作家、早蕨柳生の異世界探偵事件簿

猫田魚月

プロローグ(1)作家、取材先で死刑宣告される 


 「アンタ、娼婦殺しの罪で明日の朝処刑されるよ」


 目の前に立つ青年が、そう柳生りゅうせいに告げる。

 柳生は黙ったまま、目の前の青年が着ている真紅のコートを見つめる。仰々しい紋章のついたコートだ。おそらくこの町の騎士団の物だろう。もっとも、この城壁内部の監獄に立ち入れている時点で、この青年がそれなりの立場の人間であるということは明白だ。

 柳生は、ゆっくりと視線を上げ、青年の顔を見る。

 赤銅色の髪と金色の眼をした青年。顔つきにはまだ幼さが残っている。の人相などわからないが、おそらく二十歳前後――柳生の一回り下――ぐらいだろう。

 青年は気の毒そうに柳生を見つめている。素直というか、顔に出やすい性格のようだ。

 柳生は大きくため息を吐いた。

 嗚呼、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

 ほんの少し前まで、自分の部屋で炬燵に入ってテレビを見ながらミカンを食べていたはずなのに。

 柳生は、遠い目をして記憶を遡った――

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