんですかその自己肯定感の低さとひねくれ方。先輩もしかしてメンヘラですか?」
「早く殺せーッ!!」
「あーあ、なんかショックだなぁ。先輩恋愛とか興味ないと思ってたのに」
「恋人と二人、恵比寿のイルミネーションツリーの下でファーストキスがしたいよォ!!」
「うわぁ~。童貞妄想恋愛脳にも程がありますよ。うわぁ」
「うわぁって言うな!! いいだろ妄想くらいしたって!! それしかないんだから!!」
「それ、ほとんど誇大妄想ですよ。現実のデートはもっとささやかであるべきです」
「うるせーッ!! ささやかなクリスマスデートってなんだよォ!!」
「そうですね、まぁ、例えば、その……最近うちの犬が、芸をおぼえたので、あの、うちに、まぁ、見に来る、とか」
「…………えぇッ!?!?!? えッ、えぇッ!?!?!?!?!?」
おわり
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